ロールロイゾン
「俺、人間に紛れて暮らしているんだけどさ、ある日面白い話を聞いたんだよ。」
ニヤニヤとしながらパチンと手を合わせると頬に当ててしょんぼりした表情を作る。
まぁ、なんともわざとらしい。
「ロールロイゾンっていう国は周りを2つの大国に挟まれたなんとも可哀想な国なんだ。それも魔族の国と人間の国の真ん中ね。
人間側も魔族側も真ん中にあるロールロイゾンは邪魔なんだけど下手に手を出すとそこを超えて乗り込んで来る気だろうってなってお互いの国への宣戦布告みたいになっちゃうから侵略されないだけの国なのね。」
うんうん、かわいそうだね。弱いって。
そう呟きながら頷くクロード。多分微塵も思ってないけど、身振り手振りはそれっぽい動きをしながら話し続ける。
「そんな国の国王が人間側の大国、グリテンバーグにある話を持ちかけたんだ。
我らが異世界から聖女を呼び出し、魔族側の大国シュクルドに宣戦布告をしよう。だからもしこの戦いに勝てば我が国と対等に貿易をし、友好を交わしてほしいと。その為にも秘密裏に支援をしてくれと。
グリテンバーグとしても表向きに魔族側の国、シュクルドに侵攻するのはロールロイゾンなので負けたとしても痛くない。
ロールロイゾンが勝ったとしたら友好の証として聖女を引き渡してもらうなりどうとでもできるだろう。
そう考えたグリテンバーグはこの話をのんだ。
そうして君達は召喚されたわけだよ。
結局勝とうが負けようが、君達に自由はないだろうね?」
心底楽しそうに、心底どうでも良さそうにクロードは私を見つめる。
「それでさ、俺って好奇心旺盛だからさ気になって見に行ったんだよ。
そしたらさ、聖女が11人もいるんだもん。めっちゃウケたわー。多過ぎでしょって。」
その中で君だけが王子の魅了に掛かってないものだから気になって声をかけたら逃げたいっていうじゃん?
だからドラゴンに変化して君の事をがぶっと助け出したわけだよねー。
それしか方法が思いつかなかったんだもん、許して?
長々とした説明を終えるとクロードはごめんねと言ってパチリとウインクを投げてきた。
(という事は私にまとわりついてたあのヨダレは‥)
そこまで考えて考えるのをやめた。深く考えちゃいけない気がする。
私はなんともいえない表情でクロードを見つめると、1つため息をこぼすしかなかったのであった。