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~The Fairy Of Fate~  作者: Gamu
第一章 【学園編】
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第八話:ようこそ解析科へ!

 ~レヴィ視点~


 私、昨日勢いでとんでもないこと言っちゃったけど流石にレイドに嫌われちゃったかな……。でもでも、レイドってばそんなに気にしてないかも。関係ないやって普通にサリアちゃんに近づいてくるだろうし、その時に私が余計なことを言わずに、「まあ会話すらできないのはサリアちゃんにも悪いし、ちょっとくらいは大目に見てあげる」的なことを言えばレイドも許してくれる……よね?

 いつも私は直情的で、余計なことを言っちゃうんだから。レイドの気を引こうと色々言っちゃってるけど、どれもレイドには冗談程度にしかとらえられてないんだろうなあ。ロイスの手を借りようにもロイスは口が軽いし、ロイスに好きな人がいたら私とレイドが結ばれるってのはちょっとかわいそうだし。結局私はレイドと結ばれることはない。最近のレイドを見てたらわかってしまった。レイドはきっと

 ――サリアちゃんのことが好き。

 これはもう予想というより確信に近い物だと私は思う。私だってレイドの事を何でも知ってるわけじゃない。でも、私とレイドが出会ってからの二年で大分多くのレイドの顔を見ることができた。笑ってるときの顔、嘘をついているときの顔、悲しんでいるときの顔、とにかくたくさん。そんな私が言うのだから間違いないのだろう。レイドは私ではなくサリアちゃんを、出会って間もない女の子のことを好きになった。別にそれでサリアちゃんを恨みはしない。純粋に私に魅力が足りなかっただけだし、レイドに一番に選ばれなくてもいい。レイドと一緒に時間を過ごせればそれでいいのだ。とにかく、レイドの恋を私は応援する。恋敵との恋を応援するだなんて変だと思われるかもしれないけど、私はレイドが幸せならそれでいい。

 今日はサリアちゃんに私たちの解析科を紹介する日。先生にも話は通っていて、今日は授業じゃなくて親睦を深めるための慣らしのようなものだそうだ。解析科の生徒はみんな優しくていい人たちばかりだからサリアちゃんとも仲良くなってくれるといいな。

 私はサリアちゃんを連れて少し早めに学園の門をくぐる。時間が早いだけあって生徒の数はまばらで、静かだった。私はこの空気感が好きでいつも早くに登校している。サリアちゃんも私と同意見のようで、


「静かで落ち着いてる。試験で来た時とは少し違う感じでなんか、いい」


「私も好きなんだ。この感じ。なんかこの学園の裏の世界みたいな感じ? ふふっ、裏の世界は置いておいて、なんかでもいつもはうるさい学園が閑散としてるのは面白いなって」


 こう思う理由もきっとレイドのせいだろう。いつもはバカみたいなレイドも、いざとなったら頼りになる。そんな二面性が私には強く刺さるのだろう。

 私たちは、静かな校庭を二人歩いて解析科の教室へと足を運んだ。


 ▽▽▽


「紹介するわ。サリアちゃん。色々とあって記憶があいまいなの。だけどあんまり気にせず仲良くしてあげて」


 私はいま、解析科の中でも特に仲のいい三人にサリアちゃんを紹介している。


「それで、この三人が左から、アイシャ『ほーい』、リーネ『は、はいぃ!』、ミミ『んぱー!』。一応私の親友達よ」


 私の紹介を受けた三人は名前を呼ばれると三者三様で反応していた。


「よろしくおねがいします。アイシャさん、リーネさん、ミミさん」


「こちらこそよろしくー」


「ど、どうぞよろしくお願いします!」


「うん、よろしくなの!!」


 アイシャはすらっとした体格で、私よりも身長は高く、運動神経もいい。そんな彼女がなんで解析科にいるのかはいまだ不明。

 リーネは少しあがり症な所があり、初対面の異性に対してだと、口をあうあうさせてしまってまともに話すことができない。長めのボブカットは目元を覆うほどにもなっている。彼女は解析科の中ではとても優秀で、他の子が複数人で難航している解析作業を一人でぱぱっとやってのけてしまえるほどだ。

 そしてミミ。彼女はこの中で一番年下で十三歳。私と三つ違うのだが、彼女はとにかくちっこ可愛いのだ。背が低いほうでもある私の胸辺りにミミの頭のてっぺんが来るほどだ。彼女は解析作業をする際に頭を軽く振るものだからツインテールが周りにぺしぺし当たってしまう。解析科のマスコットキャラ的存在。


「サリア……ちゃん? 呼び捨てでいいか。サリアはなんでうちに来ようと思ったの?」


 アイシャが話題を作ろうと、無難な質問をした。けど、私たちの場合ちょっと困ったなあ。本当のことは言えないし、サリアちゃん演技あんまり上手じゃないし……。


「レヴィが一番面倒見がよさそうだから、私のことをお願いした」


 お、おお。本当のことを核心には触れないで話してる! やっぱ頭いいんだな。安心安心。


「アイシャ……アイシャは? なんで解析科に?」


 サリアちゃんも同じ質問をアイシャに返す。ちょっとこれは私も知らないことだから気になるな。


「うん、私たち人類が妖精に勝つには、直接の戦闘員も必要だけど、こういう縁の下の力持ちも必要だって」


「その言い方、誰かに言われたの?」


「……死んだ親父に、ね」


 知らなかった。アイシャはいつも飄々としているものだから、大した理由もなくここを選んだのだと思ってた。それに、今の口ぶりからするに彼女はきっと妖精にいい感情を抱いていない。誰もその先を聞かなかったがアイシャのお父さんは妖精関連で命を落としたのだろう。

 ここならみんなそんなに妖精に対して悪感情を抱いていないと思ったけれど、それは大きな間違いだった。みんなきっとある程度は憎んでいるのだ。私も全く憎んでいないのかと言われたら首を横に振らざるを得ない。ただ、それ以上にまた仲良くなりたいと思う気持ちが強いから、こうしてサリアちゃんとも普通に接していられる。今回の作戦、思った以上に簡単には進まなさそうだと、そう改めて実感した。私がうまくやらなきゃだめなんだ。


「あー、やっぱ今の忘れて。なんかそういうの私のキャラじゃないしさ。ごめんね、空気悪くして。よーっし! サリア、今からぱぱーっと解析科の案内するからついておいでー」


 アイシャは「よーしいくぞー!」と笑顔でサリアちゃんの手を引っ張っていった。私たちも、本人が望まないのならこれからもさっき聞いた話のことについては触れないでおいてあげよう。

 私は二人の後をついていった。


 ▽▽▽


「ということで、こんな感じに何にもないのが解析科なんだ」


「うーん、確かに何もなかった……」


 アイシャがサリアちゃんを連れまわして僅か数分後に解析科探検は終わった。そもそも解析科にはこれといったものはなく、必要な文献なども図書室にあるので作業するための部屋と授業を受けるための部屋くらいしか紹介するものはない。後は、他の解析科の子をささっと紹介したくらいだ。

 一通り部屋の案内を済ませたところで始業の鐘が鳴る。

 ゴーン、ゴーン、ゴーン。

 ちょうど三回目の鐘が鳴り終わったころに、ガララッと音を立ててドアが開けられた。その人物は開口一番こう言い放った。


「はーい、みんな仲良くしたー? まだでもこれから仲良くしましょう!」


「先生、私は何のことかわかりますが、主語がないから他の子多分何のことかわかってないです……」


 栗色のショートカットを元気よく揺らす彼女は私たち解析科の先生、ディーン・ミッシェル先生だ。ミッシェル先生は元シスターで、修道院で多くの古代物の解析を趣味でやっていたそうだ。本人曰く、『修道院ってやることないんですよー。だから目についた文献をもとにちょうど修道院預かりになっていた古代物の解析してたらわかっちゃいましてー、それでこの学園からスカウトされたんですよー』だそうだ。色々と突っ込みたいところだが彼女の解析の腕はかなりなもので、正直私たち要るの? ってほど。


「あー、そうでしたそうでした! 先生ちょっと先走っちゃいました」


 ミッシェル先生は、ドジっ子属性も兼ねているし、女子の私から見ても普通にかわいい。なんなの、私たち要るの?


「えーと、皆さんお気づきの方もいると思いますが、本日よりサリアちゃんが解析科に来ることになりましたー! わーい!」


「よろしくお願いします」


 サリアちゃんはその場でぺこりと一礼。すると周りからは「よろしくねー!」とか、「かぁーわいいー、お人形さんみたいー」とか、「サリアさん……麗しいな、うん。もしかして解析科(うち)って天国か!?」とか……。あれ、天国か!? とか言ってるけどキース君ってそういう子だったっけ。


「つきましては、今日はサリアちゃんとの親睦を深めてもらうために授業は無しでーす! わーい!」


 いや、先生的に授業無しでわーいはだめでしょ。というかそんなことしてもいいのかな。とも一瞬思ったが、これはきっとセシル先生の計らいだろう。流石セシル先生、権力は偉大なり。


「じゃあ今から質問コーナーにします。サリアちゃんに訊きたいことがあったら訊いてみましょう! あ、でも、訊いていいことと悪いこともありますからね? キース君」


 キース君、あまり知らなかったけどやっぱそういう子だったんだね。私もあまり近寄らないようにしよう。

 質問コーナーか。良いとは思うけどどうなんだろう。サリアちゃんの場合言えることってそんなにないと思うんだよね。私がこのコーナーの先行きを不安がっていると、いきなり頭を抱える質問が来た。


「さ、サリアさんは好きな御方はいらっしゃるのですか!?」


 キース君、それはだめだよ。いやだなあ。私個人としてはすごく聞きたくない。これでもしサリアちゃんがここで"レイド"と言ってしまえば私はもうあの二人の間に割って入るようなことは出来なくなってしまう。今の不透明な状況なら全然まだチャンスはあるからといけるけど。


「好きな人……うーん、わかんない。多分、いない?」


「おお! そ、そうですかそうですか。ふひっ」


 今のはサリアちゃんの嘘偽りのない言葉……なのかな? でも、演技だったらわかるし、確かにサリアちゃんはレイドに懐いているけど、それも単純に頼れるのがレイドしかいなかったからって話で、現に今もレイドがいない解析科に来たわけだし。とりあえず、よかった……の、かな?


「はいはーい、次私ねー。えとえとー、サリアちゃんの好きな食べ物はー?」


「うーん、りんごかな」


「じゃあじゃあー、嫌いな食べ物はー?」


「えー、特にないかなー? でも、お肉はあまり好きじゃないかな」


 なんとも普通な質問とその問。こんな感じでサリアちゃんと交流を深めようの会はつつがなく、しかし一抹の不安を残し終了した。

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『冒険の始まりは1輪の花??』という作品を同時連載しております こちらは自分の代表作であり、処女作でもあるので是非一度お読みください
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