★ノゥム領防衛戦実況スレ part1
★ノゥム領防衛戦実況スレ part1
35:名無しの転生者
うおっ!? 何々、ここのゴブリンたちって魔法使えんのかよ!?
36:名無しの転生者
えぇ……戦闘班の精鋭と比べれば流石に劣るけど、普通に俺らより威力強くね?
あれはパムフレドと契約してるってこと?
37:名無しの転生者
いやいやいや。ゴブリン詐欺だろ。
ゴブスレさんのゴブリンチャンピオンぐらいおかしいって。
38:名無しの転生者
>>37 流石にチャンピオンは言い過ぎ。あれはゴブリンの名を冠した別の生き物だから……精々ロードとかパラディンじゃね?
39:名無しの転生者
問題はそこじゃねぇだろ!
あんだけ戦えるならゴブリンだけで普通に天使を撃退できたんじゃねーかって話。俺らが手を貸す必要なんかなかっただろ。
40:名無しの転生者
いや、流石にそこまでの腕ではないんちゃう?
精々ワイらに毛が生えた程度やろ。
41:名無しの転生者
だな。天使共が舐め腐ってソロで動いてるとこを不意打ちで、しかもチームで狙撃してるから何とかなってるように見えるだけで、普通に天使とやり合ったら分が悪いよ。
あ、ほら。実際もう警戒されて防がれ始めてる。
42:名無しの転生者
あ~……天使が油断せず本気で障壁張ったら防がれちゃうのね。
流石にその状態で反撃までする余裕はないみたいだけど、普通に距離とって逃げられてるわ。
43:名無しの転生者
でもゴブリンも深追いせずに態勢を整えてるぞ。
この世界のゴブリンって普通に頭良いのな。
これここのゴブリンだけが特殊なのか、それともこの世界の戦士の水準が高いのか……後者だったら俺、マジ実戦に出るの怖いんだけど。
44:名無しの転生者
それな。
ワイら訓練終えたらこんな連中と戦わなあかんの?
こいつらゴブリンの皮被った別の生き物なんちゃうの?
45:名無しの転生者
マジでそれ。ゴブリンは雑魚って学校で習ったの何だったん──……あれ?
このゴブリン、何かおかしくないか?
46:名無しの転生者
いや、何かも何も今まさに全体的におかしいって話──……あ。
47:名無しの転生者
>>45、46 何々? 何か気づいたの?
48:>>46
いや……あいつら、影の形とかサイズが微妙におかしくないか?
49:名無しの転生者
影? あ~……言われてみれば。何かこう……デカい?
50:教授
良く気づいたっすね。
51:名無しの転生者
うおっ、教授! 何か知ってんの?
52:教授
アレは俺ら研究班が開発した変装用の術式っす。
急ごしらえで調整したにしては悪くない出来だと自負してるんすけど、ゴブリンとは体格差があり過ぎて、本体の違和感を誤魔化したら今度は影の方がズレちゃったんすよね~。
あれだけ距離があれば天使たちに気づかれることはないと思うっすけど……う~ん、でもやっぱ改めて指摘されると悔しいなぁ。
53:名無しの転生者
変装……あ!
あれ、うちから派遣された戦闘班の連中か!?
54:教授
天使相手に顔出しはNGなんで、元々潜入用に開発してた術式を急遽実戦投入させてもらったっす。
55:名無しの転生者
NGて、別に有名人でもないのに──って、突然空中にデカい皺くちゃのババア出てきた!
少し透けてるけど、あれは立体映像か何か……?
56:名無しの転生者
何か演説始めたぞ。
『あたしの名はパムフレド! 忌まわしき侵略者どもに告ぐんだ~よぅ。今すぐ尻尾を撒いてこの地から立ち去るんだ! さもなくばあたしの呪いがお前らの羽を真っ黒に染めてやるんだ~よぅ! 警告は一度き──』
──あ、天使の攻撃で映像が消えた。
57:名無しの転生者
むむむ、あれが噂のお婆ちゃん神か……見た目はガチゴブリン系のババアだが、語尾はかわいい。
あれは間違いなく美少女形態への変身を残しているとみた。俺は詳しいんだ。
58:名無しの転生者
同感だ。再臨用の素材は何をお供えすればいいんだ?
59:名無しの転生者
種、羽、角、卵……手当たり次第に試してみるか。
60:名無しの転生者
>>57~59 やめろアホども。ゴブリンや多神教の神相手に俺ら(転生者)の恥を晒すな。
61:名無しの転生者
しかしなるほどな。
戦闘班をゴブリンに変装させてどの程度の意味があるのかと思ってたが、ゴブリンと魔女の神をセットで前面に押し出すことで、魔女の神が何かしてゴブリンを強化したと思わせたいわけか。
これなら俺らの介入は天使共に察知されずに済む。
62:名無しの転生者
ワイらが騙されたぐらいやもんな(なお、ワイらの目が節穴である可能性は無視するものとする)。
63:名無しの転生者
敢えて精鋭メンバーを使わなかったのは、ゴブリンが契約で強化されただけって設定に信憑性を持たせるためか?
64:名無しの転生者
それはいいけど、あいつらじゃ天使を相手にするには力不足なんじゃね?
今は天使がバラバラに単独行動してるからまだ何とかなってるけど──あ、ほら。言ってるそばから斥候役の天使共が一か所に集まっていく。
65:名無しの転生者
見る限り基本的な個の地力が違うからなぁ……数もそう極端な差があるわけじゃなし、各個撃破が出来なくなったら勝ち筋がねーよ。
66:名無しの転生者
あ~、早速囮になってたオークの群れが襲われてる。
おっと急降下。こっちに魔法があって飛行がアドバンテージにならないと見るや、即座に近接戦に切り替えるか。
判断はぇ~。
67:名無しの転生者
空飛ぶのにもリソースは使うだろうし、空中だと森に隠れて下から狙い撃ちにされるもんな。
68:名無しの転生者
あ! オークの群れが追いつかれた!
数は若干天使のが多いし、こりゃあっという間に全滅──……って、うぇぇ!?
69:名無しの転生者
何あのオーク!? 一匹だけヤベーの混じってない!?
70:名無しの転生者
今度こそオークロードかチャンピオン?
オクスレさん呼んできて~!
71:名無しの転生者
呼ぶなアホ! 一応あれは味方やぞ……にしてもあのオーク、ガチで強いな。
特別デカいとか身体能力が高いわけやないけど、技のキレが凄いというか。
今あれ、太刀の風圧で天使の魔法切り裂いてなかったか!?
72:名無しの転生者
……技もそうだけどそれ以上に立ち回りがえぐいよ。
多分あのオークが本気で切り込めば単騎でもっと天使を落とせてるだろうに、上手く囮になって周りを活かしてる。
ほら、あのオークが目立って分かりにくいけど、他のオークたちも天使相手にまだ一体も倒されてない。
73:名無しの転生者
うわ……マジだ……!
74:名無しの転生者
あ…………
75:名無しの転生者
おい、あれ……?
76:名無しの転生者
>>74、75 ん? どうした?
何か様子がおかしいが……
77:>>74
……あれ、多分──っていうか、間違いなく合理爺。
78:名無しの転生者
合理爺──って、そうか!
あのオークの中にも変装した転生者が混じってるのか!
79:名無しの転生者
でも、何で分かったの?
近接戦じゃ動きが早すぎて影の違和感とか分かんないけど。
合理爺ってあれだよね。ほとんど掲示板に顔出さない謎の幹部。
80:名無しの転生者
普段は近接系の専科訓練に進んだ連中の教官役をやってるんだっけ?
氷弓兵と並んで戦闘班のツートップだって噂だけど、俺は調教師コースだから会ったことないんだよな~。
81:名無しの転生者
……合理爺の訓練は参加は誰でも自由だからいっぺん来い。
何度かあの人にぶった切られれば、もう実戦なんて怖くないぞ。
82:名無しの転生者
マジでそれ……その前に心が折れなきゃだけど。
83:名無しの転生者
折れたら立ち直るまでひたすら斬られ続けるんだよ。
84:名無しの転生者
ハハ、ぶった切られるとかまた大袈裟な。
精々薄皮一枚斬られて脅される程度だろ?
でなきゃホントに死んじゃうじゃん。
85:名無しの転生者
合理爺の斬撃はなぁ……切れ味が良すぎて、切断面をくっつけたら腕がピタッと元通りになんねん。
86:名無しの転生者
ハハハ………マジ?
87:名無しの転生者
ワイは両腕。
88:名無しの転生者
右足。
89:名無しの転生者
よく覚えてないけど多分首。
90:名無しの転生者
……俺生産班で良かった。
91:名無しの転生者
あの爺(=修羅)に比べれば氷弓兵なんてただのインテリヤクザよ。
92:名無しの転生者
その表現はどうかと思うが、言いたいことは分かる。
まだ氷弓兵は話“は”通じるもんな(ただし、こちらの意見が通るとは言っていない)。
93:名無しの転生者
お。そんなこと言ってるうちに戦況に動きがあったぞ。
半分近くが打ち取られて、天使共が撤退に移った──って、むざむざ逃がすの?
94:名無しの転生者
それはしゃーないやろ。
いくら合理爺が化け物でも、空飛ぶ敵相手に逃げに徹されたらどうしようもないて。
95:名無しの転生者
……あの爺さんなら普通に空中走りだしても驚かないけど。
96:名無しの転生者
まあ、それしたら流石にオークに変装した意味がないからなぁ
97:名無しの転生者
でも、魔法の追撃も温くない?
98:名無しの転生者
……確かに。
つーか、よく考えたらあそこにいる天使は本来斥候役で、本隊は別にいるんだよな。
その数がどの程度かは分かんないけど、あの倍とか三倍の数で攻められたら、流石に合理爺でもカバーできなくね?
99:名無しの転生者
それな。全力で攻めて斥候役だけでも全滅させといた方が良かったんじゃね?
こっちの正体がバレるとかは殲滅しちゃえば気にしなくてもいいでしょ。
100:名無しの転生者
いくら合理爺でも空飛べる相手に全滅を狙うのは難易度が高いだろ。
身体は一つしかないんだし、普通に四方八方に散られたら追いかけようがないぞ。
101:名無しの転生者
でもどうせ本隊が攻めてきたら合理爺もどこまでオークのフリできるか分かんないわけだしさぁ。
102:名無しの転生者
そもそも俺らの存在がバレたら本隊は侵攻を止めていったん撤退する可能性もあるんじゃね?
元々向こうはこっちの戦力がゴブリンだけだと思って攻めてきてるわけだし。
103:名無しの転生者
あ~、じゃあ最初から姿を見せて俺らの存在を匂わせた方が良かったってことか?
104:名無しの転生者
そんな単純な話じゃねーよ。
俺らの存在を見越して戦力を整えてから再侵攻してくる可能性もあるし、最悪の場合は俺らの本拠を探り当てられるかもしんねーだろ?
105:名無しの転生者
それを言い出したらゴブリンに救援を送った時点でリスクはあったじゃんか。
何にせよ、全てはこの侵攻を防ぎきってからの話じゃね?
106:名無しの転生者
だからってそれは、戦後を考えなくていいってことじゃないだろ!?
107:名無しの転生者
後のことに怯えて半端な戦力を出すぐらいなら、最初から何もしない方がマシじゃんか!!
108:名無しの転生者
>>106、107 まぁまぁ、もちつけ。
俺らがここで揉めたって仕方ないだろ。
109:名無しの転生者
そうそう。つーか、その程度のこと幹部連中が考えてないはずないしさ。
俺らがここで言い争っても意味なんてないない。
110:名無しの転生者
いや、お前……
110:名無しの転生者
それを言っちゃぁ……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ノゥム領西端の森の端。
そこには俺の呼びかけで集まった戦闘班精鋭メンバー一〇余名が、互いに手を借りながら鎧を装着していた。
鎧の製作者であり、生産部門トップの一人たる壮年のドワーフはその様子をどこか不安そうに見守り、注意事項を口にする。
「繰り返しになるが、その魔導鎧はまだ未完成だ。付加効果は【軽量化】と【硬化】だけしか間に合ってねぇし、しかも耐久テストもまだだから戦闘中に突然効果が切れるかもしれん。本来なら【消音】や【魔力増幅】の効果も持たせたかったが、そっちは完全に手付かずだ。何が言いたいかっていうと──」
「あ~、はいはい。無理を言ったのはこっちだから別にいいって。何かトラブルがあっても俺がフォローするし、大丈夫だから」
俺にそう言葉を遮られて壮年のドワーフ──親方ドワーフと呼ばれるその男は口をもごもご動かし黙り込んだ。
製作者として、不完全なものを表に出さなければならないこの状況が不満で仕方がないのだろう。その不満は分かるし、申し訳ないとも思うが、今はこの値の張る魔導鎧という最新装備こそが必要なのだ。そのことは既に親方ドワーフにも説明し、理解してもらっている。納得まではできていないようだが、そこはもう呑み込んでもらうしかない。
「……本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だって。信用してよ」
「違う。今更お前さんの腕は疑っちゃいねぇよ」
俺の言葉に親方ドワーフはかぶりを横に振り、急遽鎧の胸部と肩当に刻まれた獅子の紋章に視線をやる。この大陸において獅子の紋章は特別な意味を持ち、帝国では皇族に連なる軍人のみが刻むことを許されている。
「そんな即席の小細工で本当に教国の目を誤魔化せるのか?」
その問いに俺は肩を竦めて苦笑した。
「さぁ? 多分無理なんじゃない?」
「無理って、おま──」
「サル並みの知性があればこれが偽装工作だってことは想像がつくよ。誤魔化しきるなんて無理無理」
「────」
親方ドワーフはしばし絶句し、やがて諦めたようにかぶりを振って溜め息を吐いた。
「はぁ~。なら何で、こんな手間のかかることを……」
「誤魔化せなくても迷わせることはできる。とりあえず今回はそれで充分さ」




