王子とか興味ない
「あっ、あのー?話は分かりましたが、全て終わったら私達は元の世界に帰れるのでしょうか?」
制服を着た女子高生くらいの子が控えめに手を挙げ質問する。
その問いにイケメンは悲しそうな顔をして首を横に降る。
「申し訳ありません、あなた方を元の世界に返すことはできません。しかし、この世界で生きていけるよう最大限協力させていただきますのでどうか力を貸してください、お願いします。」
その返答に女性達はふざけるなと叫ぶ人や悲しみのあまり泣き出す人達で混乱状態となった。私は叫びこそしなかったものの怒りで頭がおかしくなりそうだった。
(ふざけないで!勝手に呼んで、戦ってほしい、でも帰せないけどねって馬鹿にするにも程があるでしょ!)
しかし私の怒りをよそに王様はニヤニヤとしながら騒ぐ私達に次の瞬間こう言い放った。
「魔王を倒してくれた聖女様にはここにいる我が息子ルシム王子と結婚して頂き、ゆくゆくはこの国の王妃となってもらいたいと思っている。」
王様のその言葉にピタリと騒ぐのをやめ、みんなの視線が王の隣にいるイケメンへと注がれる。
イケメン改めルシム王子はそんな彼女達にはにかむような微笑みを向けた。その表情に彼女達は頬を染める。
「魔王を倒してこの世界を救ってくださった方こそこの国の王妃になるに相応しい。異論はないな、王子よ。」
「はい、王様。仰せの通りに。」
そういうと王子は王の方を向いて手を胸に当て頭を下げる。
その光景を目の当たりにし彼女達はその顔を悲しみから一転、綻ばせた。
「そ…そうですか。そこまで言われたら協力しないわけにいきませんね。」
OLっぽい女性がチラチラ王子を見ながらそう言うと他の人達もうんうんと頷いたり、あくまで国民の為ですみたいな事を言いはじめたりと急に前向きになった。
(馬鹿馬鹿しい…)
どう見てもみんな王子狙いだ。
なぜ、イケメンと結婚できるからといって納得出来るんだか意味がわからない。
それにどう考えてもこれでは女性同士の王子の取り合いになったり魔族と戦う以外にも色んなことに利用されるのが目に見えている。
民が飢えているという割には王様は太っているし2人とも豪華な格好をしていている点もどう考えてもおかしいだろう。
(これは、どうにかして逃げなくては。)
利用される前に。