魔の剣
戦場の中央で対峙する『俺』と領主。ある程度近づくと、領主は馬から降り始める。…ほう?
『利を捨てるか、領主よ』
『俺』の問いに、領主は苦々しげに、
『フン、どの道貴様に飛ばれたら無意味なのでな。…下馬する代わりに、飛ばないと約束してくれまいか?』
フッ、条件が同じなら『俺』に勝てるとでも言いたげだな。
『構わんぞ。【ハーフ・デビル】の約束が信じられるならな』
『…感謝する。では、行くぞ!』
互いに剣を軽く当て、一度離れる。さあ、楽しませてくれよ!
「真輝ちゃん、見て分かる範囲で相手の強さを知りたいんだけど」
と、龍治が聞いてくる。そうねえ、パッと分かるものだと…
「えーと、まず装備がロングソード、プレートメイル、ラージシールドのいわゆる騎士の基本的な物ね。でもどれも薄っすらと光ってて、魔法がかかってると思われるわ。あと、騎士本人の強さは…う~ん、今のアンリよりは経験あるかしらね。といっても大差はないと感じるかしら」
私の説明に、龍治は顎に手を当てて独りごち始める。
「…プレートメイルとシールド…+7の+1と、魔法はそれぞれ+1とするとACは20ってところかな? ロングソードは…名前付きってことも考えると+1じゃなくて+2かもしれない…とすると3か4レベルで【筋力】が15と仮定すると…命中率が…」
…こんにゃろう、相手の強さをほぼ見切ってやがる。これだからGM経験者は!
『俺』の最初の一手、それはこれだ。
『闇の神よ、我に加護を【ダークプロテクション】!』
言葉と同時に『俺』の周囲を闇が包む。と言っても互いの視界を遮るほどではないが。
『くっ…闇の加護か。流石は【魔王子】と言ったところか』
『俺』の見立てでは、領主がこの状態の『俺』に有効打を入れるのはかなり難しいだろう。まあ、それはこちらにも言えるんだが…
『フッ、闇に抗う人の気概、見せてみろ!』
そして始まる剣戟の音。短くも、長い時間が訪れようとしていた。
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「(コロコロ)13。ハズレね」
「(コロコロ)14。こっちもハズレ」
「「………」」
訪れる沈黙。かれこれ7ラウンドこの調子である。…お互いちょっと堅くしすぎたかしら?
二人のスペックはこんな感じ。
・アンリ :近接命中修正+6、AC23(【ダークプロテクション】込み)
・アーダン:近接命中修正+7、AC21
よってアンリは2d10で15、アーダンは16を出さないと有効打を与えられない。確率は…
「僕は21%で、そっちは15%だね」
計算得意な龍治がサラっと言う。う~ん、そりゃ中々出ないわよね。どうしよう…
「このままグダグダ振り続けるのも何だから、引き分けにする? まあ、アンタがアレを使えば話は別だけど」
私は今GMなんだし、判断は龍治に任せよう。
「…うん、アレを使うよ。ふっふっふ、人間にしてはよくやるな。だがここまでだ!」
ノリノリの龍治。…まあ、本人が楽しければいいか。
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闇を纏った【魔王子】が一歩下がる。仕切り直しか?
数合打ち合ったが、お互い有効打を与えられない。長丁場を覚悟していたところだ。
勝てずとも、このまま引き分けに持ち込めれば、交渉の余地が出来るかもしれない。それどころか、なんとか一撃を加えて【魔王子】を降参させられれば、魔王軍自体を撤退させることも不可能とは思えない。
そう考えつつ、改めて防御の構えを取ると【魔王子】は予想外の-俺からすると愚かな-行動をした。
『人間にしてはよくやったな。だが次で終わりだ』
そう言って【魔王子】は盾を捨て、片手半剣を両手に持ち替えたのだ。
焦ったな! 貴様の腕では防御に徹した俺を倒すことはできまい。そしてその一撃をしのげば、盾を失った貴様が俺の攻撃を防ぎきる事も不可能だ!
『………』
何かボソボソと言っている…呪文か? だが奴が【黒騎士】なら、使うのは【神官呪文】だ。一発で俺を倒すような呪文はあるまい。
『いくぞ、精々耐えてみせろ』
そう言い放ち、一歩踏み込んで剣を振り下ろしてくる【魔王子】 大丈夫、剣筋は既に見切って…
一筋の【闇】が走った。
気がついたら、俺は地面に倒れ天を仰いでいた。長剣も盾も手放して転がっている。何があったというのだ?
激痛に耐えながら身を起こそうとすると、片手半剣をこちらに突きつけた【魔王子】と目が合った。
『どうする、まだ続けるか?』
その面倒くさそうな聞き方に、俺の心は折れた。
『…降伏する。だが、民の命だけは…』
それを聞いた【魔王子】は、やはり面倒そうに頷いた後、歓声をあげる敵陣に戻っていった。
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「【絶対命中】発動!(コロコロ)サイコロの出目は7、基本+6の【強打5】で-5、足して8。それに呪文の修正が+20、AC28まで当たり!」
「はいはい。2d10で2以外出せば当たるんだから、そりゃ当たるでしょうよ」
確率99%なんだもの、振る必要なくない?
「ダメージが…1d10に【筋力】の+3と【強打5】で+5して、+1の魔剣だから…1d10+9になって(コロコロ)6! だから15点!」
楽しそうに言う龍治。そりゃそうよねぇ、強いもんねぇ。
「領主アーダンのHPは18だから、15引いて3ね。流石に降伏するわ」
もう色々折れちゃってるわよね。しょうがない、しょうがない。
「サプリメント読んだ時から、ずっとやってみたかったんだ。でも【黒騎士】もやりたかったから、諦めてたんだけど…種族レベルを好きなの1つ貰えるって聞いて、真っ先にこれが浮かんだんだ。【魔剣士】を認めてくれてありがとう、真輝ちゃん!」
はいはい。喜んでくれて嬉しいわ(投げやり気味)
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『若が【魔剣士】でしたとは、知りやせんでしたぜ』
自陣に戻った『俺』を出迎えたガグが言う。そりゃ言ってないからな。
『あのまま続けるのも面倒だったんでな、試し打ちがてら使ったまでだ。…詳しく知りたいんなら、間近で見せてやってもいいぞ?』
と言って視線を向けると、ガグは震え上がって答える。
『め、滅相もございやせん。あんなの食らったら良くて再起不能ですぜ』
『そうか…なら、するべき事をしろ』
『へいっ。戦に出た100を治療と休息、後詰の200のうち100で戦場の片付け、もう100で村を制圧ってことでよろしいですか?』
『俺』は頷きで返す。正直「良きに計らえ」って感じだ。
掛け声を上げ、村に向かうオーク達。おっと、忘れるところだった。
『ガグ、逆らう奴は殺してもいいが、従順な者は傷つけるな』
『…甘すぎやせんか?』
不満げに返すガグ。やれやれ…
『俺に考えがある。後で聞かせてやるから、今は黙って従え』
『…承知しやした』
頷き、指揮を取るため離れるガグ。全てを話すには時間がかかるからな、今はこれでいい。
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休息がてら戦場を見渡すと、領主の剣が転がっているのが目に入った。そういえばこいつは魔剣だったな。
無造作に手に持つ。例え、呪われてたとしても【黒騎士】の『俺』には効かな…
『あら、今度のマスターは人間じゃないのね』
不意に『俺』の脳裏に「女」の声が響いた。




