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休日は神官戦士!  作者: 森巨人
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憧れと現実と漫画

「そんな、酷い…」


 と言って崩れ落ちる浅田さん。…なんか、さん付けするのバカバカしくなってきたわね。


「まあ、最初は普通の【死霊術師】で良いんじゃないかな?【リッチ】を目指すかは置いといて」


 龍治のフォローが入る。優しいわね。


 ていうか「普通の【死霊術師】」って何よ、その辺歩いてるの?


「うん、ありがとう峯崎…君? 私、頑張る」


 なんか良い話っぽく終わろうとしている。あれ? 私が変なの?


「じゃあ種族を決めようか。特に希望が無ければ【人間】になるけど」


 何事もなく進められる龍治が、羨ましく思えてきた。


「そんな…私なんかが【人間】なんて、失礼にもほどが…」


 じゃあ、今のあんたは何なのよ!?


「あ―もう! まどろっこしい! まだ親しくないけどあえて言わせてもらうわ、ゆかり!」


 急に名前を呼ばれてビクッとする浅田さん、いや紫。


「ゲームなんだから好きなようにやっていいのよ! そりゃ皆でやるものだからルールはあるけど、それこそ皆が納得するなら一寸は変えてもいいの! まずは自分が何をしたいか、しっかり主張しなさい!」


 言いたい事を言ってスッキリする私と、私の言葉を受け考え込む紫。


「私のやりたいこと…」


 そう呟いて、下を向き考え込む。


 しばしの時が流れ、顔をあげた彼女の表情は決意に満ちていた。そして…


「うん。私、立派な【死霊術師】になって魔術を極めて、お金を貯めて【リッチ】になって【広範囲大規模腐食呪文】で人類を薙ぎ払ってみせる!」


 ………


 よし、まずはじっくり話を聞いてみよう。(色々手遅れな気はする)



「私、ファンタジーが大好きなの…」


 【リッチ】云々は置いといて、まず何で【ドラゴン・ファンタジ―】に興味を持ったのか聞いてみた。


「【腕輪物語】も【ヘルニア国物語】も観て好きなんだけど、一番は【Mustard!~餡子食う破壊神~】なのね?」


 ん? 前者二つは聞いたことあるけど、最後のは聞いたことないわね。


「あ、それ知ってる。もう何十年も前からやってる漫画で、今は休止してるんだよね?」


 そんなのよく知ってるわね、龍治。お父さんに聞けば分かるかしら?


「そう、それ! その中のシーンでね? 【リッチ】が貧弱な一般人を魔法と暗黒の力で恐怖に陥れる所があって、私、そこに憧れたの!」


 憧れちゃったのかぁ…(遠い目)


「結局主人公の魔法使いに負けちゃうんだけど、その【リッチ】が私の理想なの! もしなれるんなら、私【リッチ】になりたい!」


 瞳が眩しい。ん? でも、それなら…


「え、それってその主人公の方が強いんでしょ? ならその正義の主人公を目指せば…」


 と何気なく言うと、紫は驚愕して、


「なに言ってるの加々美さん!? 私にあんな風になれって言うの!? 確かに【リッチ】は人類の敵かもしれないけど、その上女の敵になれってこと!?」


 なんで私責められてるの!? え、普通主人公って正義の味方じゃないの?


「あ~…聞いたことあるかも。その主人公、なんでも「世界の半分、即ち全ての女は俺のモノだ!」って宣言したんだっけ?」


「なにそれ!? え、漫画なのよね? 少年誌でやってるのよね?」


 それはもう、年齢制限が掛けられるレベルではなかろうか。


「真輝ちゃん、浅田さんは【そっち】じゃなくて【こっち】で引き受けた方が良いんじゃないかな?」


 困り果てた私に、龍治が提案してきた。



『急な帰還命令とはな、相変わらず勝手なものだ』


 一人ごちながら【魔王城】に向かう【俺】。


 占領した村の管理を副官の【ガグ】に任せ、とりあえず命令に従い帰還する。


 何の用かは知らんが、とっとと開放して欲しいものだ。正直、遠征先にいる方が気楽で良い。



 謁見の間で跪く【俺】に対し【魔王】が声をかける。


『よくぞ戻った【魔王子】よ。地上への侵攻は順調な様だな』


『はっ、これも魔王陛下の御威光かと』


『ふっ、【闇】を司る我に対して威光とな? 皮肉のつもりか』


 意識して言った訳ではないが、それでもいいだろう。


『まあ良い。此度は功績を挙げた貴様に、褒美をくれてやろうと思ってな。…出てまいれ』


 【魔王】がそう言うと、玉座の陰から一人の小柄な姿が現れる。…ほぅ、訓練を終えたか。


『お久しぶりですアンリ様。以後、貴方に付き従います』


 そこには禍々しい杖を持ち、漆黒のローブを纏った小柄な【闇妖精ダークエルフ】が立っていた。



 二人が帰った後、帰宅したお父さんに聞いてみた。


「お父さん、【Mustard!~餡子食う破壊神~】って漫画知って…」


 言い終わる前に、父は私の両肩をガシッとつかみ、


「真輝には、まだ、早い」


 と、笑顔で(目は全然笑ってない)一語一語言い含めるように答える父。


「………はい」


 と短く答えるしかない私。


 一体どんな漫画なの!?

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