エルフの姉妹達
「え~、次は経験点の発表です」
「「わ~~い♪」」
龍治の言葉に、二人して声を上げる。やっぱりこれが一番楽しみよね。
「まずシナリオクリアで1000点。宝物の分が一人当たり711点で、シャインは商人からの寄付の分で+10点。アリシアがハーピーの歌勝負に勝ったので+100点になります」
とすると(ポチポチ)
「シャインは1721点ね。それに【信仰心】が16で+10%されるから、1893点と!」
私が喜んでると、鏡子が気づいたように、
「龍っち、あたしも+していいの?」
と聞いてきた。どうなんだろう?
龍治はプレイヤーズガイドをパラパラと捲ってみた後、答える。
「えーと、アリシアは【吟遊詩人】の長所の【魅力】16はクリアしてるけど【魔術師】の長所の【知力】が14だから貰えないね」
「両方16なくちゃいけないの!? ちょっと厳しくない?」
驚く鏡子。何と言ったらいいものか…あ、そうか。
「鏡子、アリシアは現実で例えると、大学で教授になるのを目指しつつ、歌手としてメジャーデビューしようとしてるものなのよ。それがどんだけ大変なのか、分かるわよね?」
私の例えに、鏡子は納得したようで、
「うわ~~、それは大変だわ。リアルの知り合いで居たら「どっちかにしておけば?」って言っちゃいそう」
うん、私も言うと思う。
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経験点一覧
シャイン:1893+12(前回残り)=1905
アリシア:1811
ローデリック:1881+1292=3173(2000でレベルアップ)
カイヴァン:1711+1175=2886(2500でレベルアップ)
ディーン:1881+92=1973
以上のようになった。ローデリックとカイヴァンが目出度くレベルアップだ。さらに…
「2レベルになったから、カイヴァンは【知力】を15から16に伸ばすわ。これで次から10%ボーナスが貰えるわね」
これでちょっとはマシになるかな? まあ【魔術師】はどっちにしろ大変なんだけどね。
「えーと、基本経験点? に今のレベルをかけるの? じゃあ…【吟遊詩人】だと1800×2の3600点で【魔術師】だと2500×2だから…5000点もするの!? 全然足らないね…」
鏡子が現状を把握したようだ。
「一番上がり易い【盗賊】だと1200×2の2400点だから次で上がるけど、それやると長所に【敏捷性】の16が必要になるから、ボーナスが更に遠ざかって…しかも【魔術師】に【吟遊詩人】から【盗賊】になるって…夢破れたインテリアーティストが、夜の街に消えていったって感じ!? そんなのやだぁぁぁぁぁ!」
現状を通り越して、変な未来を想像して頭を抱える鏡子。結構想像力豊かね。
「まあまあ鏡子。別に無理してレベル上げなくてもいいじゃない。エルフなんだからゆっくり行きましょ?」
「う~~ありがと、マキ」
「それに、その胸だったら夜の街でも大人気よ、きっと♪」
「龍っち~~マキがいじめる~~!」
おっと、つい本音が出てしまったわね。失敬失敬(ゲス顔)
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「(カキカキ)ふぅ、これで全部ね」
二人分のレベルアップ作業を終えて、一息つく。ちょっと面倒だけど、キャラが強くなっていくと思うと苦にならないわね。
「マキ終わり? 次は何すんの?」
ルールブックのアイテム一覧を見ていた鏡子が、顔を上げて聞いてくる。
「そうねぇ、前はシャインの日常を考えたから、今回はアリシアのを考えようと思ったけど。収入があったから買い物でもいいわね。どうする?」
逆に聞き返す。正直、どっちも楽しいわよね。
「日常と買い物かぁ…う~~ん、どっちも、じゃダメ?」
おおぅ、そう来たか。
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…鐘の音が聞こえる。人の街で一日の始まりを示す合図だ。里には無かったから、まだちょっと慣れないな。
隣で寝ているお姉ちゃんを起こさないように、そっとベッドを出る。お姉ちゃんは夜遅くまで魔術の研究をしているから、基本夜型だ。起きてくるのは、お日様がもう少し斜めに昇る頃かな。
隣の部屋で身嗜みを整え、下に降りる。四階は、言ってしまえば物置。魔術関係だけど、それほど価値も危険も無い物が積まれてる。お姉ちゃんの気が向けば、そのうち片付けるんじゃないかな(エルフ的時間感覚)
そのまま降りて三階へ、ドアにノックをして声をかける。
『カイ君、起きてる?』
『ええ、今しがた。おはようございます、アリシア殿』
そう言ってカイ君が出てくる。む~、殿はいいって言ったのに。
『そう言われましても、師匠の実の妹君にして姉弟子とも言える方に、失礼はできません』
『でも魔術の腕ならもうカイ君の方が上じゃない? そろそろ第二位階が使えそうだってお姉ちゃんから聞いたけど』
あたしにはまだ使えない。もうちょっと気入れて勉強しないとかな?
『はぁ、それは自分でも思いますが、まだ呪文も動作も欠かせません。一人前には程遠いかと』
カイ君的にはまだまだな様だ。でも…
『【呪文動作省略】は、ちゃんとやってればすぐだよ。20年くらい?』
『私、まだ19歳なんですけど…』
そうだ、カイ君は人間だった。背丈はしっかりしてるから、つい150歳くらいに思っちゃうんだよね。
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カイ君を連れて二階に降りる、おっとその前に…
『ルフラ』
合言葉を唱え、階段の途中にあるドアを開ける。このドアは【ウィザード・ロック】が掛けられていて、合言葉を知らないと開ける事が出来ない。知っているのはお姉ちゃんとあたし、そして正式に【魔術師】と認められて、三階に部屋を持ってるカイ君だけだ。あ、シャインも知ってるかも? まあシャインが言い触らすとは思えないけどね。
二階は教室兼ホール兼…まあ色々兼ねた広間ってところ。通いで来る生徒達が、昼から夕方までここで色々な事を学んでいく。
生徒たちの身分は様々。商人の子供も居れば、農民や兵士、役人の子もいる。共通しているのは、上に“裕福な”という言葉が付くところ。
あたしには良く分からないけど、超一流の魔術師であるお姉ちゃんの所で学ぶと“箔”っていうのが付くんだって。どこで学んだかじゃなくて、学んだことで何をしたかが重要だと思うんだけどな。
だから全員が【魔術師】を目指してるわけじゃないよ。むしろカイ君みたいに【魔術師】になろうっていう方が珍しいかな?
まあ授業は昼からだから、まだ誰もいないんだけどね。お姉ちゃんの気分次第で自習になっちゃう時もあるんだけど、そんなんで箔って付くのかな?
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一階に降りると良い匂いがしてきた。匂いの出処である厨房を覗くと、気配を察したのか料理人の女性がこっちを向いて挨拶してくる。
『おはようございます。朝食はもう少しお待ちください』
笑顔で返事を返し、その場を後にする。里には悪いけど、食生活に関しては人間の方が上だ。良く言えば素材の味を活かす、悪く言えば手抜きのエルフに比べ、食に対する人間達の執念は凄い。様々な調味料と『そんな物まで食べるの?』と言いたくなってしまう程の食材に対する探究心。完敗って感じ?
あと物流って言うのも影響あるかな? ほぼ自給自足の私達に比べ、何百マイルも離れた場所から、利益を求めて物を売り買いしに来る商人達。この差は大きいかも。
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朝食を楽しみにしつつ一階を見回ると、掃除中のメイドさん達からもそれぞれ挨拶を受ける。彼女達には一階と二階の掃除と、それが終われば外来の受付にまわってもらう流れ。
そのままちょっと外に出て、敷地内の衛兵さん達の詰所にも顔を出す。ちょうど夜勤から昼勤務の人達に代わるところだったから、ご苦労さまって声をかけておこう。
え? 魔術師の塔らしくない? 荒野にぽつんと建ってる塔ならそうだけど、お姉ちゃんはログちゃ…じゃなくて領主様付の【魔術師】だからね。必要な人員は全部公費で雇ってるんだって。ここら辺も『自分の事は自分でやれ』っていう里とは違うよね。ずっと研究してたいお姉ちゃんが、中々里に顔を出さない理由が分かったよ。
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『アリシア殿、今日はどう過ごされます?』
朝食の食べ終わり際に、カイ君が聞いてきた。そうだなぁ…
『お姉ちゃんにお金も返したし、買い物でも行こっかな? カイ君はどうすんの?』
『部屋で勉強…と言いたいところですが、師匠次第ですね。気が乗らないのであれば、代わりに授業をしようかと』
おおぅ、さすが一番弟子。お姉ちゃんの事がよくわかってる。
『ありがとね。あたしに出来ることがあったら言ってね?』
と言うと、カイ君は少し苦い表情で答えた。
『お気遣いなく。……慣れてますから』
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『買い物行こっ♪』
『……だから無駄遣いは良くないと』
あたしの言葉にシャインが言い淀む。ふふ~ん、もう分かってるもんね♪
『靴とかバッグとか色々見たいんだよねぇ『冒険の為に』『しっかりとした物を』いくつか買っておいた方がいいかな~って♪』
『…分かりました、行きましょう』
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『じゃあ、また明日ね~♪』
とぼとぼ帰るシャインの背に声をかける。買い物中はあれだけ楽しそうにしてたのにね。ちょっと多かったから、チップを弾んで配送にしてもらったけど♪
『さて、と』
一度塔に帰って準備しなくちゃね。
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『~~~♪』
酒場の喧騒の中、あたしの歌声がリュートに乗って響く。時は夕食時、日々の営みを終えた人達が、癒しを求めて集まる場だ。
歌の内容は先日の冒険譚。ハーピー一族との和解の顛末を、少し脚色して歌い上げる。
実はこれ、領主様から頼まれた仕事なの。いくら周知しても、一般人にハーピーを受け入れろってのは大変だろうからね。
『人』とハーピー、二つの種族の為に歌う。ハーピーの気高さ、美しさ、そして恐ろしさ……あ、モフモフさも入れておこうっと。
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『エルフの嬢ちゃん、今のは本当なのかい?』
歌を聞いた中年の男性が、訝しげに聞いてくる。すると、あたしが答えるよりも早く、
『いや、マジマジ。俺実際に見て話したし、結構いい奴らだぜ?』
助け舟が入ったと思ったらディー君だった。多分盗賊ギルドも噂を広めるために協力してるんだろうね。
『しかも皆いい体してんだよ、機会があったら『お願い』したいもんだ』
それを聞いた男達がはやし立てる。…あとでシャインに言っておこ。
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『お姉ちゃん、ただいま~』
『……お帰り~』
お姉ちゃんが本を読みながら返事する。ちゃんとご飯食べたのかな?
『お姉ちゃん、ご飯食べた?』
『………うん』
食べてないな(確信)
読んでる本を取り上げて、声を大きめにしてお説教する。
『コックさんが困るでしょ!? さっさと下に行って食べる! コックさんここまで来れないんだから!』
『合言葉教えちゃえば…』
『何のための【ウィザード・ロック】なの!? 誰彼構わず教えちゃダメでしょ!』
これは、しばらく里に帰れないかな?
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「こんな感じでどうかな?」
「いいんじゃない? …ルシアがどんどんダメな大人になっているけど」
まあ、学者ってこういう人多そうだし、いいわよね?(偏見)
「へへ~、でもこうやって日常考えるのって楽しいね。なんか世界が広がってくって感じで」
うん、分かる分かる。
「そうだ、鏡子ちゃん。2d10を振って?」
龍治が追加ルールを見て言う。何の判定かしら?
「うん、(コロコロ)えっと8と8で16だよ?」
「じゃあ【吟遊詩人】の1レベルに【魅力】修正値の+3を足して4、それに16をかけて64。という訳で、今回のアリシアの歌の報酬は銀貨64枚です」
「え、銀貨って一枚1000円だよね? じゃあ一曲歌って64000円? すごい、あたし! 流しの歌手でやっていける!?」
今時流しの歌手なんて居るんだろうか? まあ、それはともかく、
「凄いって言うか便利ね。私も【吟遊詩人】取ろうかしら」
シャインも【魅力】高いし、いけるわよね?
「ふふ~ん、レベル上がったら【魅力】上げよっかな♪ …あれ? そうすると【知力】が上がらないから、ボーナスがいつまでも貰えないことに… う~~、龍っち!? なんでこういうことすんの!?」
「え、僕なにかした?」
…龍治、女の子ってのは複雑なのよ。




