(29)事務デスク
オフィスの事務デスクが新しくなった。
それまでは、昭和のお仕事ドラマから飛び出してきたような、昔ながらの灰色の5号デスク。
使い込まれた袖ヒキダシはどこか傷んでて引き出しにくい。潤滑油を差したら改善するという次元ではすでになく、開けたはよいが、閉じるのにもコツがあって、特異点を意識しながらスライドさせないと収まってくれない。長年付き合ってきた相手でないと使いこなせない、困ったデスク。
……でもね、昭和原人は、骨董品のような相棒に愛着持っていたのです。
長い間、お世話になりました。
――ともあれ、新年から、新規格の真白いデスクでワークしている。電子化邁進の世の中なので、コードダクト付きの便利モノ。今ドキのオフィス家具って白色が基調なのね。昭和のように灰色一辺倒でなく、いろいろなテイストが選択できる模様。
しかし、これが、また……昭和原人には微妙に使いにくい。
まず、センターヒキダシが浅すぎる。昭和の規格は結構深かったので、ここに文具類をまとめて収納できた。昭和原人の社会人デビューは平成に突入していたが、配属先の事務机には当然のようにここに算盤が収納されていた。……今は入れるものが想定できない。「A3用紙がラクラク入る」のが売りのようだが、……いや、今ドキ、紙媒体のこと言われてもなあ。ノートパソコンの収納には適しているかもしれないが、センターヒキダシに限って施錠が出来ない。……なんだかなあ。
そういえば、数年前になるか、オフィス商社の営業さんから聴いたことがある。センターヒキダシを浅くして、机本体を高くして、地震で揺れたときに潜り込めるスペースを広くしたのだと。――本当のことかどうか、定かでない。
新規格は奥行も充分で、袖ヒキダシの収納量がアップした。――そこは素直に嬉しい。しかし、やっぱり使いづらい。もっとも収納スペースの大きい下段には、書類をドッサリと入れておく。昭和のレトロ机は人間工学的に取り出しやすい高さに設計されていた。袖ヒキダシの下には脚部が付いていて、つまり、ヒキダシの下にはデッドスペースがあった。……もちろん、オフィスの達人はここもスリッパ置いたり便利に使っていたのだが。
ところが、新規格では、このデッドスペースをなくして袖ヒキダシに充当しているため、下段の位置がとにかく低い。ヒキダシから書類を取り出す都度、少々屈まねばならないという。
……いえいえ、世の中はもうフリーアドレスとかテレワークとかの時代ですから、今さらオフィスデスクに愚痴をこぼす時代でもありません。今のワーク環境に適していればよいと思うのです。昔ながらの弊社も、そのうちにフリーアドレスとかになるんだろうなあ。
……ひとつ。昭和原人としては。
コタツ式のオフィスデスクがあると嬉しいかもしれない。




