8:カリフォルニアレモネードで乾杯
テレポートポイントからアンダーテイル西の市場にひとっ飛びして、私がどのようにしてレッドウルフを倒したのか自慢げに一方的に話していたら、市場のモンスター買取場に着いた。
初めて倒したレッドウルフを初めて売った。
「綺麗に始末しているな、1100ダルでどうだ?」
「あ、あ、ありがとうございます!!それでお願いします!!」
どうやら傷が少ない事が+100ダルになったらしい。なるほど。また一つ知識をつけた。
「今日はこんな感じで、帰ろうジャック。キールさんに生還した事報告して、カルさんに仕事の事聞きに行くから!ジャックも来る?」
「ランゼ、しばらく狩りで食っていくならまだ俺は必要だろうが……つーか、一つ確認していいか。」
「なに?」
「ランゼ。その剣で、スラッシュ使えたって言ったよな。半べそかきながらだっけ?スラッシュはその聖剣グラム特有の技だ。つまりだ。お前……伝説の勇者じゃねーか!」
「……はぁ!?そんな訳あるか!あってたまるかぁ!!私は働きたくないの!じゃあ何!?私は勇者になる為にこの世界に来たっていうの!?働きたくないのに!?無理無理!!私勇者になるつもりないよ!!!」
全力で否定して、だけどあの時、この剣から声が聞こえた事を思い出して。いやいや。私は勇者になるつもりは一ミクロンも無い。狩りをする人を勇者と言うなら、私は勇者なのかもしれないけれど、勇者って多分それだけじゃないと思うし。世のため人のために走り回るのも仕事でしょう?
私は、この世界でもニートになりたいんです。働きたくないんです。
たまたま、神の加護を受けた噴水の前で気が付いて。
たまたま、見付けた酒場の店主に良くしてもらって住む場所決まって。
たまたま、部屋貸屋の店主の旦那が持っていた剣を譲って貰えて。
この偶然は、これ以上重なると偶然では無く必然になる、と本能が危険信号を出している。
たまたま、その剣の声が聞こえて。
たまたま、レッドウルフを倒せた。
それでも私は勇者になるつもりはありません、ニートになる為に狩りをするんです。