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チョコが飛んで行ったもので

作者: 山野つき


「結局これは自分の口に入ることになるんだね」


 コートのポケットから取り出した、高校生にとってはお高い値段のたった3粒しか入っていない高級チョコを顔の前に両手で持ち上げながら軽くため息を吐く。


 学校から駅まで続く長くなだらかな坂道は、夕方間近の柔らかなオレンジ色の光に照らされてガードレールも染められている。今日に限ってなぜか人影も少なく空気の冷たさも重なった少し物寂しく感じる。


 今日はバレンタインデー。

昨日友達の彩音と一緒に学校帰りにチョコを買いに行った。製菓売り場とチョコレート売り場を見て歩いて、彩音と相談して今年は手作りじゃなくていいよねと、なるべく懐に優しくて見た目がかわいいチョコを物色。

 特に渡したい男子はいないから、友チョコたくさんと後は家族用。

彩音には『いつもお世話になってます、また課題見せてね』と他より凝ったチョコを用意。心付けってやつですね。

 そんな中、まったく買う予定になかった本命チョコ売り場で、高級感漂う素敵なお箱にたった3粒しか入ってない、ツヤツヤ丸々したチョコレートが『おいしいよー、買ってよー』と私に訴えてきたのである。


 いや、待て。誘惑に負けるな自分


そう心を強くしその場を離れてみたものの、数分後には結局ほかのチョコと一緒に買ってしまったという。


 私、惨敗の証である。


 その素敵チョコレートが目の前にあるこれ。高校生の懐には痛かったよ。


 どうせ誰かに渡す予定なんてないんだから、さっさと自分で食べちゃえば良かったんだけど、もしかしたら急に渡したい相手が現れるかも?とかちょっとした期待もあったりして他のチョコと一緒に今日学校まで持ってきてしまった。

でも結局これの出番は無くて、今も私の手元に残ったまま。


 この高級チョコが素敵な出会いを運んできたりしないかな?

 こう捧げ持ってたら、


 『お嬢さんそのチョコ一つくださいな』


って昔話じゃないんだよ!鬼退治に行くわけじゃあるまし、そんなこと言ってくる奴がいたら普通に不審者だよね。ないわ。ないない。


 まぁね、どうせ自分用に買ったチョコだし3日掛けて一粒ずつ大事に食べよう。

めったに食べれないお高いチョコだしね。

ちょっとバレンタインの空気に当てられてたのかもしれない。別に好きな人なんていないのになんでわざわざ学校まで持ってきちゃったんだか。我ながら浮かれてたな。


 眺めていたチョコをポケットに仕舞おうと右手に持ち替えながら、ふと前方を見ると、近くの男子校の生徒たちが騒ぎながら歩いている。


 私の通う学校の最寄りの駅からは、二つの学校に通う学生がいる。一つは私の通っている共学の高校。これは駅から真っすぐ北に向かい、長い上り坂を上がって行くとその突き当りにあるのが高遠(たかとお)高等学校。もう一つは駅から見て北東方向にある男子校。ここはあまり評判が良くない高遠東(たかとおひがし)工業高校という。柄の悪い男の子達が多くて、たまにうちの学校の子も絡まれるらしい。

 この学校は駅からの上り坂の途中で、右手側に道に並行して下り坂の脇道があり、そこを下って更に右手に進んだ先にある。

 

 今私はちょうど、この上り坂と下り坂の分かれ目部分に近づいていた。


 こんなチョコを手にしてあそこの生徒に遭遇したら絡まれそうだ。さっさと仕舞おう。ちょっと慌てながらポケットにチョコを突っ込もうとした瞬間、足元が疎かになり小さな道路の窪みに足が嵌まってしまった。


「あっ」


 そう思った時には足首がぐにゃっと曲がり少しの痛みが走る。焦りながら転ばないようバランスを取ろうと体を左に捻り、支えを探して手を前に出す。


 だが待って欲しい。私の右手には高級チョコ。

前に手を振り上げた勢いのまま、持っていたチョコはポーンと飛んで行った。


「ああっ!!」


 待って!私の高級チョコーーーーー!!!


 結局飛んで行ったチョコのショックでバランスを崩してしまったが今はそれどころではない。飛んだチョコはなんとガードレールを越えて、坂の左下の男子校方面の道に落ちてしまったのだ。



 待って!待って私のチョコ!!ダメにするには惜しすぎる!

 どうか、溝なんかに落ちていませんように!



 こうしてる場合ではない。早く私のチョコを回収しなければ!飢えた男子校生徒に奪われてしまうかもしれない!(偏見)


 私は急いで道路に手を付いて起き上る。少し痛む足を無視して、大事なチョコの行方を追うべくガードレールに手を付き坂の下を覗きこんだ。どうか誰もいませんように!



「いてぇ……何これ」



 最悪だ。


 男子がいた。高遠東工業の制服を着ている。だいぶ着崩してるけど隣の男子校の生徒だ。

そりゃそうだ。ここは彼らの通学路だもの。赤茶の髪がところどころピンピンと跳ねたその男子は下に手を伸ばして何か拾おうとしている。


 あっあ、それは!!私の大事なチョコでは?


「なんだよー…これどこから降ってきた……っ!?」

「!?」


 チョコを片手に周囲を見回した男子が、こちらを見上げてバッチリ目が合ってしまった。

思わずガードレールから不自然に身を乗り出したまま体が硬直してしまう。

 赤茶の髪にやけに白い肌の彼は、意外にもかわいらしい顔付きをしていた。

しかし、しかしだ!その目つきは鋭すぎだ!人殺しか!

いや、ほんとチョコぶつけてごめんなさい。

心の中は大慌てで、背中には冷汗が流れるけれども、実際の私はその眼光にビビッてまともに言葉が発せなくなってしまった。


「あ、……あの……」


 やばい。『ごめんなさい』と『返してください』が言えればいいのに、なんだか息苦しくてそれ以上言葉が出てこない。無駄に口をハクハクさせていた私の顔を怪訝そうに見ていた赤茶の彼は、手元のチョコと私の顔を何度か見比べ、そして急に顔をバッと勢いよくあげた。


「!!」

「!?」


 その勢いに私もびくっと肩を揺らす。

赤茶の彼は目を大きく見開いていて、そこに先ほどの人殺しのような眼光はもうない。

ただ、そのまま食い入るように私の顔を見てくるので、こちらも視線を外せない。なんだろう目を逸らせない圧力のようなものを感じる。私の顔から何が読み取れるというのか瞬きもせずに視線をはずさない。


 そうするとだんだんと赤茶の彼の頬がうっすらと赤くなってきた。私はこの状況の意味が分からなくて、どんどん血の気が引いている。顔は青褪めてるかもしれない。


「あ、あ~そういうこと?」


 赤茶の彼がパチパチと何度か瞬きしながら言った。


 私も強すぎる視線から解放され肩の力を少し抜く。さあ、もう『チョコぶつけてごめんなさい』って言ってチョコを返してもらって帰ろう。


「あの…「えっ?上のガッコだよなぁ?え、マジで?いつ?」…」


 思い切って声をかけようとしたけど、赤茶の彼は頬を染めたまま少し俯いて今度は、一人そわそわしながら独り言を言い始めた。チョコと私をちらちらと上目遣いで見てくる。


……んん?


「あ、電車か?…いや全然覚えてねぇ!……それともここか!?この道か?あ、ここで渡してきたってことはそうじゃんね。」


 一人で何か納得して首をぶんぶん縦に振る赤茶の彼。首の動きに合わせて赤茶の髪がピコピコ動くのが少し可愛いけど今はそこじゃない。あれれ?何か嫌な予感がするぞ?


「ええっと……」

「あ、気づいてた!おれ大丈夫だから!!」

「え……」

「駅までの通学路で会ったよね!?おれ君のこと見たことある気がするし!」


 ええ~……見たことある気がするって……多分気のせいですよ。私はあなたのこと見たことありませんでした。全然大丈夫じゃないです。ごめんなさい。


 くっ……でも言えない!!


 なんかすっごい嬉しそうだし、これってあれだよね。完璧私が彼にチョコを渡したんだと思ってるよね。

 え?普通本命チョコを投げて渡す状況ってある?段差の上から投げつける?何その暴力的な告白。私そんな特殊な人間じゃないです。

 もうなんかこのまま逃げ帰っちゃいたいけど、逃げた先の駅でまた会うことになるだろうしこの状況をどうにかしないと帰ることもできない。できれば高級チョコも返して欲しいけど……。


 取り合えずガードレールを回り込んで坂の下側にある脇道に移動する。毎日上の道を通学で通っていてもこっちに下りてきたのは初めてだ。

赤茶の彼もこちら側に歩いて来てくれたのですぐに合流できた。


……おいっ!!


 バレンタインデーの放課後に通学路で頬染めながら向かい合ってる男女なんて、これ絶対告白みたいじゃん!!


 違う!違うの!!これどうすればいいの!?何か言わなきゃ……ええと、やっぱり誤解は解かないと。変な勘違いさせたままなのも逆に彼にも失礼だし……


「あの、それなんですけど……」

「うん、すごいうれしい……こんなのもらったの初めてだし」

「え……」


 赤茶の彼の顔を見上げると、言葉の通りに本当にうれしそうにはにかんだ笑みを浮かべている。白い肌がピンクに上気して、最初の人殺しのような彼とはまったく別人のように可愛らしい。風に揺れるぴんぴん跳ねた髪がまるで彼の内面を表してぴょこぴょこはしゃいでるように見えてくる。


……無理っ!!


 言えない!言えないよぉーー!!こんなにうれしそうにしてる人間に『それ間違いですから』なんて言えますか!?私は無理です。もうどうしたらいいのこれ?ほんとチョコ落としてごめんなさい!だれか助けてー!!


「あ、知ってるかもだけど、おれ東工業2年の片岡翔太(かたおかしょうた)って言います!

えっと……おれ男子校で、周り荒い奴ばっかだからこういうの期待してなかったんだけど、すっごいうれしいです……ありがとう、じゃあ!」


「えっ!」


 どんどん顔を真っ赤にした彼は、一方的に自己紹介をして恥ずかしさのピークに達したのか、私の脇を通りそのまま駅の方に走り去ってしまった。

なぜか場の空気に当てられて同じく顔が真っ赤になっているだろう私は、その場に置き去りになった。なぜだ。

 これどういう状況?私告白もしてないけど振られた風?なぜなら私、自己紹介もしてません。高遠高校1年、三好柚希(みよしゆずき)です。至って平凡な女子高生です。どうぞよろしく。


 ま、まぁいいでしょう。結果としてあの場をなんとか切り抜けられた。告白の誤解も解けず高級チョコも持って行かれてしまったけど、もうどう言い訳したらいいのか自分でもわからなかったし、チョコは本当に残念だけど!できれば食べたかったけれど!

まぁでも、赤茶の彼……片岡君だっけ?彼があれだけ喜んでくれたのだから良いことしたって思って諦めよう。


 ふー少し落ち着いた。冬なのに制服の中変な汗でびっしょりだけど落ち着いた。

今駅に行くと、せっかく別れた片岡君とまた遭遇してしまうことになるだろう。もうちょっとゆっくりして電車一本ずらそう。だってまた会っちゃったらさすがに気まずい。


 冬の日が暮れるのは早い。いつの間にか空は濃いオレンジに染まってて、すぐに藍色に変わってしまうだろう。家に帰り着くころには薄暗くなっているかもしれない。

 坂のこちら側から町を見下ろすのは初めてだ。オレンジの光を反射する家の屋根が美しい。下からそよそよと吹き寄せる冷風に、火照っていた私の頬もすっかりいつも通りだ。


 よし!冷静になった。


 帰路に向けて一歩踏み出す。


「ねえねえ、上の学校の子でしょ?こんなとこで何やってんの?」

「もしかして、俺らのこと待ってたりぃ~?なぁ~んて」

「ばっか!お前のこと待ってるわけねぇーだろ!俺だよ俺」

「えーなんでよ。ねぇ、俺らのガッコもうあんま人残ってないと思うよ~。俺らと一緒に遊んで行こうよ。ね」

「えっ、いや、私帰りますんで」


 知らない男子生徒に肩に手を乗せられ焦る。全然冷静じゃなかった。そりゃあこんなところで一人でぼーっとしてたら目立つよ!絡まれるよ!


「えーだってここでだれか待ってたんじゃないの~?」

「代わりに俺たちに付き合ってよ」

「いえ……困ります。放してください」


 茶色く髪を染めた、うちの学校にはいないようなチャライ男子が肩を組むように近づいてくる。こわい。


「いいじゃん、バレンタインなんだしさー」


 もう一人の耳にピアスをいっぱいしてる男子が前に立ちふさがるようにして私の顔を覗き込んでくる。


「あ、よく見ると結構可愛いな。地味だけど」


 地味で悪かったな。


「そこがいいんじゃーん。俺清楚系好きー」


 私はチャライ系嫌いです。イラっときた。今日はついてない。


「もう、ほんっと帰りますので放してください!」

「えーいいじゃん行こうよー、どうせ帰り道だし少し寄り道でさー」

「いや、放してっ!!」

「大丈夫、大丈夫。俺たち結構紳士だし」

「そ~紳士、しんし~」


 肩を抱えるようにして駅の方に歩かされようとして手を振り払おうとするけれど力でかなわない。さすがに怖くて体が震えてくる。どうしよう、このままどこかに連れ込まれたりしたら……


 「おい!!お前ら放せ!!」


 鋭い声とともに誰かに腕をぐいっと引っ張られた。掴まれた腕からそのまま視線を上げると、そこにはさっき走り去って行ったはずの赤茶の髪の片岡君がいた。

片岡君はまるで最初に会った時のように、人を殺しそうな怖ろしい目つきで私に絡んでいた二人の男子生徒を睨みつけていた。

 睨まれた二人は驚いたように目を見開いている。


「か、片岡?」

「え……この子片岡君の……?」

「そうだよ、おれんだよ」


 いえ違います。あなたのではありません。


「ご、ごめん!!俺たち知らなくて!!」

「……お前ら、変なことしてないだろうな?」


 片岡君は声を低くして二人を脅すように睨みつける。


「し、してない!してない!」

「……じゃあ、もう行け。次はないからな」

「わ、わかった!ごめんね!彼女もごめんね」

「え!」

「い、いいから早く帰れ!!」

「じゃ、じゃあな片岡、ほんとごめんな」


 アセアセと駅方面に向かう二人の後ろ姿を、睨むようにしばらく見つめていた片岡君はふっと一息吐くとこちらに視線をよこした。

 その顔に先ほどの険しさはなく、どこか眉を下げたような情けないような顔をしていた。


「うちの学校の奴らがごめんな」

「あ……助けてくれてどうもありがとう」


 助けてもらったお礼を口にしたら、途端に今まで張っていた気が抜けたのか私の眉もへにゃりと下がってしまう。じんわり涙が滲んできた。


「わっわー泣かないで!もうあいつら行っちゃったし!こんなことしないように後でよく言っておくから。なんならもう絶対近くに近寄らせないようにするし!」


 片岡君の慌てぶりに、滲んだ涙を拭いながら思わず笑みがこぼれてしまう。


「違うの。なんか、安心したら気が抜けて涙出てきちゃって……」

「……そっか……でも、震えてる」


 片岡君はさっき掴んだままの私の右腕に視線を落としながら言った。自分で見てみても確かに小刻みに震えているのが分かった。自分で思っていた以上に怖かったのかもしれない。実際今回のように絡まれたりナンパされたりなんて経験は今までなかったので色々テンパっていた。混乱したままに口から取り留めのない言葉がこぼれる。


「ちょっとなんか、初めてのことにどう対応していいか分からなくて」

「うん」

「焦っちゃって……このままどこかに連れていかれちゃうのかな?とか考えたら、すごく怖くて頭の中真っ白になって、全然思うように動けなかった」

「うん」

「もっとうまく立ち回れると思ってたから、こんな情けない自分にもびっくりしちゃって……」

「情けなくないよ、でかい男二人に囲まれたら君みたいに華奢な子じゃあ怖くて当たり前だよ」

「そう……かな」

「そうだよ」


 うんうん、とまじめな顔で頷く片岡君を見ていたらだいぶ気持ちが落ち着いてきた。

ふーっと大きく息を吐き出す。震えも収まってきたみたい。

 でも、そうしたら少し疑問も湧いてきた。さっき走って帰ったはずの彼がなぜここにいるんだろう?聞いてもいいのだろうか?助けてくれた彼に『なぜここにいるの?』は失礼かな?でも一度そう思うと気になってしまう。おずおずと彼の顔を上目遣いで伺いみる。


「ん?」


 視線に気づいた彼が『どうしたの?』というように軽く小首を傾げる。跳ねた赤茶の髪がピョコンと揺れて大変可愛らしい。

 よし、思い切って聞いてみよう。


「あの……どうして、ここに……?」


 思い切った割におずおずとしか切り出せない小心者の私。

 片岡君は「あっ」という顔をして視線を横に逸らしながら赤茶の髪をがしがしとかき上げた。


「あ~~いやぁ、あれだよ」

「?」

「あの、ほら……」


 なぜか恥ずかしそうに顔をそむけながらちらりとこちらを見ると小声で呟いた。


「だって……名前聞いてなかったし……」


 なんと!!名前を聞くためにわざわざ戻って来てくれたんだ!

なんだ、そっか、そっかー。

私はちょっとうれしくなった。


「高遠高校1年、三好柚希です、よろしくお願いします。それと改めて、助けてくれてありがとうございます」

「ゆずきちゃん……ゆずきちゃんか……」


 確認するように何度も私の名前をつぶやかれて少し頬が熱くなる。同じように白い頬を少し赤く染めた片岡君と視線が合わさる。


「ゆずきちゃんて呼んでもいい?」

「はい」

「おれのことは翔太でいいよ!一個下なんだね。これからよろしく」

「はい、よろしくお願いします」


 勢いにつられてよろしくと頭を下げてしまう。


「じゃあ、行こうか」

「え?」

「駅でしょ?」

「あ、はい」


 右手を掴んでいた片……翔太君の手が離れて夕方の冷えた風が余計に冷たく感じた気がした。なんとなく心許ない気持ちになっていると翔太君がそっと右手を繋いで歩き出した。


 「!」


 驚いて顔を上げると、少し前を歩く翔太君の顔を背けた耳が赤く見えて何も言えなくなった。


 頭の冷静な部分で、これって吊り橋効果じゃないの?とか、ほぼ初対面の男の子と手を繋いで歩いてるとか正気じゃない!とか色々思うところもあるんだけど、その一方で今の私にはこれって高級チョコのご利益?とか、助けてくれた翔太君をすごく信頼しちゃってほわほわ浮かれた気持ちになっちゃってるわけで……


 まぁ、でもいいよね。今日はバレンタインデーだ。たまにはこんなこともあるよ。


 そうして私たちはひと時のいろんな意味で刺激的な体験を胸に駅で別れたのだった。



 で、その後あの時の「よろしく」はお付き合い了承の「よろしく」で、翔太君の中ではすでに私は彼女だったとか、なんでか東高の人たちが翔太君を異様に怖がってるだとか色々な事実が発覚したりもするんだけど。


 まぁ、私は『高級チョコに感謝』と言っておきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どっちも初々しくて可愛くてにやにやしてしまいました。
[良い点] さらっとした文体で、するすると読めて面白かったです。 翔太君も柚希ちゃんも可愛くてほっこりしました。
[一言] とても良かったです!!!! 翔太くん目線の話も見てみたいです(*´∀`)
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