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休日は神官戦士!  作者: 森巨人
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まずは現状把握ね

「ドラゴン語か…一応こっちもこうしておこう。使うかどうかはともかく」


 龍治がまたマスタースクリーンの裏で何か書いてる。


「龍治?」


「ちょっと修正をね…じゃあ始めようか。どんな場面からにする? 特に希望が無ければダンジョンの前からになるけど」


「う~ん、どうせなら神官として着任した所からやりたいわね。その方が気分出るじゃない?」


 雰囲気は大事だ。何せ自分自身だし(力説)


「なるほど…じゃあ、ここは辺境と言って差し支えない位置にある、人口5000人程の街。その中心に近い所にある神殿の一室で、初老の司祭が跪くシャインに向かって声を掛ける」



『おめでとうシャイン、これで君も正式に神官となった。慈愛の心を持ち、民の守護者となるべくより一層の努力を期待する』


『ありがとうございます。これからも神の僕として、慈愛の心にて日々の奉仕に努めます』


『うむ。汝に神の御加護が有らん事を…』


 儀式が終わり、立ち上がった『私』に司祭様が声を柔らかくして話しかける。


『修行の為に冒険者を希望していると聞いたが、決して無理をしてはいけないよ? 危ないと思ったら退くのも立派な勇気だからね』


 『私』はニッコリと笑って答える。


『はい、分かっています。決して無理はしません』


『うむ。…そういえば近くの遺跡にゴブリンが住み着いたと聞いたな。まずはゴブリン退治くらいがいいのではないかな?』



 私はポンと手を叩いて、龍治に言う。


「ああ、この依頼って神殿が出してたものなの?」


「え~と、正確にはこの街の領主が出していて、それをここの司祭が聞いてたってところかな。神殿の入り口にも張り紙…と言っても羊皮紙だけど、が張ってある。『遺跡に巣くうゴブリンを退治してほしい、報酬は金貨200枚』って」


「金貨200枚と言うと…20万円くらい? 相場としては良い方なのかしら」


「…命懸けだから、そこら辺は人それぞれじゃないかな。じゃあさっそく行く?」


「ちょっと待って…」


(キャラクターは違えど、これで4回目だ。流石に無策で行くのは愚かだと思う。考えろ私…私自身がゴブリンを退治に行くと考えて、なにをすればいい?)


 シャープペンでこめかみをコンコンと叩きつつ、私は想像力を働かせる。


(敵を知り己を知れば百戦危うからず、よね。そもそもゴブリンってどんなモンスターだっけ。えーと…子供くらいの体格で暗闇でも目が見えて…って、シャインはゴブリンの事知ってるのかしら?)


「ねえ龍治、シャインはゴブリンの事どれだけ知ってるの?」


「う~ん…このゲームって【モンスター知識判定】とか無いみたいなんだよね。昔のゲームだからかな」


 龍治が困ったようにGM用ルールブックを見直す。


「中世がベースの様だから識字率も低そうだし、字が読めたとしても本が高価で出回ってないから、知識そのものが貴重なのかも。基本的に親から子への口伝と、噂で聞くくらい?」


「うわぁ…今のネット時代とは全然違うのね。…シャインは字が読めて良いの?」


「うん。冒険者は特別で【知力】が余程低くなければ、全員読み書きができるらしいよ。逆に言うと、そういう訓練を受けた人が冒険者になれると言った方がいいかな?」


 なるほど、なら話は簡単だ。まずは先輩に聞くとしよう。



『司祭様。改めてゴブリンの事を知っておきたいのですが、伺ってもよろしいですか?』


『ふむ、わしの知ってる事で良ければ話そう』


 司祭は咳払いを一つし、思い出すように語り始める。


『ゴブリンと言うのは、神話の時代に闇の神が生み出した種族の一つだ。小柄で太陽の光が苦手だが、逆に闇を見通す目を持っておる。繁殖力は強いが物を作る文化が無く、他者から略奪することによって生きながらえておる』


 一息入れ、気付いたように話を続ける。


『そうそう、狼を飼い馴らして馬の様に乗り回す者も居たな。外で活動してる時は注意が必要だ。また、若干種族は違うがホブゴブリンが護衛をしていることもあるな。こいつらはゴブリンより一回り体が大きくて強い。油断しないように』


 狼の乗り手ウルフライダーか、これは初耳だ。ホブゴブリンも要注意ね。


『ありがとうございます司祭様。とても為になりました』


『うむ。くれぐれも気をつけてな』



(さて、シャインの状況を私で置き換えてみよう。人間より小柄なゴブリンは…私たちで言うと中学生くらいで、人を襲うと言う事は不良? とすると遺跡は不良の溜まり場? 飼い馴らした狼は盗んだ原付バイクで、護衛のホブゴブリンは中卒で暇してるOBと言う所かしら。そんな連中を私が補導(退治)する…?)


 ふと気がついて、私は恐る恐る龍治に問う。


「ねえ龍治、これって一人でやる依頼じゃないんじゃないの…?」


「……あ!?」


 私はテーブルに突っ伏した。

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