表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

俺氏、少女を助ける

ドラゴン和明は、ドラゴン感覚で人が少なそうな場所を探してみた。

次に自分達が隠れ住むのに適した場所を探すために。


今は都内足立区の廃ビルに隠れているが、廃ビルはいつ取り壊されるか分からない。

だから長居ができないので、次の住処を探す。


『さてと、近場だと奥多摩なんだけど。でもいっそ北海道まで足を延ばすのもいいかもな。』


フェアリー熊代はドラゴン和明の肩に乗る。


「和明君、あまり人が少ない場所に行くのは反対じゃな。」


『え、なんで?』


「和明君は海でミサイル攻撃を受けたと言っていたであろう。周りに人がいないと、いきなりそういう大火力の攻撃を受ける危険があると思うのじゃ。」


フェンリル薫は、柴犬の大きさでゴロゴロしながら顔を向ける。


『熊代さん賢い!一般人を盾にする事で不意打ちの大火力を防ぐのね。よっ、外道フェアリー。』


「この程度で褒めるでない。薫ちゃんの話を聞く限り、お主らは戦車砲ぐらいなら耐えられるようじゃ。ならばその程度の戦力しか投入できない、市街地の方が安全ではないじゃろか。」


ドラゴン和明は探査をいったんやめて、腕を組んで頷いた。


『さすが熊代さん。亀の甲より年の功。たしかに市街地の方が威力の小さい武器しか使えないから、俺達には安全度が高まるかもしれない。という事はプランAを再考する必要が出てきたな。』


『和明さん、まだ諦めてなかったのね…』


「なんじゃ、そのプランAというのは?」


『俺達が最初に考えた作戦なんだけど、どっかの金持ちのペットになるのはどうだろうか?』


「ペットじゃと?薫ちゃんは可能じゃろうが、ワシと和明君は無理ではないか?」


『いや、俺は考えた。たとえば俺たちはフィギュアの振りをするとかどうだろう。』


『和明さん、熊代さんはギリギリそういうフィギュアの振りをできるかもしれないけど、ドラゴンはちょっと…。』


『くそおお、俺はフィギュアにもなれないのかあああああ!』


『和明さん、大丈夫。私たちは和明さんとずっと一緒。ずっ友だよ。』


「ほれ落ち込むでない。大丈夫、なるようになる、人生なんてそんなもんじゃ。」


『薫さん…熊代さん…、あ、ありがとう。グスン。』


フェンリル薫とフェアリー熊代に撫でられて、ドラゴン和明はどうにか落ち着く。


『わかった、まあ落ち着いたよ。ペットになることが可能かどうかは別としても、もうしばらく街を監視するよ。』


そういつつ、ドラゴン感覚(超感覚)を発動させて街の様子を確認し始めた。

東京ではいろいろな事が起こっている。


酔っぱらって喧嘩をする若者。

一生懸命キャバ嬢を口説くおじさん。

サービス残業を頑張るサラリーマン。

複数の男たちに追いかけられ、悲鳴を上げながら逃げる少女。


東京では、いろいろなことが起きている。


『って、少女の危機とかダメじゃねえええかあああああ!』


『びっくりした!どうしたの和明さん?少女の危機と聞いて、私がアップを始めたお。』


「どうしたのじゃ急に吠えて。何か良からぬことでも見つけたのか?」


『今ドラゴン感覚で東京を感じていたら、複数の男に追いかけられる少女を見つけたんだ。しかもこの近くなんだ。ちょっと助けに行こうと思う。もしかすると俺達に危険を呼ぶ行動かもしれないが、良いだろうか?』


フェンリル薫は器用にサムズアップする。

『世界で一番尊いのはショタBL。少女は世界で二番目に尊い存在。もちろん助けに行きましょう。』


フェアリー熊代も腕を組んで頷く。

「もちろんじゃ。人外に身をやつしても子供を守りたい気持ちは失っておらぬ。ワシも手伝うぞ。」


『二人ともありがとう。じゃあ荷物を持って出発をしよう。』


鞄などの荷物を亜空間収納にしまうと、三人は街に飛び出した。




・・・・・・・・・



裏路地を走る少女。

年齢は10歳くらいだろうか。

息を切らせながら、ツインテールを靡かせて走る。


その少女の後ろを4人の男たちが追いかけていた。

男たちの体格は、スーツの上から見ただけでも、鍛え抜かれたものだと分かる。


(助けてお爺ちゃん)


祖父が助けてくれること祈りながら逃げた。

しかし、それは無理だろう。

先ほどまで彼女と一緒にいた祖父は男たちに殴り倒され、すでに車に押し込まれている。


いま彼女を助けてくれる人間はいない。


そう、人間は。


「ギャオオオオオン(俺、見参!)」

「ワオオオオオオン(イエスロリータ、ノータッチだ変態紳士ども!)」


「きゃあああ」


助けに来たのに、少女が一番怯えた。

幻獣たちは、少女の悲鳴に腰が引ける。


「ギャオオオオン(まってくれ俺は良いドラゴンだから!)」

「ワオオオオオン(もちつけ!私は良いロリコンだから!)」


素早くフェアリー熊代は少女の目の前にあらわれる。


「落ち着くのじゃお嬢ちゃん。あのドラゴンとフェンリルはお嬢ちゃんを助けに来たのじゃからな。」


「妖精さん!」


少女の目が少し輝く。フェアリー熊代の登場で落ち着いたようだ。

フェアリー熊代の言葉は、少女を追いかけていた男たちにも届く。

男たちは、慌てて懐に手を突っ込んだ。


「ギャオオオオン(銃を出す気か!しかし遅い。)」


ドラゴン和明はサイズ変更魔法で巨大化し、尻尾の一振りで4人の男たちを薙ぎ払う。


「ぐああああ!」

「げほおおお!」

「うぎゃああ!」

「はうううん!」


一撃で四人いっぺんに吹き飛び、コンクリの壁にたたきつけられた。

血を吐いて動かなくなった四人。


「ギャオオオン(えっと、死んでないよな。おーい生きてるかー)」


「わおおおん(大丈夫じゃない?息してるし。)」


少女は、吹き飛んだ男たちに対して心配そうにオロオロするドラゴンが、なんとも滑稽に見えた。

そのおかげか、恐怖心は沸かない。

近寄って、ペタペタさわる。


「あの、ドラゴンさん。助けてくれてありがとうございます。」


「ぎゃおおおん(俺が助けたって分かってくれたのか。よかったあ)」

「わおおおん(よかったね。私は何もしなかったから感謝してもらえなくて悲しいけど)」


ドラゴン和明とフェンリル薫の会話は、少女にはわからない。

しかし、仲が良さそうだというのは見て取れた。


「ねえ妖精さん、ドラゴンさんと大きなワンワンは仲が良いのですか?」


「ワンワン・・・そうじゃな。ドラゴンと白いワンワンは仲良しじゃ。ちなみに、ワンワンはフェンリルという幻獣じゃよ。」


ドラゴン和明は、スーっと元の150cmくらいの大きさに戻った。

元の大きさに戻ると、少女よりも少し大きいくらいのサイズ。

少女は、そんな大きさのドラゴン和明に余計親しみを覚える。


「ドラゴンさん可愛い。まだ子供のドラゴンさんなんですね。」

「ギャオンギャオン(女の子に可愛いとか言われると恥ずかしいなあ)」


「ワオンワオン(和明さんばっかりロリに懐かれてずるい!私も!)」


フェンリル薫も対抗して小さくなる。

小さくなると、白い柴犬にしか見えない。


「わあ、フェンリルさんも小さくなって可愛い。」


少女はフェンリル薫に抱き着いた。


「わおんわおん(少女に抱き着かれる白犬。私初めて犬になってよかったと思ってるよ)」

「ぎゃおおお(犬じゃないでしょ、オオカミでしょ。薫さん、フェンリルだからね。)」


そんな風に、二人が少女とじゃれているあいだに、フェアリー熊代は倒れた男たちにちかよる。

念のため倒れた男たちを麻痺の状態異常にした。

これで男たちは数時間は動けない。


その状態で、男たちから持ち物を奪って亜空間収納にしまう。

(何が役に立つか分からんからな)


奪いながら持ち物を確認する。

全員同じようなものを持っていた。


財布には現金のみ数十万円。

銃にナイフにスタンガン、睡眠ガス。

手錠。

スマホ。

そして写真とメモ。


「なんじゃこの写真は?」


みると、今追いかけられていた少女と年配の男性が映っていた。


写真裏のメモは

『麻田宗吾。孫の麻田亜里香』


「麻田宗吾じゃと。麻田副首相か?これは厄介ごとの予感じゃのう。」


少女にもみくちゃにされるドラゴンとフェンリルを見ながら、これから起こるであろう事件に気が重くなるフェアリー熊代だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ