シザー・ガール
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私は重いカーテンで締め切った暗い部屋で、ぬいぐるみを造っていた。
太陽も月も知らない、私の虚像をさらけ出す工房。
私の両手にはハサミと針。まるで自分の体の一部のように動かしていく。
チョッキンチョッキン、プスリプスリ。
その内私は眠くなる。
チョッキンチョッキン、プスリプスリ。
私は夢に堕ちていく。
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私は重いカーテンをおし開き、ホコリだらけの部屋で自分の姿を見た。
神様も科学者も知らない、寝ぼけ眼で作られた私の姿がさらけ出される。
私の体には脱げないクマのパーカー。完全に自分の体の一部になったそれを動かしていく。
ドックンドックン、ふわりふわり。
そのうち私は恐怖と高揚を覚える。
ドックンドックン、ふわりふわり。
私は外に飛び出した。
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私は重い心を解き放ち、世界に自分の姿を表した。
あなたも私も知ってる、血のかよった私の新しい姿。私の周りに人々が集まる。
でも私の心にはハサミと針。自分の心の一部になったそれが、近づく人の心を刺す。
ジョッキンジョッキン、ブスリブスリ。
私は怖くなって再び家に引きこもる。
ジョッキンジョッキン、ブスリブスリ。
どんなに繕っても心の凶器は隠せない。
傷ついた私はまた、夢に堕ちていく。
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私は脱げない上着と、重い心を抱えて、暗い部屋で生きていた。
私しか知らない、冷たい凶器が生えた私の心の姿。
そのうち私は自分の一部となった凶器を使ってぬいぐるみを作り始める。
チョッキンチョッキン、プスリプスリ。
私の作ったぬいぐるみが、誰かの元に届き、笑顔が咲いた。
チョッキンチョッキン、プスリプスリ。
そして、その時やっと私は私自身で心の凶器を認められた。
私は脱げないパーカーと重い心を誇らしげに、暗い部屋を出ていって、ついには二度と戻らなかった。
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