(21)入浴剤
暑い季節はシャワーで済ませていても、寒い時期は湯船にお湯を張って、どっぷり肩までつかりたい。入浴剤なんか入れてみると、ちょっと贅沢な気分になって、なんだか幸せな心地になる。――身近な天国。
入浴剤は、発砲タイプの医薬部外品を愛用している。ジュワジュワするのがなんだか肩凝りに効きそうで、お湯の中でストレッチとかやってみたりして。
たまには入浴用化粧品で色や香を楽しんだり、「●●温泉の湯」で旅気分を味わうこともある。
――が、いろいろ使ってみても、私の場合は森林系の芳香のものに落ち着く。淡い緑色の湯色に、ほのかな新緑の香……ああ、リラックス。
実のところラベンダーとかハーブというのはクセモノで、私の場合、紫色系のお湯というのはなんだか気分が沈んでしまう。なので、ハイホーしている自分を落ち着いて見つめ直したいときなどいいかもしれない。
ところで、幼少時は、入浴剤のありがたみというか、リラクゼーション効果が半分ほども理解できなかった。
何故なら、昭和時代の自宅には、五右衛門風呂式の浴槽が残っていたからだ。
――誤解してはいけない。
薪を焚べて沸かすことももちろん出来るのだが、さすがにそんなのは記憶の彼方。燃料には電気を使っていた。深夜電力対応型の電気温水器である。
夜中に微妙に発生する稼働音が幼い私には怖くて(幽霊かと思った)、頭から布団をかぶって怯えていた時期もあったが――それは別の話題。
さて、では、最新式(当時)の電気給湯設備があったのに、なんで昔ながらの風呂釜が残されていたか。
――昭和の歴史として語られることの多い「オイルショック」。
このころから「省エネ」という言葉が広く使われるようになったような気がする(いや、以前から使われていたが、私が幼すぎて知らなかっただけかもしれない)。
オイルショックからの省エネを受けて、私の父親は、五右衛門風呂方式の浴槽を残しておくことを決断した。
――昭和の浴室。
脱衣所も浴室と一体化、段差で仕切られていた。
全体的にタイル貼り、浴槽も、上半分はタイル貼りだった。下半分は――五右衛門風呂なので、当然、鋳物。当時のことなので詳しい材質は覚えていないが、限りなく黒に近い茶色をしていた。
――はい、そうなのです。
入浴剤というのは、浴槽が白いからこそ映えるのです。
浴槽に入浴剤を投入しても、風呂釜部分がほとんど黒色なので、湯色の変化が実感できないのです。だから、盛り上がるほどに楽しくならないのです。
……それでも、当時流行したジャスミンの香は、今でもふと思い出すことがある。




