第七話
「伝えたいことが、あるの…」
そう呟くように言うと、清水君はこちらを振りかえって次の言葉を待つようになにも言わずわたしの顔を見てきた。
(こんなありきたりな言葉でいいのかな?…でも、私が伝えたいのはこの言葉なんだ。だから─)
「私は…君が好き。ずっと前から、君のことが好き!」
「…っ!」
清水くんは、恥ずかしそうに顔を袖で隠した。短い、ほんとに短い言葉だけど、伝わったのかは清水くんの反応を見ればわかる。
私は、言えることは言った。そらくんの返事を待つだけ。
思い返せば清水君のことが気になってから早二年、この二文字が言い出せなくて…でも、今までの時間も嫌いじゃなかった。
でも、できることなら私は…清水君と…
そんな思いが頭の中を駆け巡って私は、恥ずかしさと不安で、スカートを握りしめた。
「ひなた…」
私の、精一杯の気持ちは伝えたんだ。精一杯の笑顔で。
恐る恐る前を向き清水君の顔を見ると、顔が真っ赤になっていた。
きっとわたしの顔も同じくらい真っ赤なんだろう。
それからまた永遠にも思える短い時間が流れた。
すると清水君は、私の手を取り、
「俺も…俺も、ひなたのこと、好きだよ。」
潤んでいる、けれどもまっすぐな瞳で見つめてそう答えてくれた。
「うっ、うぅ、ひぅっ、」
言葉を理解した瞬間、清水君から帰ってきた答えに、嬉しいはずなのに泣きだしてしまった。
「えっ!ちょ、ひなた?」
突然泣き出してしまった私を目の前にして清水君は驚いていたようだけど、すぐにオドオドとし始めてしまった。
「大丈夫。なんか、わたし、うれしくて、そしたら涙が…」
ちょっと下を向きながら目尻にたまった涙をふいていると清水君が近づいてきて慰めようとしてくれたのかそーっとわたしの頭をなで始めた。
それがまたうれしくて私は清水君に抱きついた。
清水君は、優しく私の頭を撫でつづけてくれた。
◆◇◆
人生初の恋。私の青春は、分からないことだらけだ。きっと、先生に聞いても分からないだろうし、教科書になんかも載ってない。
だからこれが正解かどうかはわからない。
でもこれは、私が自分で自分の背中を押して、叶えたもの。
私がこうしたいと思った結果だ。
だから、この結果に私は満足している。
私は今、幸せです。