ハーレムなんて言うから……
前作、予想以上の大反響ありがとうございました。
多分、予想とは違う感じのお話になるかも?
どうも、ハーレムクソヤローこと、天野 貴斗です。
最近の失敗談は失言でクズ認定されてもおかしくないことになったことと、同じく失言からの初体験で脱水症状その他諸々で逝きかけたことです。
「いや、まて、なにそれ?」
生徒会の手伝いと言う建前で生徒会室に集まり、叶と涼音先輩がなにやら真面目に意見を交わしながらノートパソコンをいじるっているので覗いてみたらなんかおかしいものを作っていやがる。
ついでに今は特にイベントもなく比較的暇な時期なので他の役員は来ていない。
「なにがかな?」
「急になに言い出すの?」
俺のツッコミに心底不思議そうに首を傾げる、涼音先輩。
叶も不服そうに追随する。
「そのExcelファイルなにか言ってみろ?」
「うん?シフト表だよ?」
「なんの?」
「イチャラブ☆ハーレムシフト」
「ワー頭おかしい」
一応、本当にヘイト管理?してくれるらしい。
「今はまだ、夜と放課後だけだけど。ほら、引っ越したら、シフト組まないとバッティングして揉めるのなんて目に見えてるでしょ?」
「引っ越す予定無いけどな?」
「引っ越す無くても実質泊まり込みになるでしょ。ね、佳澄ちゃん」
「はい、楽しみです」
「待って聞いてない」
本当に部屋用意してたの?
驚きだよ……
「てか、なんで毎日、夜の部2人づつで回してんだよ……エロゲ主人公でも、もっと自重するぞ」
たぶん……
「いやね、初めてが衝撃的だったろうし頑張って貰ったから、立て続けにしないと、タタなくなるかな~って」
イップス対策かな?
「だと思うなら、もっと手加減してくれて良かったんじゃ…」
と言うか、何でお香とかドリンクとか用意してたんですかね?
「自業自得ですよ?あの発言は」
「ひぃ」
園芸部に行ってたはずのマリアが、いつの間に真後ろに立ちかニコニコしながら温度の無い声で囁いてくる。
マジすいませんでした!
「て言うか、タカト~、携帯なってるよ」
「ん、ちょっと出てくる。」
★
電話が終わった貴斗は、「ごめん、先帰らなきゃならなくなった」とだけいい、荷物を持ち、去っていった。
勿論、文句を言ったり無理やりついて行くような減点行動をする娘はいない。束縛は摩擦しか産まないのだ。
「それじゃあ、始めましょう」
貴斗が出ていったのを確認して、生徒会長の涼音先輩が宣言する。
「はい」
「はーい」
上品に返事をするマリアさんと元気に返事をする亜果利さん。
「……はい」
「はい」
私と佳澄さんが続いて返事をする。
「次に、来週から始まるDに(作り手の)HPですが、なにか意見はありますか?」
『最低だよね!?』と言いつつ、しっかり受けとるところまで想像し、少し楽しみになる。
★
「と言う訳で貴斗の旧スマホからクラウドアカウントの同期を試みた結果NTR系の検索が増えてますね。来ない将来のため、耐性を付けるためかどうかはわかりませんが……まあ、使う暇も体力も与えていませんが」
私の仕入れた情報に全員が神妙な顔をしたと思うと。
「ギルティ」
「colpevoleです」
「アウトだね」
「……お仕置きの必要が有りますね」
みんな、素敵な笑顔で口々に判決を述べる。
貴斗はどうせ、気の迷いとか一過性のものだと勘違いしているのだ。
まったく、なにもわかってない。求愛したのはこちら側であり私達にだって、今の関係が一般的には、おかしいことだって承知の上だし。
そもそも、勢いだけでホテルインするようなメンバーでないことは考えなくても分かることであって、皆、機会をうかがっていたところにたまたま、馬鹿発言であんなことになっただけで、誰も彼を逃がす気なんて無いことくらいは気づいて欲しいものだ。
★
「あ、これ新作出るんですね」
「うん、雑誌のスポンサーから試供品貰ったけど試してみる?」
「……先輩、私も良いですか?」
「勿論」
会議もそこそこに和気あいあいな空気で雑談に花が咲く。本当に良い傾向だ。
「ところで、叶さん」
「はい?」
「今の状況は貴女の予定通り?」
ふいに涼音先輩が訪ねてくる。
「あはは、心外です。確かに少し前に全員に貴斗と付き合っているのかとは確認されましたし、近いうちに何かしら起きるとは思ってましたけど」
まさか、全員同時に行動起こすと予測できるわけがない、ましてやハーレム成立なんて考えもしなかった。
1人ずつの告白ならきっと、悩み事の相談にかこつけて漁夫の利を得られたとも思う。
最も、現状に不満は無いけど。
「え?叶っち、みんなから確認受けてたの?」
「うん、ちなみに鞄の中、見直すように言ったのも私だよ?」
「っ!?……えっと……ありがとう」
「どういたしまして」
困惑しながらも、お礼を言ってくる亜果利ちゃんは見た目に反して、恐らく一番純粋だ……多分
「あれ、でも、ならなんで……?」
「聞かれたときは付き合ってなかったよ?好きかとは聞かれなかったし?」
亜果利ちゃんの質問に笑顔で答える。
「なるほど」
「ふふ」
「え、ええ……」
「むぅ」
あれ?少し引かれてる?けれども、同じ穴の狢でしょうに。
全く……ハーレムなんて言うから……
★
老人ホームに入っているじいさんが、レクリエーションのバドミントンで転倒したらしく、共働きの両親に代わりに呼び出されたらしい。
勿論無傷だが。
「人騒がせだな」
「ミントンくらい好きにさせてくれや」
「いや、ミントンだろうがフットサルだろうが別に好きにしてくれて良いけど、ダイビングレシーブはやめてくれ」
このアクティブジジイは、俺が小学校の高学年の頃、急に宝くじが当たったとかで婆さんと2人で勝手に高級老人ホームに入ってヤンチャしてはたまにお叱りを受けている。
後、麻雀やら狩りゲーやらのメンツが足りないとコールが凄い。
ちなみに、ここの入居者には、老舗料亭の先代板前とか元スポーツ選手とか引退職人等色々揃っているうえ、暇なのか遊び相手にされたり、色々仕込まれたりするので要注意だ。
「そんなことより孫よ」
「あんだよ、爺さん?」
「そろそろ、良い娘は見付かったか?俺の若い頃なんか常に3人はキープしとったぞ?」
いつも会うたびにこれだよ、いや、婆さんに見付かったらまた正座だぞ?
「……まぁね」
「お?叶ちゃんか?マリアちゃんか?それとも別の娘か?」
幼馴染みの叶はともかくマリアの名前が出るのはうちの高校の園芸部や家庭科部とかが製作物を持ってボランティアにくるからである。
ここの上の人と理事長が知人らしい。
「……全部」
「は?」
「……」
「……マジ?」
「不思議なことに……」
「でかした、孫よ!今日は飲むぞぉぉ!!」
すこし呆けたあと、騒ぎ出す爺さん。
「褒めるなジジイ!ここで飲めるわけ無いだろ」
「なんだと、飲みながらバレない秘訣とか聞きたくないのか?」
逆ギレ気味に食って掛かる爺さん……何で夫婦仲良好なんだろ?
「あぁ……それは大丈夫かな?」
「おう?バレて修羅場になったら言えよ、息子にはとうとう伝授しそこなった裏技を……」
「婆さん、お願い」
さっきから、こっそり此方を伺ってた、婆様に助けを求める。
「ホントにこの人は、心配してきてみれば……」
「し、静枝さん?まて、今は静枝さん一筋だからな!?いたい!耳引っ張らないでぇ!?」
「いつも悪いねぇ、貴斗」
「あー、うん、話聞いてた?」
「多少のおイタは良いけど、後悔しないようにね」
「まぁ、見捨てられないようにするしかないからね」
上品に笑う婆様に相づちを打ち、苦笑するしかない。
しかし、ハーレムなんてどれくらいもつのかな?
もっと、ギスギスするのかと思ったけど今のところ仲良く見えるんだよなぁ……水面下では判らないけど。
1人づつ離れていくか、一気に見捨てられるかはわからないが変な修羅場にはならないことを祈りますよ。