2:カルーアミルクは優しい味がする
さて、いい具合に酔ってきた私は、いい加減酒場を出なければならないことに気付いた。しかし、帰る場所が無い。家が無い。ホームレスだ。仕事も無いから転生してもニートである。
「おばさん、」
「アタシはカルーア・カトリーナ。皆はカルさんって呼ぶからあんたもそう呼びな!で、何だい?」
「そろそろ閉店っすよね。」
「もう明るいからね、そろそろしまいかね!」
「私、帰る家が無いことに気づいた。どうしよう!?野宿できる場所ありますか!?出来れば寝袋貸してください!!」
元はニート。行動力なんて皆無。しかし今はどうだろう、生きる為に生きようとして行動を起こしている。やばい。面倒臭い精神がチラチラと顔を出す。正直野宿で構わないし、なんなら大きな葉っぱ拾ってきて布団にしようかとさえ思い始めてきた。
「そりゃ一大事だ。アタシの妹夫婦が冒険者や旅人用の部屋貸屋やってんだけど、空いてないか聞いてやろうか?」
「お願いします!!」
早速電話で確認してくれて、どうやら部屋が余っているらしく、家賃も毎日支払いでは無く月末にまとめて払ってくれればいいとの事。つまりだ。仕事さえ見つけてお金を手に入れたら月末まで家賃を払わなくてもいいという事だ!ありがたい!
「カルさん、もう一個いいかな……この世界では、どうやってお金を稼げばいい?出来れば簡単なヤツで……」
「まあ、手っ取り早いのは街のハズレの砂漠に行って、モンスター狩ってその肉を売る、って感じかね?でもあんた戦えんのかい?」
「戦えそうに見えますか、私ものの数時間前にこの世界にきたんですけども!!」
「うーん、うちも人手は足りてるからねぇ、とりあえず今夜またおいで。客の中に人手が欲しい奴がいないか聞いてやるよ!さ、今日はお代はいらないから、早く帰ってゆっくり寝るんだよ!」
カルさんはそう言い、私に部屋までの簡単な地図を手書きで書いて渡してきた。
「ありがとうございます、カルさん。また来ます、おやすみなさい。」
異世界転生初日、住む部屋をゲットした。