館はどんな感じ?
「という訳で、ハーピー達の驚異は未然に防がれる事になりました。お疲れ様」
「「お疲れ様~」」
龍治の〆の言葉に、疲れた声で返す私と鏡子。
「あ~…本当によかった~【チャーム】の呪文取っておいて」
鏡子が改めてテーブルに突っ伏す。…でも本当よね。無かったらどうなってたのかしら?
「龍治、シナリオ失敗してたら、その後どう処理する気だったの?」
一応聞いてみる。まあ、そこまで酷いことは…
「失敗の時? えーと、報告を聞いた領主パーティが、魔法やアイテムで精神防御を整えて突撃して、奴隷になってた人達諸共ハーピーを皆殺しかな? 1レベルの兵隊は邪魔にしかならないから連れていけないし、少数で多数を相手にするのに、奴隷に一々気を使ってられないしね」
「ひいいいいい!?」
突っ伏してた鏡子が、頭を抱えて悲鳴を上げる。…そうだった。こういう時、龍治は一切容赦しない奴だった。
「冒険者たちが再び訪れたとき、館の中は一変していた。床、階段、小部屋、いたる所にハーピー達の死骸が転がっている。そのどれもが人間に対する憎悪の表情を浮かべ、苦しみながら事切れたようだ。その中に紛れて、人間の男性四人分の死体も転がっている。ああ!? 窓から逃がそうとしたのだろうか、窓際に幼子を守るように抱えたハーピーの死体が…」
「いやああああ!?」
頭を抱えていた鏡子が、泣きそうになってる。こいつは本当に…
「はいはい、ストップ、ストップ! 大丈夫よ鏡子、私たち成功したから! 誰も死んでないから!」
語る龍治を止め、半べそになってる鏡子をフォローする。なんでシナリオ終わったのに私が苦労してるのよ…
・
・
・
「あ、もうこんな時間。鏡子どうする? 明日もゲームする?」
時計を見たら、もう5時近い。立ち直った鏡子に話を振ると、
「いいけど、明日もシナリオやるの?」
と、問われたので龍治に視線を向ける。
「いや、そんなにすぐにはシナリオ作れないから、今回の後処理かな? 前回は街の設定や、シャインの日常を二人で考えたりもしたけど」
「へ~、そうやって色々作っていくんだ。うん、いいよ? 何時に来ればいい?」
私はちょっと考えて答える。
「お昼過ぎかしら? 私と龍治は一緒に宿題も片付けちゃうから、もっと早いけど。鏡子も一緒にする?」
と聞くと、鏡子は「う~ん」と考え、
「それだと、お昼もお世話になっちゃうから、あたしは遠慮しとく。一時くらいに来るね?」
なるほど。そういう気の使い方も…
「二人の時間も邪魔したくないしね~♪」
「何の話よ!」
そういう関係ではない。龍治を見ると腕を組んで首をかしげてる。…それはそれで失礼な気がするわね。
・
・
・
「今回の冒険の報酬は、銀貨70枚です」
「「…はい?」」
思わず聞き返す私と鏡子。
翌日の日曜日午後一時、まずは報酬の確認からと龍治が続けた言葉は、耳を疑うものだった。
「えっと、ルシアお姉ちゃんに借りたのは100枚だっけ? 返すにはまだ足りないな~」
鏡子がため息交じりに言う。色々勘違いしている様だから、現実を突きつけてあげよう。
「鏡子、全部で銀貨70枚だから、五人で割るのよ? だから一人当たり銀貨14枚ね。ちなみにあんたがルシアから借りた金は“金貨100枚”だからね? 銀貨に直すと1000枚ね」
「……はい?」
鏡子の顔から血の気が引いていく。状況が理解できたようね、よかったよかった…って、そんなこと言ってる場合じゃない!
「ちょっと龍治、何でそんなに少ないのよ! 私達ハーピー一族から街を救った英雄なんじゃないの!?」
「え、でも報酬として提示されてたのは、依頼人の旦那さんの捜索分だけだったし。ダンジョンと考えてた館もハーピーの物になっちゃったから、探索もしなかったし…」
ぐ…そ、それはそうだけど、
「何かないの? 改めて領主から報酬が出るとか…」
「う~ん、料理人の派遣やハーピーの衣服代は領主の持ち出しだから、難しいかなぁ」
私と龍治の交渉を聞いてた鏡子が、ポンと手を打つ。何か思いついた?
「ねえ龍っち、結局この館はハーピーが攻略したってことだよね?」
「うん。まあ何人か犠牲が出たかもしれないけど、ハーピー的には特に気にしてないってことで」
勇ましいと言うか、ドライと言うか。
「じゃあ、館に元々あった宝物はどうしてるの? ハーピー達だけじゃ使い道無いよね?」
と言われると、龍治はハッと気がついたように、
「あ、そうだね。光り物は好きそうだけど、お金とかは使いようが無いね。貨幣概念とかも無いんじゃないかな?」
む、お金は有るけど使い方が分からない? 付け入る隙ありと見た!
「じゃあ龍治、私達がその宝を管理するって、どう? ほら、人間とハーピーの間を取り持つ役目だし」
そう言うと、龍治はちょっと考えてから頷いた。
「うん。ハーピーもシャイン達を信用してるし、それでいいかな。じゃあ、館にあった宝を纏めるから、ちょっと待ってね」
よしよし。あ、それならついでに…
「龍治、館はもうダンジョンとしては使わないのよね? どんな造りだったのか見ても良い?」
と私が言うと、鏡子も楽しそうに、
「あ、面白そう! 龍っち、見て良い?」
と乗ってきた。すると龍治は困った様な満更でもない様な顔で、
「…了解。今回のダンジョンはこんな感じでした」
そう言って、一枚の方眼紙と数枚のルーズリーフをこっちに広げて見せた。
さてさて、今回はどんなダンジョンだったのかしら。




