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~The Fairy Of Fate~  作者: Gamu
第一章 【学園編】
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第二話:ばれないように

「それでまあ早速になるんだけど、具体的にこれからどうする? 特に、サリアと一緒に行動するならするで何らかの対処はしておかなきゃだし、そうじゃないなら通信手段も必要だしな」


 サリアは妖精。俺達のように妖精を怖がらないのは少数派だからサリアとそのままで行動を共にしたら他の人間に俺達まで殺されてしまいかねない。


「通信手段なら俺らの使ってる"ステレイア"使えばいいんじゃね?」


 ステレイアというのは俺達学園生に無償提供された通信用魔器具のことだ。

 これはかなり便利で、離れた場所からでも特定の人物と会話が出来たり、手紙のようなものを一瞬で送る事ができる。勿論、相手からのを受け取ることも可能だ。だが、今回の場合この便利さが仇となったというべきだろう。


「確かにあれなら楽に情報交換とか出来るけど、市販されてないし貰うのだって簡単じゃない。多分――いや、絶対無理だぞ」


「ならサリアちゃんが妖精だってばれなきゃいいんじゃない」


 ステレイアが駄目だとわかり、レヴィがさも当然のようにそう言ってきたので俺は訊いてみる。


「何か方法に思い当たるものがあるのか?」


「もっちろん。何にも当てがないのにそんな適当なこと言わないわよ。ロイスじゃあるまいし」


「そんな冷たく当たってどうしたんだよレヴィ。ツンデレか?」


 さすがレヴィだ。レヴィは知識欲がすごくて疑問に思ったことはすぐに調べたりしている。俺は何度かレヴィが熱心に調べごとをしているのは見たことがあるし、実際にレヴィの知識量が多いのも知っているので今回もレヴィの言うことはきっと正しいのだろう。


「早速だけど、どうすればいいのか訊いても?」


「うん。まず確認だけど、レイドは魔法を四属性使えるよね?」


 俺は自慢ではないが四属性(クワトロエレメンツ)を使えることで学園内ではちょっとした有名人だ。それ故に問題事に巻き込まれたこともあるが、あの時のことはもう思い出したくもない。


「まっ、それが俺のたった一つのアイデンティティだしな!」


「そんなこと……まぁそれは後でみっちり私がレイドのすばらしさを何時間かかけて自信つけてあげるとして、四つの属性。つまり、火、水、雷、風を具現化して」


 俺はレヴィに言われたとおりに四つの属性を具現化する。この時レヴィに「小さめの球体で、大きさ形は均等に」と言われたのでその通りにやる。結構見た目は地味だが大分集中力を使うので辛い。が、これもサリアのためだし仕方がないだろう。

 そうして、形大きさ全て均等の四つの色の違う球体を作った俺はレヴィに続きを促す。


「で、まあそれを合体させたらこの瓶の中に入れてくれる?」


 レヴィはそういうと、赤と白のチェック柄を基調とした制服の内ポケットから透明な小瓶を取り出した。


「え、ああうん」


 イマイチ良く分からないが俺は言われたとおりに瓶の中にそーっと入れる。そうすると、レヴィはまた制服をまさぐりさっきの瓶よりもだいぶ小さい、人差し指の関節二つほどの大きさの瓶を取り出した。


「レヴィ、それは?」


「んー、強いて言えば"魔法の粉"かしらね」


 よく見ると瓶の中には白い砂粒のようなものが入っていた。これ、大丈夫なのかな……。


「よし。あとは私がやるからレイドたちは見てて!」


「いいけど……なんか、大丈夫?」


「その瓶の中の奴も怪しげだしな……でもまあレヴィのやる事は全面的に肯定するから心配なんてしてないけどな!!」


 ロイスのことは置いておいて、本当に大丈夫か心配になってきた。レヴィの事だから変な風にはならないと思うが……どうだろう。

 俺が内心ハラハラしていることを、レヴィは知ってか知らずかどんどん進めていく。といっても俺の魔法の入った瓶の中に例の粒を振りかけているだけだが。しかし、振りかけてすぐに魔法の球に変化が見られ始めた。


「おわ、何ていうか、凄い……な」


「うん、私も初めて見るけどキレイね」


「これが私が妖精だってバレないようにするための物?」


 サリアが発光する魔法の入っていた瓶を指差し、そう訊く。それにレヴィは得意顔で頷いているが、これをどう使うのか謎である。俺がそう思っていると空気がたまに読める男、ロイスが訊いてくれた。


「なあなあレヴィ、これをどう使うとどうなってサリアちゃんが妖精だってバレなくなるのさ?」


「ここからは私もビミョーなんだけど……妖精ってさ古代魔法とか使わない限り見た目は人と変わんないじゃん? でもまあ、腕の周りに浮かんでる魔法陣は目立っちゃうけどね。てことは、その魔法陣さえ見えなくなればバレないと思うのよ」


 なるほど。つまりは今作った物で魔法陣を"消す"もしくは"視えなくする"ということか。でも、このレヴィの言い回しは妙に引っかかるな。微妙だと前置きしてるからきっとレヴィ自身も効果の真偽は分かってないのだろう。でもやるしかない、よな。


「じゃあこれをサリアの腕にかければいいのか? てか、かけるって表現で合ってる?」


「多分そうじゃないかな。 まあこの際表現なんて気にしなくていいんじゃない? どうせレイドはそういうの疎いんだし」


「まあそうなんだけど……まあいいや。とっとと始めようぜ」


 俺はそう言ってレヴィを促す。やるにしても早く済ませなければ誰かがここに来るかもしれないしな。

 レヴィは少し心配そうに頷き、瓶をしっかりと握る。


「じゃあサリアちゃん、腕、出して」


「うん」


 サリアがレヴィの前に、白くて細い腕を伸ばした。やはりここまで来ても少しためらいがあったのか、レヴィは表情を曇らせた後、「えいっ」と言ってサリアの腕に瓶の中身をかけた。

 キラキラと光る粒がサリアの白い腕を包み込むことで更に白く光らせる。その光景はとても幻想的で、もしも今が夜だったのならもっと綺麗だっただろうと少し後悔してしまうほどだった。

 しばらくたったら光が収まったのでサリアの腕を見てみると……


「無い。私の腕にあった魔法陣、消えてる」


「ほんとだ! すごい、さすがレヴィだよ! 本当に魔法陣消しちゃうなんて」


「あぁ、やっぱ俺のレヴィは違うな!」


「ありがとうレイド、私もできるか不安だったけど成功してよかった。それとロイス、いつから私はあんたのものになったのよ!」


 俺自身半信半疑ではあったものの、本当にやってのけてしまうとは……。サリアも自分の腕を不思議そうに眺めていた。


「そういえば、今更だけど、魔法陣消しても大丈夫なのか?」


「うん。私たちの使う古代魔法もこの魔法陣を使ってとかじゃないから。ていうか、この魔法陣が何のためにあったのかは私にもイマイチわからない」


 魔法陣の秘密は兎も角、生活などに支障をきたさないようでよかった。これでもしも暴走だったりしてたらどうなっていたことやら……考えただけでも恐ろしい。

 俺たちが魔法陣を消せたことに喜んでいると、何者かの足音が聞こえてきた。他のみんなもそれに気が付いたようでそれぞれ警戒をしている。


「お、レイド君じゃないか。こんなところで一体何をしていたんだい?」


「お前は、ルーンか。お前こそこんなところで何をしていたんだ」


 セネリオ・ルーン。こいつとは色々とあってあまり仲が良くない。相手も俺に恨みか何かがあるらしく事あるごとにちょっかいをかけてくる。


「僕は君に聞いているんだ。が、まあいいさ。僕はねさっき一つ下の子に告白をされたんだ。もちろん、かわいかったからオーケーしたぞ」


「そうかい、そりゃ物好きなやつもいたもんだな。だがその子、かわいそうだな。お前の本当の顔を知らないから告白なんてできたんだろう。真実を知ったら悲しむんじゃないか? "女喰いのルーン"」


 こいつは今まで数多の女性をその毒牙にかけてきた。しかし、決定的な証拠もなく被害にあった女子生徒も揃って口をつぐんでいることからこいつの本性を知らないものも少なくない。俺は昔ルーンの魔の手に襲われそうになったレヴィを助けたこともあって、こいつの本性を知ってる。確かその頃からだろうか、俺がルーンにちょっかいをかけられるようになったのは。


「っく、それよりも君は、君たちはこんな人気のないところで何をしているんだ? それに、よく見れば見慣れない子もいるじゃないか。それに、女の子だね」


「お前はまたそうやって……俺たちはこの子が意識を失って倒れていたから介抱していたんだ。俺らはお前みたいな奴じゃないからな」


 駄目だ、こいつとまともに話してもこっちの気分が悪くなるだけだ。

 俺はそう思い、この場を立ち去ろうとすると、その空気を察したらしいルーンが声をかけてきた。


「ちょっと待て。僕はまだその子の名前を聞いていない。名前くらい教えてくれてもいいだろう?」


「……サリアだ。この子が覚えてるのはそれだけらしい。ほかの事もよく覚えていないらしい」


 こうしておけばこれ以上詮索されることもないだろうし、多少おかしなことをしても大丈夫だろう。

 俺の意図を汲み取ってくれたらしいサリアとレヴィ。馬鹿なロイスは「なんでそんな嘘つくんだ?」みたいな顔をしているが、ギリギリのところで声には出していなかった。


「そうかいそうかい……謎多き美少女。中々そそるじゃないか。よし、君はうちの学園に編入してくるんだろう? 僕が色々と案内してあげるよ」


「いや、なんで学園に編入することに……てかそんなの無理だろ」


 素性も知れない者を学園に入学させるだなんてさすがにあの学園長でもやらないだろ……いや、どうかなぁ。


「君は本当に何にも知らないようだね。いいかい? この前学園内の掲示板にあっただろう。"依頼先やその他の場所等で見つけた、助けが必要であろう若者は学園で保護、教育を行うので見つけ次第教務科まで連れてくること"とね」


「あ、あぁーなんかそんなのあったわねぇ」


「まぁ教師たちの気持ちもわからんでもないけど人材集めに躍起になりすぎだろ。いくら何でもそんな誰彼構わずってどうかと思うけどなぁ」


 こんなご時世だ。妖精たちに植え付けられたトラウマのせいで日常生活もままならない者は少なくないだろう。だが、その中には協調性やその他のまともな思考ができない者もいる。変に力を与えてしまってはその力を使って暴れだすかもしれない。いざそうなったら教務科が止めるつもりであろうし、実際に止められるであろう。だがそれまでに被害がゼロというわけにもいかないことはあの教師たちでもわかってるはずだからきっと何か考えがあるのだろう。

 それに、これは願ってもないチャンスだ。これでサリアにはしばらくの間学園生として生活してもらって、頃合いになったら少しずつ正体を明かしていき、妖精は畏怖の対象ではないことを"再認識"させる。きっとそう簡単にはいかないだろうが何とかして見せるさ。


「それで? 君たちがサリアちゃんを連れて行かないなら僕が連れていくが?」


「ばーか、俺らで連れてくよ。ちなみに俺は感謝はしてないしその情報をもらったことも何だとも思ってねぇから」


「レイド、語るに落ちてるわよ」


 ルーンのこういうところが憎めない。

 一見最悪のクズ野郎にも見えてしまうが、俺をライバル視のようなものをしているのにこうして手助けのようなことをしてくる。でも、サリアのことを狙ってるのは本当だろうな。こいつの目、かなり本気だし。それに、ルーンがこんなにも可愛い女子を放っておくわけがないしな。

 とりあえず、ルーンのことは良しとして、目下の目標は怪しまれずにサリアを学園に入学させて、普通の学生生活を送らせる事だろう。腕の魔法陣は消せたものの、あの教務科でバレずに、そして何も問題が起きずに事が進むか心配だ。

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『冒険の始まりは1輪の花??』という作品を同時連載しております こちらは自分の代表作であり、処女作でもあるので是非一度お読みください
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