無力だからってやらない理由にはならない
話を前と分けた都合上話が短いと思います。
「ーーー」
「患者が目を覚ましました。先生を呼んで来てください、早く」
なんでそんなにあわててるんだ。患者って誰のことだ。頭が痛い。ジンジンする。
「ここは?なんで僕はここに」
目を開けて周りを確認するが目がぼやけていて見えない。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
涼の声がした。泣いているような声だ。
「どうしたの?涼」
「お兄ちゃんがお兄ちゃんがーーー」
よく聞き取れない。
「涼、なんで僕はここに」
素朴な疑問を言ってみた。
「お兄ちゃんは二階から飛び降りてそれで頭をうってそれでそれで」
「涼、僕が二階から飛び降りた?」
あれなんか大切なことを忘れているような
「九条さんの家に遊びに言ってそれで飛び降りたって」
「九条さん………九条さん……。そう、明音ちゃんはどうなの?」
「それが……」
「えっ、なんで答えてくれないのかな」
なんで……
「明音ちゃんはもう……」
「涼は本当に嘘が下手だね」
「嘘じゃないよ。お兄ちゃん」
わからない。嫌だ。わかりたくない。
なんで僕だけ……なんで助かったのが僕の方なんだ。
「明音ちゃん、明音ちゃん、明音ちゃん……」
「お兄ちゃん明音ちゃんは本当にもう……」
「また僕は何もできなかったのかまた僕はまた……」
何もしてもダメな気がした。もう何もできない。そう確信した。
「真壁さん、今検査しますので止まっておいてください」
「先生、僕はなぜ助かったのでしょう?」
「お兄ちゃん……」
先生は何も答えてくれなかった。
「明音ちゃん……」
「先生、患者が心臓発作です」
心臓が痛い。もう終わってもいいや
僕は目を覚ましては心臓発作をして倒れ、また目を覚ましては心臓発作する。こんな日々が続いた。
「おはようございます。竜さん」
僕は目が覚めた。目を開けると九条さんの顔が10センチほどの距離にあった。
どうやらこの体勢は膝枕をされているみたいだ。すべすべな太ももの九条さんの膝枕はとても気持ち良かった。柔らかい。
イカンイカンそんな場合ではない。
現代に戻って来たみたいだ。
「あの……その……明音ちゃん」
その言葉を聞いた瞬間九条さんは一瞬上を向きそして再びこっちを見た。
九条さんは泣いていた。
これはあの屋上で泣いていたに似ているがそこにこもっている感情は違う気がする。
「ーーー」
「明音ちゃん。ただいま」
明音ちゃんは泣きながら幸せそうに笑った。
誰がみても幸せだとわかるぐらい幸せそうに笑った。
「明音ちゃん。早速で悪いんだけど聞きたいことがあるんだ」
「なんなりと」
「ありがとう。でもなんで僕は記憶を失ったんだ?僕と明音ちゃんの昔の話はわかったけど、記憶がなくなったことに関係するとはなかった気がしたんだけど」
そこだけが話が繋がらずに疑問を感じていた。
「それもそうですわ。あの機械は記憶を保存したものですもの。あなたは記憶を保存したと同時に記憶を失ったのですもの」
「あの機械は保存する代わりに記憶を失うってこと?でもそれならおかしくないかな?僕は少しだけど思い出しているよ」
「竜さんが記憶を失ったのはわたくしのお父さまの会社で作った記憶冷却システムを使ったからですわ。そして記憶冷却システムは名前の通り記憶を一時的に冷却して封印させる機械ですわ」
「なんで記憶を失う必要があったんだ?」
「あの時のあなたはわたくしが亡くなったというショックから心臓発作が常に起きていて大変不安定な状態だからですわ」
「そうだったんだ……明音ちゃんが生きて……」
あれ涙が出て……なんでだ。涙が止まらない。
「竜さんわたくしのために泣いてくれて嬉しいですわ。わたくしのために苦しんでくれてありがとうございます。わたくしは生きていますわ」
僕は明音ちゃんといろいろな昔のことを話したくなった。でも今日は頭の整理でいっぱいで帰ることにした。
それに色々と疑問ができた。
葵は幼馴染ではないということになる。
僕は勝手に葵を幼馴染みととらえていただけで本当の幼馴染みは……
それになんで幼馴染じゃないのに幼馴染のふりをするんだ。
この時記憶にいろいろな矛盾が起こった。
作品を読んでいただきありがとうございます。