4:ジャックローズと少しのミント
朝ご飯を美味しく頂いた後、キールさんが着なくなった服を何着かくれたので、多分前にいた世界でいうTシャツGパン的な、ラフな格好に着替えてみた。ここは気候がずっと安定しているらしく、つまり季節が無いらしく、服もずっと初夏位のものでいい。楽だ。とりあえずお金を手に入れたら服を買おう、そうだな、動きやすそうな服がいいな。
背中に剣を背負って、いざ西の砂漠へ。その前に、キールさんから教えて貰った、狩り場と言う情報交換の広場に向かう。初心者から勇者まで、難易度も易しいレベルから超危険レベルまで様々あるらしい。そりゃそうか。
狩り場に行くと、モンスターの絵に値段が書いてある紙が沢山掲示板に貼られていた。その中で一番安くて易いのは、モルサギ500ダル。モルサギとは。絵では、モルモットとウサギを足して二で割った様な感じだけども。
「モルサギ……とりあえずこいつか……」
「お前、そんな雑魚狩りに行くの?」
まさか独り言にツッコミを入れられるとは思ってもいなかったので、驚きのあまり二度見する。
「モルサギなんかガキが小遣い稼ぎに捕まえるモンスターだぞ。」
「いや、私狩りの経験も戦闘経験も皆無なので、多分そのガキより低レベルです。」
「そんなやつこの世にいるのかよ、お前どうやって今まで生きてきたんだよ!?」
「どうやってと言われても……親のスネかじって?」
見るからに強そうなその青年は、私を珍獣でも見るかのように何度も上から下まで見て、信じらんねぇ、と呟いた。
「お前、その剣どうした。」
「もらった。」
「剣が拒否しなかったのか?」
「うん??拒否??普通にはいどうもって貰ったけど……」
「それ、伝説の勇者の称号がないと持てない剣だぞ、お前、何者なんだよ!」
周りがざわついたので一発鳩尾に愛をぶちかまし、引きずって拉致し、狩り場から少し離れた場所で草の上に放り投げた。
「こっちが聞きたいわ!私、この世界に来てまだ二日目なの!伝説の勇者とか知るわけないでしょうが!とりあえず明日食う金もないんだよ!だから小遣い稼ぎでもなんでも、とにかく狩りしなきゃいけないわけ!騒ぎにしないでくれますかね本当に!!ああもう!だから働きたくないんだよ!私は社会不適合者なのに!!!」
ノンブレスで散々叫び、はぁはぁと息を切らして青年を見下ろす。キールさんの旦那さんは伝説の勇者だったのか、そりゃ頼りになりそうだ。でも私はただの、村人レベルだよ!!
「悪かったよ、俺はジャック。この街を拠点にして世界中のモンスター狩りしてる、勇者。あと千匹倒せば伝説の勇者の称号貰えるくらいの強さ。お前は?」
「私は、ランゼ。強さとか称号とかは分からないけど、今言えることは、お金貯めて働かずに生きられる様になる為に、モルサギ狩りに行く一般人。」