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俺氏、ブレス開眼

「ギャオオオオオオン(ひええええええ)」


恐怖で思わず叫びながら飛んでしまう和明。

34歳のリーマンだったのだ。

銃で撃たれた事なんてもちろんない。


ビビってしまうのは仕方ないだろう。


ドラゴンになったばかりだが、なぜか飛び方が理解できる。

時速300kmの速度で空を一直線に逃げるのみ。


どのくらい飛んだろうか、

一生懸命飛んで、ふと眼下を見るとすでに海の上だった。


(あれ?海の上にいる?そんなに長い時間飛んでないと思うけど。もしかして俺の飛行能力ってすごいのか。)


周りを見渡すと少し先に陸地が見えるが、周りに船などはない。

(少し落ち着くか)


羽根から出るエネルギー噴射を調整して、ゆっくり海に降りた。


ぴちゃん


そこで予想外の事が起きる。

なんと海の上に立てたのだ。


(おお、ドラゴン凄いな。さすが幻想生物だ)


その状態で波に揺られながら少し落ち着いた。


(さて、これからどうしたら良いんだろう)


まったく見当がつかなかった。

だが何もしないという訳にもいかない。

生きていかないといけないのだから。


ため息をつきながら、遠くの陸を見つめた。

(どうにか静かに暮らせないものかな)


ごろりと横になる。

海の上だが、沈まないので草原の上に寝転ぶような錯覚を覚える。

そして目を閉じてみた。


(はー、このまま寝ちゃおうかな。)


和明、現実逃避である。

ゆっくり空を見上げてボーとする。

良い考えが全く思いつかない。


なんとなく自分の体を確認したくなったので、目の前に鏡を出して姿を映してみた。

羽根の生えた黒い恐竜である。

眉間には宝石のようなモノがついている。

喉には一か所だけ赤い鱗がある。


ボーっと自分の姿を眺めてふと気づいた。


(あれ?今俺はどこから鏡を出した?)


あまりに無意識だったのでしばらく気づかなかったが、目の前に鏡があるのはおかしい。


触ってみた。

すると鏡は粒子のように消えてしまう。


(何が起きた?)


考えていると、勝手に知らないはずの記憶が頭を持ち上げる。


ドラゴンが生まれた時から持っている遺伝記憶。

その中にドラゴンの魔法も含まれているのだと気付いた。

下等な生物は、物を食べたり排泄したりする本能はあるが、知識は出生後に覚える。


しかしドラゴンのような上位種は、遺伝子の中に魔法や教養が含まれているらしい・・・という事を本能的に理解した。


(生まれた時から人間よりも教養があるとか、どんだけ凄いんだよ。しかも長寿だからさらに魔法や知識に磨きをかけるんだろ。なるほど、ドラゴンが異世界で幅を利かせるわけだ。)


さっきの鏡も光魔法の応用らしい。

腕を組んで一人ウンウン頷いてしまった。


(あ、だったらこの窮地を脱することができる魔法とかないかな。)


遺伝子の記憶へ意識を向ける。

するとあっさり答えが見つかった。


光魔法を応用した姿消し。

風魔法を応用した音消し。

火魔法を応用した熱消し。


それらを駆使すればたやすく身を隠せそうだ。


(ドラゴンって本当にすごいんだな。)


和明はこの3つを統合してステルス魔法を創造した。


さっそく自分にステルスをかけて鏡を出してみる。

鏡に姿は映らない。


(わははは、これで安心だ。)


すぐにステルス魔法を解除し、海の上でゴロゴロした。


しばらくすると、ドラゴンの感覚に何かが凄い速度で飛んでくるのを感じる。

(なんだ?)


起き上がり、ドラゴン視力で妙な気配のほうを見た。

すると斜め上空の数十キロ先から何かが飛んできている。


(丸いもの・・・げ!ミサイルじゃないか!)


ドラゴン頭脳がすぐに判断を下した。

自分に向かってミサイルが落下してきている。


(こんな早くミサイルなんて撃つものか?っていうかあっちは日本のある方向じゃないよな。)


そう、ミサイルが飛んできているのは日本海の反対側の陸地からだ。

そして気づいた。


(あっおー。もしかしたら日本から高速飛行してきた物体が領海を超えたから撃たれた?)


一呼吸おいて少し落ち着いてみる。

ゆっくり息を吸って

叫んだ。


「ぎゃあおおおおん(っていうか、お前ら日本に対して殺意高すぎじゃーーーーい!)」


怒りを叫んだら、そのまま口から野太いビームが出た。


ピキュウウウウウウ

凄い甲高い音がする光線。


(うわ、なんか出た!しかもこの甲高い音はかなりの高出力だぞ!)


光線は数キロ先のミサイルをあっけなく撃ち落とす。

爆発はしない。一瞬で溶けて消えたから。


(うわわわ、これどうやって止めるの?)


ミサイルを撃ち落としたのはいいが、口から出る光線の止め方がわからない。

慌てて首を振る。


キュウウウウウウン


(あ・・・・)


ミサイルを撃ってきた陸地のあたりをビームが横に薙ぎ払ってしまった。

一拍遅れて、陸地に爆発のような炎の壁が立ち上がる。


(や、やっちまった・・・・)

緊張でごくりと唾を飲み込む。


そしたら口から出ていた光線は消えたのだった。

どうやら口を閉じるだけでよかったようだ。


(あわわわ、ど、どうしよう。)


オロオロしてみる。

何も解決策は浮かばない。



混乱で麻痺した脳みそはとりあえず目の前の炎の壁と反対に逃げる判断をした。

そして和明は日本へ帰っていくのだった。


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