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君の笑顔がうれしくて  作者: 武島睦月
8/8

第八話



「ご、ゴメン待った?」

「いや、今来たとこ」


とある駅前の人気の待ち合い場所で私と清水君は待ち合わせをしていた。

今日は初デートだ。


昨日の夜は早めに寝ないといけないとわかっていたけれど着ていく服や髪型で悩んでいるうちにいつのまにか時間がたっていて結局寝たのはいつもより遅い時間だった。


なんとか、起きれたものの一本乗り遅れてしまったせいで数分とはいえ遅刻してしまった。


(こういうとこ見せたくなかったのに~)


私が遅刻したことでイライラしたりしてないかとつい心配になって清水の顔を見ると、何か言いたげな表情をしていた。


「どうかしたの?」

「え!?、い、いやなんでもないよ」


なんだかキョドっていて怪しい。

そう言えばさっきから私の服ばかり見てたような気が…

あ、もしかして!


「なにか、服についてたりした?」

「いや、そういうことじゃなくてさ。あの、その」

「なに?はっきり言って?」

「ふ、ふく、似合っててかわいいなって…思って」


最後のほうは声が小さくなっていてよく聞き取れなかったけど、清水君に服を褒められたのとかわいいって言ってもらえたことがうれしくてフリーズしてしまった。


「今日ってこんなに気温高かったっけ、な、なんか暑いな~」


顔が赤くなってきたのが自分でもわかって、変なことを言いながら暑くなってしまった自分の顔を手でパタパタと扇いだ。

そっぽを向きながら清水君の方をちらりと見ると、清水君も恥ずかしそうに伏せ目がちになっていた。


たっぷり一分ほどそうやってなぜか気まずい空気のなか二人でたっていると、清水君が「な、なんか今日暑いね。えっと、そこのショッピングセンターとかいく?」と話しかけてくれた。


「うん、そうしよっか」

「じゃあ、なるべく早くに移動しよう」

「なんで?」

「…なんか、周りの人たちから見られてるんだよ」


そう言われて回りを見渡してみるとちょうどおばさんたちが「若いっていいわね~」なんていいながら通りすぎていくのが見えた。


(そう言えば、さっきからずっとここから動いてないんだった)


今さらな気もするがその事に気付いた私たちはそそくさと近くのショッピングセンターに逃げるように入っていった。





◆◇◆

「楽しかった~」

「そう?それはよかったよ」


あれから、ウィンドウショッピングや雑貨店巡りをした私たちはフードコートでご飯を食べて映画を観た。

そのあとも、色々なことがあったけどとても楽しかった。

今は海が見える公園で夕日を見ようということで海辺の公園に来ている。


好きな人と一日一緒にいられることがこんなに嬉しくて楽しいことだなんて知らなかった。

あのとき、告白をしてなかったらこんなに楽しいこともなかったんだろうか?

そう考えると、本当に告白してよかったと思える。


「─また、こうやって、遊びたいな」


「なに言ってるんだよ。俺たち、付き合ってるんだからこれからももっと遊べるよ」


「そう、だね」


聞かれていると思わなかったのでちょっと恥ずかしかったが、清水君にそんなことをいってもらえて嬉しかった。


「じゃあ、日も沈んじまったことだしそろそろ帰るか」

「うん」


駅までなんとなく二人ならんで歩いていると清水君が手を握ってきた。

そんなことをするなんてちょっとびっくりしたけど、清水君の顔がまた赤くなっていてかわいかったのでそのまま手を恋人繋ぎに変えてあげてから駅まで歩いた。



なんとなくいい感じの雰囲気でドアの近くに立って乗っていたが、使う電車が変わるせいで私が乗り換えなければならない駅のひとつ前に着いてしまった。


「あ、わたし次の駅で降りなきゃ」

「え、うん。わかった」


降りなきゃいけないことを伝えると清水君はなんだかさびしそうな表情をした。

そんな顔をされたら、なんだか悪いことをしているような気分になってしまう。

でも、なんだかんだもう遅い時間になっちゃってるから帰らないといけないし…


そう自分に言い聞かせながら、最後の瞬間まで楽しもうと私たちは別れを惜しむように話し続けた。





「あっ…」


どちらの口から漏れた声のなのかはわからないが、駅のホームに電車が入った瞬間そう聞こえた。


「…ついちゃったな」

「…ついちゃったね」


ドアが開くまでの、いつもなら一瞬で過ぎるような時間がとても長く感じられる。

清水君を見るとやはりさびしそうな顔をしている。


「そんな顔しなくてもいいじゃん。また明日学校で会えるんだから」

「そうなんだけど、なんか今日がすごい楽しかったから離れるのがさびしくて…」


「そんなの、私だってそうだよ…だから、これで我慢してね」


そんなことを清水君に聞こえるくらいの小さな声で呟いてから、顔を清水君に近付けそっとキスをした。

キスといっても恋人がやるような深いものではなくそっと唇が頬に触れる程度のもの。

それでも、私は精いっぱいの勇気を振り絞ってした。


それから、自分に何が起きたのか理解しきれずに戸惑っている清水君を見ていたい思いを抑えて、私は電車を降りた。

ふりかえって清水君を見ると、面白いくらい真っ赤になっていた。


「またあした、学校で会おうね」


─そう私が言った直後、扉は閉まり電車はホームを離れていった。

この話は、ここで一旦終わりとなります。


また気が向いたら学校での日常編、なんてものも書いてみるかもしれませんがそれまでしばしお別れです。


では…

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