ハーピーは何人?
「平均」という言葉がある。多くの日本人は、この単語を見たときに次のように連想する。
「普通ってことよね」
「これ以下だと恥ずかしい?」
「出来て当然よ。出来ない奴は努力不足ね」
確かにそういう一面もあるかもしれない。だがちょっと待って欲しい。
学校でテストがあったとする。それはとても難しく作られていて、五人のうち四人が20点だった。だが残る一人はこの科目が大好きで、先生に授業中のミスを逆に指摘するくらい得意だったの。当然テストは100点。すると、この場合の「平均」は…
(20点×4人+100点×1人)÷5人=36点
ということになる。20点だった四人は「平均」の約半分しか出来てないことになるわけだが、彼らに非があるだろうか?
四人とも別に手を抜いたわけじゃない。予習をし、授業を受け、復習もした。ただ、それじゃ全然足りないくらい問題が難しく、四六時中その科目の事を考えていないと出来ないレベルだったというだけ。
要するに、何が言いたいかというと
「普通ってのは平均値のことじゃないの! 確かに、この一覧はAからGまで載ってるけど、だからって真ん中のDが普通ってわけじゃないのよ! Gより大きい人もほんのちょっと居るだろうし、Aの下にはAAやAAAだって沢山居るはずなの! いい? 普通を示すのは「最頻値」っていう最も頻度の多い所のこと! それが分かってないと異世界転生したときに「能力値は平均で♪」とか言っちゃって大変なことになるんだからね!?」
「そ、そこまで気にして生きてなくちゃいけないの?」
愕然として問い返してくる龍治。…備えあれば憂いなしと言うではないか。
「…ものの例えよ。とりあえず龍治、普通はA。アーユーOK?」
「普通はA。アイムOK」
よろしい。
「普通はBからCじゃない? あたしは小六の時にDあったけど」
鏡子はうっさい。…龍治は想像するんじゃない!
・
・
・
『何か少し間が空いたが…改めて、かかってくるがいい!』
と言いつつ身構えるハーピー達。だが、
『お待ちなさい、その前に聞きたい事が有ります』
武器を降ろし『私』は問い掛ける。
『こうやって会話が出来て、その男の人も…まあ、直接危害は加えてないようですし』
少し目を逸らしつつ言う。だって裸なんだもの、しょうがないじゃない!
『貴方達の目的は何なのです? その内容によっては、戦う必要は無いかも知れません』
今のところお互いに恨みは無い、ならば交渉の余地があるのではないか?
『ふむ…ならば聞かせてやろう』
ハーピーは構えを解き、腕を組んで語り始める。…そうすると余計に目立つ、まずは服を着てほしい。男共に『視るな』とも言えないし…
『我が一族が求めるは安住の地。ここより南の地に住んでいた我らだが、翼竜や巨人族との争いが絶えなくてな。戦って追い払う事は出来るが、被害も大きい。ならばいっそ新天地を求めようと考えたのだ』
「なるほど。要は難民ってわけね」
確かに生活に一番大切なのは安全だ。いくら腕っ節が強くても、二十四時間常に戦えないし、戦いたくない。
「ふ~ん、それでこの館を新しい【棲みか】にしたんだ。あれ? でも三人で? 少なくない?」
鏡子が首を傾げる。
「それもそうね。一族って言うなら、普通十人くらいは…って、どうしたの龍治?」
龍治が口元に手を当て、ポツリと呟く。
「……【棲みか】?」
そう言った後、バッと赤のGMハンドブックを開き、なにやら調べ始める。
「マキ、龍っちは何してんの?」
「ん~…私も龍治もまだこのゲーム慣れてないのよ。とくにGMやる龍治は、知っておかなくちゃならないルールが多いでしょ? だから、たまにこうなるの。長くなる時もあるから、ついでに休憩でも…」
と、言い掛けた私の言葉を龍治が遮る。
「二人ともごめん! 僕すっごく間違えてた!」
・
・
・
『話は分かりました。ですが、とりあえずその男性を開放してくれませんか? 街でその方の帰りを待っている人がいるのです』
この誰にも知られていない館に、三人のハーピーが居ても問題は無いだろう。実害が無ければ、だが。
『そうはいかん、我らが繁栄するには他種族の男が必要なのだ。この男には、次世代の子らの父となってもらう!』
そう言い放ち、身構えるハーピー。すると『私』の隣で話を聞いていた(わよね?)ローデリックが、
『面白い。この“勇敢なる”ローデリックと戦う気か? たった一、二、…えーと』
『三だ、三』
後ろからカイヴァンが突っ込む。
『そう、たった三人で!』
改めて言う戦士。…見なかった事にしよう。
『フッ、我らが三人だといつ言った。皆の者、出てくるがいい!』
ハーピーがそう叫ぶと、このホールから見える全ての扉(10枚くらい?)が一斉に開き、それぞれからゾロゾロとハーピーが出てきて、異口同音に言った。
『『『何があったの、姉さん!』』』
………どういうこと?




