ここはどこ? あんたは誰?
「ふふ~ん♪」
土曜日の昼近く、気分よく宿題をこなす私。向かいでそれを見ていた龍治が、
「楽しそうに宿題する人って珍しいかも」
と、のたまう。ふーんだ、あとで分かるわよ♪
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宿題と昼食を済ませ、改めて向き合う。ゲームマスタースクリーンがこっちを囲って立ってるのって新鮮ね。
「昨日はごめんね? 予定あったの忘れてて」
と言って龍治が頭を下げる。まあ普通は気にするかしらね。
「ううん。逆に、ある意味はかどったわ。じゃあ早速始めましょうか♪」
「何でそこまで機嫌が良いのか分かんないから、ちょっと怖いんだけど…」
言いながら、まだ未記入の部分が多いキャラクターシートを出す龍治。機嫌いいのが怖いとか、ちょっと失礼ね。
「えーと、昨日の続きだから所持金から…」
「待って龍治、その前に一つシーンを入れたいんだけど」
「え、この状態のキャラで? まだ決める所多いと思うんだけど…」
いや、この状態だから出来るのよ!
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古びた城の通路を歩くと、カツンカツンと靴の音が響く。大きさの割に人気がないこの城ではこれが普通だ。
しばらく進むと大きな両開きの扉の前に出る。謁見の間に続く扉だが、衛兵も侍従も居ない。では自分で開けるのか? 違う。
「扉は君が近づくと自然と内側に開いていった。どうやら認められた者が近づくと、自動で開くらしい」
「おお~、自動ドア? というか城!? 僕どこに居るの!?」
はいはい、黙って聞いてなさい。まだ続くんだから♪
中をざっと見まわし、そのまま進む。造りは立派だが相変わらず殺風景な所だ。持ち主の心象が反映されてるというなら、まあ理解できる。
扉が閉まる音を背に、玉座にある程度まで近づき、跪いて頭を垂れる。声を発する順は身分の高い者からだ。すなわち…
『よくぞ参った、我が息子よ』
『俺』の前で玉座に座る、この【魔王】が一番偉いということだ。
「魔王!?」
龍治の驚く声が心地好い。
「そう! あんたは黒騎士、そんでもって魔王の息子なのよ! そして魔王は、跪いたあんたに続けて声をかけるわ」
反論する隙を与えない、ここで畳み掛ける!
『其方がこの世に生を受け15年。その間、余は持てる全ての力と知識を其方に注ぎ込んだ。最早教えることは何もない、行け! 魔王子よ! 惰眠を貪る光の種族の者共に、我らの恐ろしさを再び思い出させてやるのだ!』
その言葉に思わず反応してしまい『俺』は顔を上げて口答える。
『人間である『俺』に、同じ人間を殺せと?』
それを聞いた魔王は、呆れた表情を浮かべて言う。
『フッ、まだ自分を人間だと思っているのか。いいだろう、余が改めて其方が何者なのか見せつけてやろう』
と言って第二位階魔術師呪文である【幻影】を唱える。くっ…止めてくれ!
『これが其方の姿よ、ハーハッハッハッ!!』
そこには、魔王と同じ様に歪な二本の角と、背に悪魔の翼を持つ『俺』の姿があった。
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言いたい事を全て言い、スッキリした私に龍治が声をかける。
「えーと…僕は結局何者なの?」
あら? 大まかな所は全部言ったと思うけど、改めて説明した方が良いかしらね。
「じゃあ、説明するわね。ここは【フォーチューン大陸】の中央に広がる【闇の砂漠】で、その中心にある【魔王城】よ。あんたのキャラは魔王の息子で、種族は【ハーフ・デビル】にしといたわ」
「とりあえず人間」って言ってたから、別に構わないわよね♪
「…な、なるほど。僕、砂漠に魔王が居たなんて知らなかったよ。…GMなのに」
今朝決めたんだもの、当然よね。
「しかも人間ですらなかったという……あ! そうすると【能力値】とかどうなるの?」
それも当然の疑問ね。じゃあ解説しましょうか!
ハーフ・デビル概要
・能力値:全て+2
・種族レベル1:任意の職業
・暗視能力:60フィート(約18m)
・飛行能力:有り
・毒:無効
・寿命:無し
・その他:レベルの上昇に伴い特殊能力追加
「何か凄いんだけど…これでいいの?」
龍治が恐る恐る聞いてくる。ちゃ~んと考えてるわよ♪
「確かに凄いけど、ハーフ・デビルって事を忘れちゃいけないわ。街であんたに物を売ってくれる人は居ないし、どこの宿も泊めてくれないでしょうね。言わば存在自体がハンデを背負っているのよ!」
ビシッと指差しつつ私が言い放つと、龍治はキョトンとした顔で、
「それはそうだろうけど、居るのが【魔王城】じゃ関係なくない? 人間居ないんだよね?」
…あれ? そういえば?
指差したまま違和感でクビを傾げる私を尻目に、龍治は積み上げてるサプリメントから一冊、嬉しそうに引っ張り出す。
「それより種族レベルを1つ貰えるんだよね? じゃあ僕、これが良いんだけど!」
差し出されたページを見る私。……これぇ?
「あんた、どこまで厨二…ってこれ褒め言葉になるんだっけ…」
「…真輝ちゃんが見たことない顔してる」
私自身も覚えがないわよ、呆れ顔と渋い顔を同時にするなんて。
「う~ん、う~ん……わかった、いいわよ。じゃあ種族レベルの分はこれってことで」
「ありがとう、真輝ちゃん!」
こういうの何て言うんだっけ…ああ「毒を食らわば皿まで」ってやつね。
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『俺』は私室に戻り装備を整える。使い慣れた片手半剣、魔王の紋章が彫り込まれた大盾、そして『俺』の翼の動きを妨げない様に特別に形作られた板金鎧。どれも物心ついた頃から使っている逸品だ。
子供の頃に作った物が今も使えるのか、だと? 愚問だな。この闇を凝縮したかの様な金属を見たことがないのか? これこそは闇の【オリハルコン】とも言われる【ダークメタル】だ。血と魂の契約により『俺』が扱うのに常に最適な形を取る。
だが真似するなよ? 【ダークメタル】製の武具を扱えるのは『俺』達【闇の種族】だけだ。【光の種族】が使おうものなら瞬く間に鎧に食いつくされて、そこらを【さまよう鎧】になるだろうよ。
「これ全部貰っていいの!?」
はしゃぐ龍治。だってねぇ…
「所持金もそうだけど、あんたは立場的に「税金を払う方」じゃなくて「税金を集める方」なのよ。それに魔王の息子だってのに「お金が無くて皮鎧(泣)」とかおかしいでしょ?」
どこぞのゲームみたいに「銅の剣と銀貨50枚で世界を救う旅に出ろ!」ってのも、ちょっと考えると変な話だしね。
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「真輝ちゃん、終わったよ」
キャラクターシートの空いてた欄を埋めた龍治が私に言う。私もこの後の流れを確認し終えたところだ。
よし、じゃあシナリオ始めましょう!




