3:目覚めの一杯、キールを頂戴
異世界生活二日目。割とすっきり目が覚めた私は、木製のシングルベッドの上でぼんやりしている。仕事、もしくは狩りをしなければお金が手に入らない。しかし戦闘経験なんぞある訳もなく、強いて言えばオンラインゲームで多少嗜んだ程度である。
コンコン、と部屋のドアをノックされ、慌ててベッドから起き上がりドアを開ける。
「おはよう、ランゼちゃん。朝ご飯持ってきたから、食べて。口に合うといいんだけど。」
「おはようございます、キールさん。ありがとうございます!何でも食べます!」
パンにスープとサラダ、何かのモンスターの肉のベーコンらしきものがトレーの上にのっている。美味しそうだ。
「姉さんから聞いたけど、仕事探してるんですってね、この辺じゃ基本は店を開くか狩りをして冒険者、勇者になるしかないのよね……これ、うちの旦那が昔使ってた剣なんだけど、仕事が見つかるまで狩りで食いつなぐのが一番かもしれないわ、よかったら貰ってちょうだい!」
キールさんから手渡された剣はずっしりと重くて、いやいやこんなもの振り回せないよ!と内心焦りながら、とりあえず受け取った。物は試しで町外れの砂漠に行ってみようか。小さめのモンスターなら倒せるかもしれない。うん。
「うちは一晩500ダル頂いてるけど、ランゼちゃんはしばらく住んでくれそうだし、そうね、割引して月10000ダルでいいわ!レッドウルフ10匹倒せば大体10000ダル位になるから、まずはこの世界の生活に慣れてね。」
ダル、というのはこの世界の通貨なのだろうか。ポケットに入っている硬貨と紙幣、全部合わせて1750ダルだと言われた。硬貨は1枚10ダル。紙幣は1枚100ダルと500ダルらしい。かなり節約しなければならない事は明白だ。
しかしだ。私はいい人に出会った。この世界を教えてくれたり部屋を貸してくれたり、剣までくれたり。正直働きたくないでござる、と思うけれど、まずは働かなくてもいいくらいお金を貯めて、山小屋でも建てて自給自足出来るようにならなければ。
「色々とありがとうございます、ご飯食べたらちょっと狩りに行ってみます!」
「軽いノリで言ってるけど帰ってこなかったら死んだと思うから、ちゃんと帰ってきてちょうだいね!?」
大丈夫、だって私一回死んでるから!そんなに怖いものは無い!レッドウルフがどれほど強いのかは分からないので、とりあえず弱そうで食えそうなモンスターを狩りに行こうと思う。