休日は神官せん…あれ?
カリカリと音を立てていたシャープペンの動きが止まる。
書かれた文章を読み返すと、どうも納得できない。なので消しゴムで消す。もう何度目だろうか…
「…シナリオ考えるのって、結構大変なのね」
ため息と共に独りごちる。時計に目をやると、現在午後九時ちょっと前。寝るまでにまだ時間あるわね。
「ん~~っ!」
と、体を伸ばしてリフレッシュする。さて、もう少し頑張りましょうか。
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「マキ、明日はドラファンするの?」
金曜日の放課後、鏡子が私に聞いてくる。
「どうだろ? 龍治の準備次第かしらね。やるとしたら鏡子は来れるの?」
聞き返すと、鏡子は渋い顔で、
「う~ん、それが泊まりで離れた親戚の家に行かなきゃなんなくって。もしやるんだったら謝っとこうかなって」
あらら。
「大変ね。龍治にこういう時どうするのか聞いておくわ」
人が揃わないってのは昔からあるだろうし、何か対応策はあるんだろう。
「ありがと、何かあったら教えてね~♪」
と言って教室から出ていく鏡子。じゃあ、私も帰りましょうか。
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ところ変わって私の部屋。やって来た龍治に事情を話す。
「そっかぁ、鏡子ちゃん来れないのかぁ…」
あからさまにがっかりする龍治。もしや…
「…悪かったわね、胸がちっちゃくて」
「え? あ、う、そういう意味じゃなくて…いや無くも無く…そりゃ無いより有る方が…」
あるのかないのか。
「そ、それよりどうしようか? シナリオは考えてあるけど、鏡子ちゃん抜きで無理してやるのもどうかと思うし…」
ジト目で睨む私を、誤魔化すように聞き返してくる龍治。…まあ、誤魔化されてやりますか。
「それよ。こういう時ってどうするの? ルールに何か書いてない?」
「ちょっと待ってね」
ホッとした様子でルールブックを捲り始める龍治。…あとで覚えときなさい?
「えーと、プレイヤーが揃わない時のキャラクターの扱い方…かな? あったあった」
ほんとに何でもあるのね…
「①NPCとして扱う。操作は他のプレイヤーが行い、経験点や財宝は通常通り得る」
「無難なところね」
レベル差もできないし、これでいいかな?
「欠点。居ない期間が長いと、欠席したプレイヤーが話について来られなくなる。その場合、疎外感を感じてグループを抜けてしまう可能性が高い」
う、うーん…それはちょっと…
「また、仲の悪いプレイヤーが操作すると高確率でそいつの盾にされて命を落とす。その場合、グループが解散する。てめーのことだよ○○○○(個人名)忘れてねーからな!」
「誰と戦ってるのよ!」
これだからアメリカ人は…あれ、翻訳した日本人でもありそうかも?
「人付き合いって難しいね… えーと②別の冒険に出ていたことにする。その場合、半分の経験点と財宝を得る」
「そっちの方がいいかしら。何事もなさそうで…」
ことなかれ主義になりそう。
「欠点。低レベルの間にこの処理を行うと、レベル差ができてキャラ格差が発生する」
うーん。ま、まあ多少なら…
「また、その間にGMが多めに財宝を出したりすると、装備や生活水準にまで格差が発生し、現実の喧嘩に発展する恐れがある。やーい、ゲームでもリアルでも貧乏人~♪」
「煽るなー!」
まったく、作者はどこまで本気なのやら……
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「結局、何やっても問題はできちゃうのね。いっそ明日は無しにした方がいいのかしら?」
視線を天井に向け、呟く。別に鏡子をいじめたいわけじゃないしねぇ。
「…あの、真輝ちゃん?」
なにやら考え込んでた龍治が、改まった様子で聞いてくる。何か良い考えでも…
「僕も、プレイヤーやってみたいなって…」
「へ?」
えーと、ちょっと待って? 鏡子が来れなくて龍治がプレイヤーやるってことは…ひょっとして、
「真輝ちゃん。GMお願いします」
そう言って龍治は、私にゲームマスターハンドブックを差し出したのであった。




