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アナザー・ドロップ~裁きの漆黒眼  作者: 瑞祥颯
第一章
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3話 ギルドマスター

「ギルドマスターがこの部屋で待っていますのでどうぞお入りください」


 受付嬢の案内に従って、会議室のような部屋に案内されて行くと、マリカの親父さんがそこにいた。あの、顔面ドワーフっぽいおっさんだ。とは言っても、人間ではあるし、ちゃんとした服を着ているので礼儀を知らない人ではないのだろう。

 ギルド内で、ある程度男性の服装も見てきたが、ラフな格好をしている、という訳ではない、この世界で言う正装に近いものを羽織っているのは明らかだった。日本ならば前開きのベスト、と言われそうなものに、下にはギルド所属ならではの服装だ。

 ごくりと唾を飲み込んで、零と一緒に目の前の椅子に座っていくと、彼は待ち構えていたかのように切り出していく。


「オレはエウゲンだ。ここのギルドマスターをしている。よろしくな。そういや、たしか君たちは昨日から二階の部屋に泊まっていたんだったね。マリカから聞いている。しばらく落ち着くまではあの部屋を使ってくれてかまわない」

「ありがとうございます。」

「…さて、前置きは置いておくとして、君たちのステータスだったね。まず、君、ええとハジメ君だったか?…ご愁傷様だったね。まあ、魔力がない人間もいない訳じゃないから、こちらで解る範囲だが職業探し、手伝わせてもらう。それと、隣の…ゼロ君、君のステータスについてだ。」

「ああ、あのとんでもない結果ですね。知識がない僕でも、おかしい事は解ります。」

「その通り。」


 魔力レベルにしても、スキル詳細についても、本来見ることができない、なんてある訳がないだろう。だからこそ呼ばれたのは明白だ。


「今回問題にしているのはゼロ君のステータス表記異常。すまないが、もう一度改めさせてもらう。正し、今度の確認方法は先程とは異なるから覚悟してくれ。」

 そう言って、エウゲンというギルマスは懐から水晶を出す。

「これは、受付にあるステータス確認機の元となったものだ。これは、呪いだのなんだのも全て見回してくれる。これならばおそらく、だが確認できるだろう。手をかざしてみてくれ。」

 なるほど、受付のほうにあるステータス確認機はあくまで、この水晶の模倣品のようなものなのか。納得して、零に「やってみて」と言って、エウゲンさんが机の上に置いた水晶の上に零の手をかざせさせる。

 ごく、と喉を鳴らしながら零は息を飲む。

 すると、水晶 もとい、零の手の上に垂直状に、モニターのようなものが映り、ステータスの表示が映し出されていく。


 ======

 名前 ゼロ・ヒダカ・ガヴラス

 ステータス総合Lv5

 魔力 Lv71

 HP…3000000/3000000

 MP…500000/500000

 

 属性 火属性・高 風属性・高 水属性・中 土属性・低 闇属性・超高 光属性・中


 スキル 邪眼(麻痺)Lv1、黒炎の剣(闇&火)Lv1、黒竜の吐息(闇&水&風)Lv1

 ユニークスキル ステータス総合Lvが20を超え次第解放

 装備 呪具・繋、黒竜の剣

 称号 《勇者の娘》、《異界の渡り人》、《闇に愛されし者》、《闇に呪われし者》《異界人・ハジメの守護者》


 備考 呪具によりレベル、属性レベルが下がっている可能性あり。


 ======

 

 想像以上の結果に、エウゲンさんも目を思いっきり点のようにして、言葉も出ないのか、何度も目を擦っては見直しているようだ。僕も同じで、あんぐりしてしまう。

 ステータス総合Lvとか魔力Lvはこの際置いておくとしても、スキルと称号と装備がおかしすぎる。

 属性が火、風、水、土、闇、光 って言うなら、まず土と光系のスキルがない疑問がある。さらに、突っ込みたいのが中二病擽るスキル名の数々に、実体として見たことがない装備の剣。加えて、称号の闇に~ってのに加えて僕の名前が入ったやつ。え、僕年下の女の子に守られるの決定な訳?…等々。

 あまりの結果に、自身の結果ももしかして何か出てくるのではないかとすら思えてくる。


「あ、あのエウゲンさん、念のため、僕のももう一回、いいですか?」

「ああそうだな、試しに…やってみるか…」

零の結果にあまりにも驚いたせいで脱力してしまったけれど、可能性がない訳ではない…?と期待を込めながら、今度は僕が水晶の上に手を置いた。


======


名前 ハジメ・モリミヤ

ステータス総合Lv1

魔力 なし

HP…エラー

MP…エラー 

属性 エラー

スキル エラー

装備 なし 

称号 《異界から渡りし者(仮)》、《ただの料理人》、《ゼロに守られし者》


======


称号、酷い…‼!

顔を青くしながら肩をがっくり落としていると、エウゲンさんがぽん、と肩を軽く叩いてくる。

「ま、そういうこともあるさ」

 嬉しくないよ!



 結局僕は、異世界に来たと言うこともあって浮ついていたのだろう。自身のステータスの結果に落ち込んでしまい、ふて寝して1日を無駄にしてしまった。

 エウゲンさんから聞いたのか、マリカも、僕の部屋に覗きに来るときなんか苦笑いしていたように思う。零には悪いけど、僕はこれからどうしたらいいのか解らない。…といっても、ステータスにある通り料理ぐらいしかできないんだろうけど。たぶん。

 零は、僕が落ち込んでいる姿を見ながらも、付き合って傍にいてくれている。健気な姿に、癒されながらも複雑な思いで一杯だ。


「零…、零はこれから、どうしたい?」

 思い切って僕は、零に尋ねてみる。零は、少し驚いたような顔をしていた。

「わたし?…そうだな、一旦お父さんの故郷に行きたいな。」

「お父さんの故郷?…そっか。ここは零の故郷でもあるんだもんな。」

「うん。あそこに行けば、この呪具を解く手がかりもあるかもしれないし。お爺ちゃんもまだ居る筈だから、何か聞けるかも」

「そっか…そうだよな。ここにいるだけだったら何も変える事は出来ないもんな。解った。金銭問題は、何とか考えてみる。様子見ながらになるけど、5日後にはここを出られるようにしよう」

「わかった。」

 

 

 翌日、僕は身に着けていた物の中から、大したものではないと思いつつも、この世界ではどのみち使い道がない日本の貨幣を何枚かと、ここに来た時に一緒に送られていた、珈琲のいくつかを出して、ギルドに換金できないか持ち出してみた。もし日本に帰る事ができたら、店長に怒られるかもしれないが、背に腹は変えられない。

「あら、ハジメさん。今度は一体何を?」

「いえ、ひとまず先立つものがないと何も出来ないので…これらを金銭に変えられないかと思いまして」

「なるほど。」

 冒険ギルドは素材などの換金は行っている。異界のものは受け付けてくれるか解らないが、見せてみるだけでも価値はあるだろうと思って、昨日の受付嬢に見せた。

「へえ、あなたの世界のお金はこうなっているんですね。素材は…ああ、銅が使われているのですね?何かと加工はされているようですが」

「はい。あとこれはどうですかね?」

 

 受付嬢は、袋の上から微かに香る香ばしい匂いを嗅いで、怪訝な顔をする。

「これは、どういうものなのですか?」

「ええと、こちらの世界ではあるのか解りませんが、これは珈琲という飲み物ものです。元は豆なんですが、この袋の中には、炒って、粉末状にしたものが入っています。」

「もしかして…コフィ?苦い飲み物ですか?あと黒「それです!」

 うっかりカウンターを乗り出すようにして言ってしまって、受付嬢は思わず引いた。

「ご、ごめん。まさかここでもあると思わなくて」

「い、いいえ。コフィならこちらでも流通してますよ。ただ、好き嫌いがあるのと、嗜好品ということで少々高値で取引されています。私自身、出会った事がなかったので一瞬何か解りませんでした…」


 なるほど、と思う。日本でも流通しだしたのは明治時代ぐらいからだ。どこかの本で読んだが、江戸時代に伝来されたばかりの頃に初めて飲んだ日本人は、苦くて焦げ臭いものと言って、それほど親しまれていた訳ではなかった。今でこそ香りを楽しむ者達がいるけれど、伝来されてきたばかりのものを口にした日本人からすれば衝撃的だったに違いない。おそらく、こちらではまさしく明治時代にようやく受け入れられはじめ、珈琲の良さを正しく理解して親しんだ日本人と似たような感覚でいる人達が多くいるのだろう。

「コフィは、目覚め薬として使われる方のほうが多いんですよね。まさか粉末状のものがあるとは思いませんでしたが、いいでしょう。受け取らせてもらいますね」

「ありがとうございます…!」

 僕はそう言って、お金に変える事に成功したのだった。


 換金結果としては、あれから手持ちのものをさらに吟味して出した事もあって、路頭に迷う事はないだろうというぐらいの量は出してもらえることができた。

 いくらかだって?5ペシオン4500ペーセです!

 金銭の基準もその時に一通り教えてもらった。

 通貨単位はペシオンで、補助通貨がペーセらしい。

 感覚としてはヨーロッパのユーロとユーロセントに近いのだろうか、とも思ったけれどそうでもなかった。ここら辺では紙幣は使われてない。

 リンゴの単価と水の単価などを聞いて、大体を把握していく。

 こちらでのリンゴの単価は200ペーセで、販売用の水は量も多いのか千ペーセぐらいらしい。服はまたそこそこ安いらしく、900ペーセを平均価格として売られているようだ。ド〇キの服並みなのか…?

 また、1ペシオンは、1万ペーセと同じ価値のようだ。単位は特徴があるけれど、価値の感覚としては日本の円に近いものなのだろう。1円=1ペーセ と行けば、判断もしやすくなる。そう捉えていくと、貰ったお金がある程度色付けてもらったのかもしれないとも取れて、少し申し訳なさも感じた。

 しかし、あちらからすれば、後から出して渡したカートに興奮して、「このカートっていうの、便利ですね!」とか言ってコロコロ回しているので気にしないでいてもいいのかもしれない。

 ちなみにこの世界に一緒に送られてきたカートは2つだ。ちなみに渡したものは自分のものではなく、たまたま一緒に送られてきた他人のものなので僕自身はあまり困っていない。

 …もし日本で、カートがなくて困ってしまった人がいたらごめんなさいだけど、気にしていられないからね、シカタナイね?(ちなみに中は空っぽだったので、おそらく買い物をする前か何かだったのだろうと推測している。)


 


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