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(28)有料ダイヤル

 昭和原人は、「家電(いえでん)」という絶滅危惧アイテムを持っている。


 先日、帰宅したら、留守番電話ボタンが点滅していた。近所の郵便局からだった。メッセージは入っているが、何が言いたいのか要領を得ない。


(……なんか手続忘れてたっけ?)


 なんとなく気になるし、でも、夜中に電話かけても出てくれないだろうし、翌日、会社の休憩時間に、スマホから電話してみた。


 ――とはいっても、自宅の固定電話、かなり古いものを置いてある。ナンバーディスプレイも付いてない。郵便局の電話番号はネットで調べた。『ナ●ダイヤルでお繋ぎします』――音声ガイダンスが流れる。なんと、十秒に十円が加算されるらしい。一分で六十円、十分なら六百円。イヤらしいことに、定額プランの対象外。


「●●郵便局、▲▲課のAです」

「昨日、そちらのBさんからお電話いただいたのですが」

「わざわざありがとうございます。どのようなご用件ですか?」

「それが知りたくてお電話しました。――ナビ●イヤルなので余計な会話したくありません。早く繋いでください」

「あ、失礼しました。――ところで、どんな用件か検討付きますか?」


 ……いや、だから。


 郵便貯金の利息がナビ●イヤルの料金を上回るなら付き合ってやってもいいが……いやいや、ビジネスマナーとしては、用件を確認するのがベターな電話応対か。――ただし、ナビ●イヤルでなければね。


 さすがに困惑して、「このケータイ番号に折り返しください」と言って通話を切った。


 ……数分後、B氏からリターンがあった。


 手続漏れや手続案内ではなく、新規商品の営業電話だった。――脱力した。


「不安を与えるようなメッセージは入れないでください」


 ……まあ、あちらもお仕事なんでしょうからね、仕方ないですね。だったらフリー●イヤルとまでは言いませんが、普通のお電話番号ぐらいは開示してください。


 ――で、思い出したのが、先月、某通信キャリアのおにいさんの対応。


 ショッピングセンターを歩いてたら、ポケットティッシュ差し出された。――おお、今ドキ珍しい。……と思ったら、出張イベント。


 そういえば、Wi-Fiルーターの調子が悪かったので(そうなんです、編集作業中に切れちゃったりするんです)、ちょっと立ち寄ってみた。スマホに更新したとき、ショップのおねーさんが自宅の通信環境まで丁寧に手配してくれたから。相談の結果、そういうのは通信キャリアではなく、直接プロバイダーに問い合わせたほうが早いということがわかった。しかし、情けないことに、どこの業者と契約したのか私自身はまるで覚えていなかった。


 ……すごいです。


 出張イベントのおにーさん、丁寧に話を聴いてくれて、初心者にわかるように設備の説明してくれて、プロバーダーに連絡も入れてくれた。


「問い合わせ電話番号がナビ●イヤルしかないのですが、普通の電話番号ありますか? ……あ、ない? それじゃあ、明日にでもそちらからお電話してもらえますか」


 ナビ●イヤルが割高だということを知っていて、業者側から電話してもらえるように依頼してくれた。


 ――翌日、電話で指示されるがまま、ルーターをリセット。


 現在、ストレスなくweb環境に繋がっている。そろそろ使用が長くなってきたので、本格的に調子が悪くなったら量販店で買い替えてくださいと、アドバイスもしてくれた。


 通話時間……十五分ぐらいかな?


 もしもナビ●イヤルで電話してたら、約千円。


 ルーターの調子が悪くて心配だったし、修理に出してたら諸々掛かって千円どころでは済まないだろう。もしも有料ダイヤルだったとしても、納得のいく価値のある通話料。


 ……しかし。


 郵便局の営業電話には付き合いたくない。


 通信キャリアといえば、かつての電電公社。かつての郵便局とは兄弟みたいなもの。


 ……今となっては、顧客志向にこんなに差が出てしまったのか。


 ――ところで、社畜の会社でも。


 かつては、営業電話がよく掛かってきた。


 業務に直結の営業電話なら対応もスムーズだが、業務妨害ではなかろうか――という主旨の個人勧誘も多くあり、そういう相手に限って、ビジネスライクに通話を切ろうとすると、乱暴な言葉や卑猥な用語を投げ付けてくる。「コ●すぞ」「マ●●」――電話の向こうの相手も、こんなこと言いたいはずないだろうに、こっちまで陰鬱な気分に貶めるなんていったいどんな苦行なんだろう……?


 顧客サービスに重心が置かれていた平成時代に急増したフリー●イヤルは、「カスタマーハラスメント」という用語の台頭とともに「ナビ●イヤル」に移行しつつある。でも、有料ダイヤルであろうと開示されてるのは親切なほうで、今ではwebページに電話番号の表示がない事業体も増えている。


 そういうところはwebページから問い合わせできるスタイルになっているので、それはそれで合理的なのだろうと思う。


 ――しかし。


 そういう相手先企業に限って。


 ……今ドキ、営業電話が掛かってくる。


 電話が便利あるいは有効だと考えているなら、ぜひ、顧客側からの電話相談窓口も復活させてほしいと思う今日このごろ。


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