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僕とヒロインのベタな青春ストーリー  作者: 風翔
第2章 九条明音との過去編
15/19

うまくいくことばかりではないということ

「おはようございます。竜さん」

「おはよう、明音ちゃん」


あの日を境に九条さんはとても大胆になり朝は車で僕の家まで来るようになった。九条さんのお父さんに正式に認められている証拠かもしれない。


「旦那さまは今週の日曜日空いておりますか?」

「空いているよ」

「では旦那さまの家にお邪魔してもよろしくて」

「いいよ。多分その日予定ないし」

「ではお父さまを連れて挨拶をしにいきますわ」

「それは……その……なんといいますか……」

「何事も早いうちにするのがベストですわ」


確かにそうだけど……ちょっと九条さん、にこにこして上目遣いしてもだめだよ。

九条さんは僕といる時、特に最近は僕の腕を自分の胸元にうずくめてくるようになった。

少し照れくさい。


「さすがに旦那さまの呼び方はちょっと苦手というかなんというかそう呼ぶのはやめてほしいなんて……」

「別にわたくしたちの仲の親密度をアピールできますのでこのままでも問題ないですわ」


いや、僕が問題あるから言っているのだけどね。そのことに対して指摘しても変えてくれなさそうなので諦めることにした。


「明音ちゃん。夢のようだと前に言ったのは僕だけどそれは好きということではなく嬉しいという意味で……」

「では旦那さまはわたくしが嫌いですか?」

「嫌いじゃないけど……好きというのがわからないんだ」

「それなら問題ないですわ。竜さんが好きという気持ちが存じ上げない間は試しで付き合うでいいですわよ」

「でも……」

「竜さん、百聞は一見にしかずではなくて」

「はい」

そこでそれを出されると何も言えなくなってしまう。

そして僕達は歩き始めた。

3ヶ月後事件が起こるとは知らずに……


あれからさらに3ヶ月後には九条さんは僕以外の子とも話すようになった。最初は今まで話してくれなかった九条さんがいきなり話しかけてきて戸惑っているみたいだったけど九条さんが謝ったらみんな快く受け入れてくれた。




帰りの通学路で九条さんは深呼吸をすると話は始めた。


「今日、わたくしの家でわたくしの誕生日パーティーをしますの。旦那さまにきてほしいですわ。パーティーは二人でしたいですわ」

「うん。いくよ。たのしみだな」


九条さんはプレゼント何が嬉しいのかな。直接聞いたらサプライズにならないし……




いつもの交差点で九条さんと別れ僕はスーパーにプレゼントを買いに行った。


「うーん。何がいいかな……明音ちゃんはお嬢様だしほしいものはなんでももっていそうだけど……お小遣いも1000円しかないし」


結局僕は一年中使えるネックレスにした。

安いけど喜んでくれるかな。

喜んでくれたらうれしいな。

九条さんの家が近くなると人が集まっているのが見えた。僕はその人たちは一瞬誕生日パーティーの出席者だ思った。しかし違った。そう、九条さんは僕と二人で誕生日パーティーをすると伝えてくれた。そして考えるより先に目の前の光景で全てを理解した。九条さんの家に着いた時家から火が出ていた。火事だ。

それが人が集まる原因だった。


「どうすればいいんだ……明音ちゃん大丈夫かな」


僕は心配になり隣にいた見知らぬ大人の人に聞いて見た。


「すいません。この家から女の子が出てきませんでしたか?」

「たぶん出てきてないと思う。うん、確かに出てきてないよ。それがどうしたの。幸い今日は九条さんのお父さんもお母さんもいないらしいしね。」


つまり家の中に九条さんさんがいる。その瞬間僕は駆け出していた。


「僕はもう何もできずに終わるのは嫌だからもう明音ちゃんの悲しむ姿を見たくないから」


そう思うと身体が軽くなった気がした。

僕は玄関から入った。瞬時に服を一枚脱ぎ鼻と口に当てた。


「明音ちゃん、明音ちゃん、明音ちゃん」


ひたすら名前を呼ぶ。


「明音ちゃん、明音ちゃん、明音ちゃん」


そうしているうちにも火は大きくなっていく。その時かすかに二階から声が聞こえた気がした。その声をたどり二階のある部屋へ行った。

ベットの下には隠れている明音ちゃんがいた。

明音ちゃんは泣いていた。


「旦那さま?」

「明音ちゃん、もう大丈夫だよ。僕がいるから」


僕は九条さんの落ち着きを取り戻すために九条さんの頭に手を回し自分の胸に引き寄せて抱いた。


「えっ旦那さま?」


行動に対しての戸惑いはあったが火事に対しては九条さんの冷静さを取り戻せた。

その時部屋の入り口から火が迫ってきた。


「くそ、逃げ道がない……」

「わたくしは……わたくしは……幸せでしたわ。あなたに出会えて。あなたと少しの時でしたけど隣に入れられて幸せでしたわ。霧島竜さん、大好きですわ」

「明音ちゃんまだ飽きらめるなよ」

「幸せでーー」


僕は九条さんの頰を思いっきり叩いた。


「えっ」

「明音ちゃんはここで終わっても、終わってもいいのか?僕は嫌だね。せっかく明音ちゃんと仲良くなれてこれからというのに」

「そんなのわたくしも、わたくしもここで終わりたくないですわ。やっとわたくしの生きる意味が見つけられましたのに」

「明音ちゃん、今僕に残されている選択は二つ。ここに残り終わるかここから飛び降りて奇跡を信じるか。明音ちゃんどっちがいい?」

「もちろん、そんなの決まってますはせーのっ」


その瞬間僕と明音ちゃんは二階から飛び降りた。僕は明音ちゃんを抱きしめた次の瞬間、視界が暗闇に引きずり込まれた。


読んでいただきありがとうございます。

次の更新日は12月14日または15日になります。

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