揉めて、和解、揉めて、和解
投稿がとびとびですいません。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、おきてよ」
「ーーー」
「遅刻しちゃうよ」
「うーーーん……」
ベットから体を起こすと制服姿の涼が視界に入った。
「しっかりしてよね」
「いつも起こしてくれてありがとうな、涼」
すると涼の顔は真っ赤になった。
「そんなこと言われたらなにも言い返せないじゃん」
ボソボソと言ったので聞き取りにくかったが僕にはそう聞こえた。
「ご飯はリビングにあるから」
涼は顔を真っ赤にしながら去って行った。
また平穏な日常が戻ってきた。色々な疑問付きだが……
一階に降りご飯を食べているとチャイムが鳴った。
「まだ葵とのいつもの約束の時間じゃないのに」
いつも通り外を見ると明音ちゃんがいた。
「げっ」
家の中から外を窺っているのが見つかってしまった。見つかってしまったら仕方ない……
「おはようございますわ、竜さん」
「おはよう、明音ちゃん……じゃなくてなんでここにいるの?」
「ダーリンのお迎えですわ」
「その呼び方はやめてって」
「うふふ、冗談ですわ。ダーリン」
「はぁ……」
平穏な日常が戻ってきたのは気のせいだったようだ。
「お邪魔しますわ」
「ちょっと、まって」
明音ちゃんは強引に家に上がり込んできた。
しかし靴は綺麗に揃えられていた。
こういうところは常識的なのになんで僕に対しては常識的になれなのだろうか。
「この感じ久しぶりですわ」
「そうだね。確か、明音ちゃんが最後に来たのが6年生の頃だから約4年間ぶりぐらいかな」
明音ちゃんのはしゃぎタイムは続く
「竜さん、ご飯中でしたのね……それは失礼しましたわ」
「だからちょっとまっててね」
「待つ必要はないですわ」
「どうして?」
「わたくしが食べさせてあげますわ」
これはいわゆるあーんというやつではないか……
「そんなのいいよ……恥ずかしいから」
「恥ずかしくないのでしたらいいと申し上げているということでよろしくて」
逆手にとられた……
まぁこんなに可愛い女の子にあーんされて嫌な男はいないと思う。
「でしたら大丈夫ですわ。ここにはわたくしと竜さんの二人ですわ」
「確かに」
「ここに座ってくださいませ」
もうおとなしく従っておこう。
「ではあーん」
明音ちゃんは箸を持ちご飯を掴み僕の口に運んだ。ドキドキする。
「美味しよ。ありがとう」
「どういたしましてですわ」
明音ちゃんは僕の膝の上に僕の方を向いて座った。いい匂いがする。
「ちょっと明音ちゃん」
「ーーー」
明音ちゃんは真剣な顔で見つめてきた。
「夢じゃないのですわね……」
僕は片手で明音ちゃんの頭を撫でもう一方の手で抱いた。
すると明音ちゃんは僕の胸にうずくまり泣いた。
服がびしょびしょに濡れるほど泣いた。
「もう大丈夫ですわ」
「ちょっとまってて。制服にきがえてくれるね」
「わたくしが手伝いますわ」
「それは結構です」
明音ちゃんも冗談で言ったと思っていたがどうやら本当に手伝おうとしていたみたいに見えた。明音ちゃんは冗談で言っているのか本気なのかいまいちわからない。
着替え終わり明音ちゃんが待つリビングに入るとチャイムが鳴った。
「いくよ。明音ちゃん」
「はい」
まんべんの笑みで明音ちゃんは答えてくれた。もう僕にはこの時点でアニメでは最終回だなと感じた。
しかしそうはいかない問題は山積みだ。
「おはよう、葵」
「おはよう、竜くん」
そうこれからが本番だ。
「竜さん、あの方は?」
「隣に住んでいる。有栖川葵だよ。葵、僕の今隣にいるのは九条明音だよ」
「ちょっと竜くん、九条さんと腕を組んでいるのはどうして?」
あっいつの間に……そういや葵には転校生のこと言ってなかったな
「ほんの数日前に明音ちゃんは転校してきたんだ」
「それにしては名前で呼んでるの?怪しいよ、そんなことより離れなさいよ」
「何をおっしゃっていますの?わたくしは竜さんの婚約者ですわよ」
「竜くんにはそんな婚約者なんて人はいません」
「いますわ。わたくしがそうですもの。そんなことよりあなたこそ竜さんに近づき遺産でも狙っていますの?」
さらっと二人は僕にダメージを与えていく……
「竜くんは女の子の友達すらいないのよ」
「それの言い方はひどくなくて?もっとオブラートに言うべきではなくて?」
言い方の問題じゃないよ。
僕にダメージが蓄積していくよ。
やめてーーー
「本当に失礼な方だね。竜くん」
「本当に失礼な方ですわ。竜さん」
「君たちが失礼な方だよ」
危ない。もう少しでヒットポイントがなくなる寸前だった。
「仲良くしてあげますわ。自称幼馴染」
「そっちこそ仲良くしてあげる。自称婚約者」
「「なんですって」」
なんで僕の周りはこんな出来事ばっかなんだ……
僕たちはこんなやりとりをしている間に学校についた。
葵と明音ちゃんの教室が違ったことで二人の言い合いから助かった。
僕と明音ちゃんは教室に入ると真壁がいた。
「きりっち、あはようっす。自称婚約者もおはようっす」
「そんなばかな……」
もうやめてくれ……揉めるのだけは……
「おはようございますわ、真壁さん」
明音ちゃんが真壁に挨拶をした。少しびっくりした。
「なんすか?どうしたんすか?ちょっと熱でもあるんすか?」
「あなたと争う意味はわたくしにはないということに気づいたのですわ」
「そうなんすか……よくわからないっすけどそれならこれからよろしくっす。九条っち」
「九条っちはやめてくださいませ。わたくしは竜さんとあなたが親友ということを認めただけですわ。あなたにわたくしの名前を気安く呼んでいい許可をした覚えはありませんわよ」
「九条っち、九条っち、九条っち」
「なんですの?喧嘩うってますの?」
まぁそうなるわな……
「わたくしのことは九条さんとお呼びくださいませ。わたくしはあなたのことを真壁さんとお呼びいたしますわ」
「了解っす」
なんとか一件落着。僕は見ているだけだったけど……
すると放送がかかった。
「霧島竜さん。霧島竜さん。至急生徒会室まできてください」
なんか僕やらかしたっけ……
「なんか呼ばれているみたいだからいってくるよ」
「竜さん、わたくしもお供いたしますわ」
「明音ちゃん、気持ちはありがたいけど一人でも大丈夫だから」
「きりっち、いってらっしゃいっす」
真壁が敬礼していたが理由がよくわからず見てないフリでやり通した。
生徒会室へと向かう。本当に何もやらかしてないと思うのだが……
作品を読んでいただきありがとうございます