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俺氏、光らせる

いつも誤字報告をありがとうございます。

ほんと助かりまっする。

影山早紀。

元公安の腕利き。20代だがベテラン並みの機転も利く。


独自の情報網を警察内にも構築している。

今回も、その情報網で知らせが入った。


誘拐犯が瀕死の重傷で逮捕された。

彼らは重傷を負いながら、ドラゴンとフェンリルに出会ったと証言したのだが。

その数分後には、影山に情報が届いた。


情報をくれた捜査官に、ポケットマネーから10万ほど渡し、急いで鞄のGPSを頼りに麻田邸に来たのだ。

他の連中に先を越されるわけにはいかない。

なぜなら、自分以外は幻獣と『交渉』する能力がないと考えているためだ。


幻獣は性格がおとなしいものもいるが、すべて警戒すべき能力を持っていると思われる。

だからこそ攻撃は、最も悪手だ。

ではどうやって対策するか?


影山の結論は交渉のみが、有効な手段だと考えている。

だが、ほかの実行部隊は武力制圧しか考えていない節がある。


(あいつらは馬鹿だ)


そのため、影山が最初に追ったのはフェアリーだった。

言葉が通じそうな数少ない幻獣だから。

小さくてかわいいからメロメロになって追っかけた…というのも理由の半分だが。


そして前回の接触で、自分の考えが正しいという根拠を得た。

ドラゴンとフェンリルも会話可能らしいというのだから。

しかも、知能も高いようだ。


今回は、少女を助けた。

かなり人間的な感性が期待出来る。


ならば交渉と説得こそ、最大の対策だと疑う余地は無くなった。


(そしてあわよくば、お友達になりたい)


ファンタジーが大好きな影山は、そんな私情も多分に持っている。

だからこそ、ほかの連中よりも必死だ。

寝る間も惜しまず、ポケットマネーすら湯水のように放出する。


仕事にかこつけて、幻獣と接したいから。


麻田邸にたどり着くと、きれいな犬に顔をうずめて沈んでいる亜里香を見つけた。その光景は影山の心を痛めた。

可愛いものが大好きな影山は、少女も大好きだから。


(できればそっとしてあげたい。)


しかし、それは許されない。

心を鬼にして話しかけた。


すると、亜里香は影山がドラゴンに投げ渡した鞄を肩から掛けているのに気づく。

ドラゴンが関わっていたのは確定である。


少し言葉を交わして名刺を渡すと、そっと亜里香の前に膝をつく。


「こんな時にすいません。ですがこちらも重要な用件ですので。」


亜里香は白い犬をぎゅっと抱きしめてこわばる。

申し訳ない気持ちなるが、どうしようもない。


「亜里香さん、誘拐されそうになった時に、どうやって助かったかお姉さんに教えてもらえますか?」


亜里香はきゅっと口を結び、イヤイヤをするように首を横に振る。

影山の心は揺れる。

できれば今はそっとしてあげたいと。

だが影山の職務は、日本の安全がかかっている。

引くわけにはいかな。


そこで誘導尋問に切り替える。

「亜里香さんはドラゴンさんに助けられたそうですが、そのときフェアリーさんは一緒でした?お姉さんは

フェアリーさんと仲良しなので心配しているんです。ドラゴンさんやフェンリルさんにいじめられていないか。」


亜里香が目に見えて動揺した。


「フェアリーさんは、ドラゴンさんやワンワンさんと仲良しでしたよ。いじめられているようには見えませんでした。ドラゴンさんもワンワンさんも優しいですし。」


掛かった。

影山は情報の引き出す手を緩めない。


「おやおや、それは良かったです。フェアリーさんは力が弱いので心配だったのですよ。ドラゴンさんは人に怪我をさせるような幻獣ですから。今回ドラゴンさんが男たちをケガさせたのですよね。」


「違います!ドラゴンさんは私を助けてくれたんです。動きが凄く優しいんです。悪いドラゴンさんじゃありません!」


「ではワンワンさんの方が悪いのでしょうか?」


「ワンワンさんも悪くないです!私の事を慰めてくれます。優しいワンワンです。」


(慰めてくれる?慰めてくれたではなく? これは何か隠していますね)

影山は追及を緩めない。


「ところで亜里香さんが持っている鞄、どこで手に入れたものですか?」


亜里香はビクリとして、無言で鞄を抱きかかえ目をそらす。

(何かある!)


「亜里香さん、実はその鞄は私がドラゴンさんにあげたものなんですよ。じつはうっかり100万円を入れたまま渡してしまったのです。せめてお金だけでも返して欲しいので中を見せていただけますか?」


「だ、だめです。お金は後で私が弁償します。ですから・・・」


(この反応はあたりですね。もしかして幻獣を追跡するための何かを隠しているかも)


「そうですか。そうそう、ここにお菓子があるのですが、おひとついかがですか?」


いい匂いのするホワイトチョコのかかったクッキーをさしだす。

亜里香は思わず受け取るために手を差し出してしまった。


その一瞬のスキを逃さない。


「失礼します!」


影山は一瞬で鞄に手を伸ばす。


「あ、駄目です!」


亜里香は急いで鞄を庇おうとしたが、百戦錬磨の影山の方がはるかに素早い。


バカっと鞄が開かれる。


そこで影山は固まった。


「あ」影山

『あ』ドラゴン和明

「あ」フェアリー熊代


ドラゴンとフェアリーが居た。

目が合う。

お互い、「あ」って顔になっている。


さすがに現物が隠れているとは思わなかったため、影山も一瞬呆けてしまった。

そこでハッとなって白い犬を見る。


目が合うと、気まずそうに顔をそらされた。


そして理解する。

そっと鞄を閉じた。


「あははは…、まさか小さくなれるとは思いませんでした。これは参りましたね。」


影山に冷や汗が流れる。

あの強力な幻獣が、小型になれるのだ。

これほど凶悪なことはない。

この大きさではレーダーや衛星の目も誤魔化せるだろう。


ここで交渉を間違えれば事態は深刻化すると考える。


一呼吸おいてから亜里香を見た。

鞄と白犬を抱いて、必死な目で影山を見る。


「このことは秘密にしてください。私がちゃんと面倒みますから。」


そんな可愛い話ではない。

ドラゴンはミサイルを一瞬で蒸発させるような存在だ。

ペットを飼うのとはわけが違う。


しかし、影山の信条は交渉と説得。

これはチャンスでもある。


深呼吸して、出来るだけ優しそうな感じに微笑んだ。


「どこか人のいないところに行きませんか。私はフェアリーさん達の味方です。少し相談しましょう。」


「本当に味方ですか?」


「はい、それは間違いありません。フェアリーさん達に聞いてもらっても良いですよ。」


「…わかりました。では私の部屋に来てください。」


しぶしぶ了承した亜里香は、影山を連れて自分の部屋に向かう。


歩きながら、影山は亜里香に付き添うように歩く犬をみる。

犬は影山が見つめると、気まずそうにそっと顔を背けた。

(知能が高いですね。しかも人間臭い。やはり交渉可能そうです)


亜里香の部屋に着くと、中に入りドアを閉めた。


亜里香が椅子を用意してくれたので影山はそこに座る。

亜里香は自分のベッドに座った。

白い犬は、亜里香と一緒にベッドにあがり亜里香の隣に座る。


(さて、どうやって切り出すべきか)

頭をフル回転。


すると、鞄からもぞもぞとドラゴンとフェアリーが出てきて、先に話しかけてきた。


「影山よ、その節は世話になったな。ワシらのために大怪我をさせてしまったので心配しておったのじゃが。」


「おやおや、心配してもらえていたとは嬉しいですね。動ける程度には回復していますよ。」


「どれ、ワシに傷を見せるのじゃ。」


一瞬迷ったが、ここで傷を見せれば亜里香の信用を得られるかもしれないと計算が働く。


「どうぞ。見ても気分が良いものではないですが。」


服をめくる。

すると、血がにじんだ包帯が現れた。

実はかなり無理をしている。

それでも幻獣を追いたかった影山の執念が、その傷の滲んだ血である。


亜里香は「ひっ」と小さく息をのむ。


フェアリー熊代は、そっとその傷に近づき手をかざした。


「ワシらのために悪かったのじゃ。せめてその傷を治療させておくれ。」


小さな手からフワッとした光が飛び出す。

その光は影山の脇腹に吸い込まれた。


効果は劇的だった。

数秒で影山の痛みは消える。


「あわあわ、傷の痛みがなくなりましたよ。まさか今ので完治ですか!」


すぐに包帯を外してみる。

本来あるはずの縫い傷がキレイになくなっていた。

触ってみるが、どこに傷があったか全くわからないくらい完治している。


「凄い…たった数秒で完治なんて。これがフェアリーさんの力なのですね。」


感動で体が震える。

まさにファンタジー。夢にまで見た治癒魔法だった。

影山は、椅子から飛び降りると土下座するように頭を下げる。


「ありがとうございます!夢にまで見たヒールの魔法を受けられるなんて感激です!さすがフェアリーさん!さすフェア!」


「そう畏まるでない。当然のことをしたまでじゃ。それよりも一つ相談があるのじゃが良いか?」


「はい、何でも言ってください。」


「うむ、ワシらは静かに暮らしたいと思っておるのじゃ。どうにかワシらを見つけたことを誤魔化してもらえぬじゃろうか?」


影山は一瞬で計算する。

敵対したら終わりの相手。その相手と友好的な人物は必ず必要だ。

本部報告をしても、おそらく監視しかできないであろう。

それどころか、些細な政治的な変化でどのような事が起こるか分からない。

ならば、自分だけが味方である状況の方が長い目で考えると有利ではと。

もちろん、仲良くする役得をほかの奴に奪われる可能性があるのが嫌だったというのも、多少(6割)あるが。


「もちろんです。さきほど亜里香さんとも約束しました。私は皆さんの味方です。仕事より憧れのファンタジー優先です。」


「お主…それでよいのか?まあ、ワシらは助かるが。」


このやり取りを見てたドラゴン和明は、影山のキラキラした瞳に嘘を感じなかった。


「ぎゃおおおん」


影山はフェアリー熊代を見る。

「今ドラゴンさんは何と言ったのですか?」


「恥ずかしいセリフじゃ。」


「・・・それは興味深い。是非教えてください。」


「『力が欲しいか、ならばくれてやろう。だから見逃して』、だそうじゃ。」


ガタッ


影山は土下座から一歩前に出る。


「力をくれるのですか!たとえドラゴンさんが邪竜で、魂を差し出せと言っても是非お願いしたいです!」


「ぎゃおんぎゃおん」


影山はフェアリー熊代を見る。

「ドラゴンさんはなんと?」


「『なにそれ怖い。汚職してくれるだけでいいから、落ち着け。』だそうじゃ。」


ドラゴン和明はジェスチャーで「落ち着け」と伝える。


しかし影山の興奮は収まらない。

「異世界に行ってないのにファンタジー展開ですよ。落ち着くのは難しいです。」


諦めたドラゴン和明は、むくりと本来の大きさに戻り影山の頭を鷲掴みにした。

影山から光があふれる。


亜里香はその光景を感動で見つめた。

「すごい。それにキレイ。」


しばらくすると光が消えた。

影山はゆっくり自分の手を見る。


「私は、どのような力が授かったのでしょうか?」


『自分を鑑定してみればいいよ。なんかたくさん入る余地があったから、おススメを沢山突っ込んだ。』


「え。。。ドラゴンさんの言葉が分かる。うそ、すごい。」


『おっと、フェンリルの私も忘れてもらってはこまるねえ。』


「うわ、もしかして私は幻獣さんの言葉が分かるようになったのですか?す、すごい。」


そこで亜里香がガバリとドラゴン和明に抱き着いた。


「ドラゴンさん、影山さんとお話しできるようになったのですか?ズルいです。私もお話ししたいです!」


『ズルいって・・・。まあいいか、ちょっと動かないでいてくれよ。』


ドラゴン和明は亜里香の頭をつかみ、同じようにエンチャントをした。


亜里香は輝き、しばらくして光が消える。


『どうだ、言ってる言葉が分かるでしょ。』


「うわああ、すごいです。ドラゴンさんの言葉が分かります。っということは…」


『はいはーい、ワンワンこと私、薫さんともお話しできますよ、亜里香ちゃん。』


「すごーい、すごーい、うれしい、すごーい」


「ふむふむ、喜びすぎて語彙が死んでおるようじゃの。」


飛び跳ねて喜ぶ亜里香。

その横で感動に打ち震える影山。


ドラゴン和明は、その二人を「やれやれ」と見つめる。

そこで急に思い出した。


『って、違ーーーう!和んでる場合じゃないわあああい!』


影山と亜里香はビクリと動きを止めた。


フェンリル薫とフェアリー熊代はそろそろ慣れてきたのか、落ち着いている。


『和明さん、またいきなり叫んでどうしたの?』


「そうじゃぞ和明君、影山も亜里香ちゃんもビックリしてしまったではないか。」


『いやいや、俺達にはもっと大事なことがあるでしょ。』


亜里香は可愛く小首をかしげた。


「ドラゴンさんやワンワンさんとお話すよりも大事なことですか?」


影山も腕を組む。


「幻獣に関することよりも大事なことはないですよ。」


ドラゴン和明、尻尾を振り振り二人を見る。


『いやあるだろ!早く亜里香ちゃんのお爺ちゃんを助けに行かなくちゃ!』


「あ」

「あ」

『あ~』

「う、うむ」


哀れお爺ちゃん。

必死に助けた孫に、今本気で忘れられていた。


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