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休日は神官戦士!  作者: 森巨人
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幼児がやってきた

 フッフッハッハッと私の呼吸が規則的に、そして速く紡がれる。


 細かく二度吐いて、同じく細かく二度吸う。意識してやってる事じゃなくて、自然とそうなっちゃうのよね。というか、私にとってはこれが一番楽な走り方なの。


 只今夕方五時過ぎ、私は日課のジョギング中。


 コースはその時の気の向くまま。念のため大きな通り沿いを3~5km、六割くらいの力で気ままに走る。


「絶対に毎日走って、〇○kg痩せる!」なんて大層な目標は掲げていない。単に気持ちいいから朝夕続けている。


 走る前の準備体操、走ってる間の周囲の景色と新たな発見、走り終えた時の充実感。どれもが心地よい。


 子供の時にこれを教えてくれたお父さんは、仕事でなかなか時間が取れなくなってしまったけど、また一緒に走りたいわね。


 え、お母さん? 以前誘ったら「ご近所さんに見られたら恥ずかしい」んだって。こんなに気持ちいいのに、よく分かんない。私も大人になったらそう思うのかな?


 …っと、家まで後ちょっとね。ラストスパートといきましょ!



 家に到着すると、前に車が一台停まってる。お客さんかしら…って、あれ? この車はひょっとして…


「お願い! どうかこの通り!」


「ん~…、普段なら構わないんですけど、明日は本当にちょっと…」


 庭に入るとこんな会話が聞こえてきた。お母さんと…ああ、やっぱり!


「ただいま~、ってやっぱりじゅんちゃんだ。何かあったの?」


「ああ、真輝ちゃん! お正月ぶりね、実は…」



 ちょっと説明が要るかしらね。


 この人は「小倉 潤」お父さんの姉で、私から見たら伯母に当たる。


 子供の時に紹介されて「潤おばちゃん」って言ったら、もの凄い笑顔で両肩を掴まれて、


「潤ちゃん、で良いわよ?」


 と言われ、子供ごころに必死にコクコク頷いた記憶が…うっ、なぜか頭が痛い。


 疎遠、という訳ではないが、会うのは年に2~3回と言う所。同じ県内だけど、片道二時間半かかるのでは「ちょっと会いに行く」ってのも中々しづらい。


 だから、お互い会うには何かしらの理由が伴う訳。


 そして今回の理由は、


「お願い! 明日一日、いや夕方まででいいから「真奈まな」を預かって!?」


 と言うものだった。ちなみに真奈ちゃんは潤ちゃんの娘、私から見て従姉妹になるわね。もうすぐ五歳だったかしら?


「あれ? でも明日って、お母さん朝から出かけるんじゃなかった? 地元の高校の同窓会だって」


「そうなのよ…明日じゃなければねぇ」


 う~む…そうだ!


「潤ちゃん、お祖母ちゃんは?」


「真っ先に頼んだわよ! そしたらお母さん、本当、たまたま、その日にバス旅行の予定組んであって…」


 あちゃ~…まあ潤ちゃんの家からはお祖母ちゃんの方が近いし、それもそうか。


「「旅行やめようか?」って言ってくれたけど、そこまでさせられないじゃない!? 最後の頼みでここに来たけど、もうどうしたらいいか…」


 それは心苦しい…ええい、それなら私が一肌脱ごうじゃない!


「じゃあ潤ちゃん、私が真奈ちゃん預かるわ!」


 私がそう言い放つと、


「本当!?」


「え…、大丈夫?」


 どっちがどっちの反応かは言うまい。ていうか、お母さん失礼ね!(言ってる)


「大丈夫よ! 真奈ちゃんいい子だし、一日くらい平気だって!」


「ありがとう、真輝ちゃん! じゃあ明日の朝連れてくるから、よろしくね!」


 と言うと潤ちゃんは車に飛び乗り、凄い勢いで帰っていった。…事故りませんように(合掌)


「ふぅ…真輝が面倒みるって言うんじゃ、色々準備しないとね」


 と溜息をつきつつ家に入って行く我が母。


 …あれ? 私の信頼、低すぎ?



「で、あたしと龍っちを昼前に呼んだと」


「うっ…い、いいじゃない、どの道ゲームやるつもりだったんだし…」


 明けて翌日、GWも最終日。眼を細くして言ってくる鏡子と、目を逸らしつつ抗う私。


 いや~もうすぐ五歳児の体力を、甘く見ていたわ。


 朝早く潤ちゃんに連れられてきた真奈ちゃん。


 最初は寝ぼけ眼だったけれど、しばらくしたら元気いっぱい。


 頑張って付き合ってたけど、とても一人じゃ無理!


 という訳で、戦争は数だよ!という理屈から二人を召喚。


「ま、いいけどね。真奈ちゃん? あたしは鏡子、よろしくね?」


「よろちく~」


「え~…峯崎 龍治です。よろしく?」


 小さな子に慣れてなさそうな龍治が、神妙に声をかける。


「…りゅうちゃん?」


「え? あ~…うん、それでいいや」


 龍治が色々観念した様子で答える。潔いわね。



「じゃあ真奈ちゃん、一緒にゲームしよっか?」


「げーむ? どういうの?」


 小首をかしげて聞いてくる幼児。可愛い…じゃなくって、うーん…どう言ったら良いか…


「ごっこ遊び、で良いんじゃない?」


 鏡子ナイスフォロー! そう聞くと真奈ちゃんは目を輝かせ、


「するー!」


 と言って持ってきたお遊びセットの中からステッキを取り出す。ほほぅ、私は最近観てないけど、あれが今の所謂「魔法少女」の物らしい。


「あははっ、じゃあ職業は【魔術師】で決まりだね♪」


 ノリ良く笑う鏡子。それを傍目にしつつ、龍治が一冊の薄い本を取り出す。


「次は種族だけど、これを使ってもいいかな?」


 と言ってページを開く。そこには診断テスト…えーと質問形式で行き先を決める迷路みたいなやつ? が載っていた。


「へ~、そんなのもあるのね。じゃあ真奈ちゃん? 今から龍治が質問するから、答えてね?」


「あい!」


 元気よく答える真奈ちゃん。いいわね~、一緒に居るだけで元気が出そう。…一人で相手するときついけど。


「では一問目…『人間が、嫌いだ』」


「ふぇ?」


「待ちなさい龍治」


「龍っち、ちょっとストップ」


 二人で止めて本を奪い、中身を確認する。…なによこれ。


「最初の質問で人間かそれ以外で別れて、最終的に酒が好きかどうかで【ドワーフ】になる…?」


「マキ、こっち行くと森が好きかどうかだけで【エルフ】になるよ?…アバウト過ぎない?」


 そして、どれでもないとGMになる。作りが雑過ぎるでしょ、同人誌か?


「龍治、これは没。真奈ちゃんゴメンね~質問はヤメで、この四つから選んでね?」


 と言って改めてプレイヤーズガイドの種族紹介を見せる。…でも反応が芳しくない。というかよく分かってなさそう?


 困ってると、鏡子がピンと思いついたように、


「ねえ真奈ちゃん、背の高さはどのくらい?」


 分かる話で嬉しいのか、真奈ちゃんは元気よく、


「きゅーじゅうご!」


 と答える。二桁の数字分かるのか、凄いわね。どこぞの戦士は…いや、いうまい。


「ほうほう♪ じゃあ【ハーフリング】で良いんじゃない? 丁度同じくらいでしょ」


「おんなじ? そうすりゅ!」


 鏡子ナイス! ていうか子供の扱い上手いわね。



「次は【能力値】ね。え~…真奈ちゃんは力持ち?」


 ちょっと砕いて聞くが、真奈ちゃんは首を傾げる。うーむ、聞き方が悪いのか?


「あ~…真奈ちゃん、ジャングルジムは好き?」


 龍治が聞き直すと、


「しゅき!」


 と元気良い返事。そうか、そっち経由で聞けばいいのか。


「じゃあ普通よりちょっと上という事で11、ハーフリングで-3されるから【筋力】は8でいいかな?」


 と龍治が〆る。よっし要領分かったわ、サクサク行くわよ!



 色々決まって、後はキャラの細かい肉付けね。真奈ちゃん改めキャラ名【マナ】はどんな冒険者なのかしら。


「じゃあ真奈ちゃん、どんな魔法少女になりたい?」


 ここは直球。私も慣れてきたかしら?


 すると真奈ちゃんは嬉しそうに、


「えっと、おひめさまで、おようふくきれいで、やしゃしくて、えらくって、おともだちいっぱいで、しゅてっきしゅごくって…しゅごいの!」


 といってステッキを両手でかざす。…うん!


「じゃ龍治、そう言う事で頑張って!」


「龍っちの腕の見せ所だね!」


 と二人でそれぞれ龍治の肩を叩く。


「……善処します」


 龍治の返事が、とても力なく響いた。

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