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休日は神官戦士!  作者: 森巨人
32/81

鏡子もやるって

「ん~~っ!」


 開放感から、両手を横に広げて伸びをする。金曜日のHR後って、他の曜日とは一味違うわよね。


 周囲に目を向けると、部活のある子は、それぞれ思い思いの表情を浮かべつつ教室を出ていく。見学は一通りしたけど、特に入りたいクラブってなかったのよね。活発なところは土日も潰されちゃうし。


 さて、帰りましょうか。今日は特に用事もない…


 (ぐにっ)


「マキ~、カラオケ行こ?」


「…まず私の頭に乗せた「これ」をどかしなさい、話はそれからよ」


「え~、だって置くのに丁度いいんだもん。ここまで合うのってなかなか無いよ?」


 しるか、とっととどかせ。


「ちぇ~」


 と言いつつ、一歩下がって私の頭から重量物をどかしたこの娘は御手洗みたらい 鏡子きょうこ。背がちょっと高めで、胸は更に大きい。FとかGとか…何て言うの、世界が違う?


 やりとりを見ていた男共がつぶやく。


「いいよな、女同士は」


「載せるより挟んで欲しい…」


「誰も居ない部屋で、加々美が泣くところまで読めた」


 うっさい、特に3人目。


「今月もうお小遣い無いからダーメ。…はぁ、いっそバイトしようかしら」


 うちの学校は、親と学校の許可を得ればアルバイトは自由だ。


「あ、それいい! 国道沿いのネットカフェでやってよ、そしてクーポン頂戴♪」


「……で、鏡子は私に何をしてくれるの?」


 ん~~と少し考えた鏡子の一言。


「ひやかし?」


「来んな!」



「えーと…何がどうしてこうなったのか、理由を聞きたいんだけど」


 明けて土曜日、私の部屋。テーブルの上にはサイコロやキャラクターシート、お菓子やジュースが置かれており、ドラゴン・ファンタジーをやる準備が整っている。


 そして、マスタースクリーン越しに聞いてくる龍治の向かいには、私と鏡子が座っていた。


「えっとね? 昨日鏡子が「じゃあマキって休日何すんの?」って聞いてきたから、ドラゴン・ファンタジーの事を話したのよ。そしたら…」


「面白そうだから、あたしもやる♪」


「…なるほど」


 話が早くて助かるわ…


「じゃあ改めて、御手洗さん? 峯崎 龍治です、よろしく」


「鏡子でいいよ~、峯崎 龍治…龍っちって呼んでいい?」


「あ、うん。まあ、別に…」


 龍治の戸惑い具合が半端ない、理系って予想外のトラブルに脆いわよね…



「何すればいいの? チュートスキップして、お試しガチャ? 外れたらリセマラ?」


「…ソシャゲじゃないから、ガチャもリセマラもないの。…そうねぇ、まずはキャラクター作成からね」


 そう言ってキャラクターシートを1枚渡す。


「ここの6種類の【能力値】をそれぞれサイコロを3個振って決めるの。次に、それを元にしてクラス…【職業】を選んで、それが自分の分身になるってわけ」


「サイコロで? 振り直しってあんの?」


 そういえば、どうだったかしら? 自分でやった覚えはないので、龍治に視線を向ける。


「えーと「長所が全くなかったり、あっても他が低すぎる時は振り直しを認めるべき」って書いてある。後は真輝ちゃんみたいに自分に似せるなら、サイコロ使わなくてもいいけど」


「ふーん、それでもいいんだ。【筋力】【知力】……ねぇ、マキのキャラの【魅力】っていくつ?」



 …………



「…19」


「ぷっ!? あはははははははははは!!」


「うっさ―――――――――い!!」


 お腹を抱えて笑う鏡子。おにょれ…


「何それ、だってサイコロ3個で19っておかしいじゃん。チートラノベ? 異世界転生でもしたの?」


 ぐぬぬぬ…


「レベル2になって【能力値】を1個上げてもいいってなったから、【魅力】を18から19にしたの! チートでも転生でもないから!」


「それでも最初18って、どうせ龍っちに泣き落しでもしたんでしょ? その場が想像出来るわ~」


 くっ…言い返せない。龍治を見ると乾いた苦笑いしてる。フォローしなさいよ!



「【筋力】…普通よりはあると思うけど、マキほどじゃないから…11でいいかな?」


「それくらいじゃない? でも鏡子って何か運動してたっけ? 部活には入ってないし」


 結局、鏡子も自分に合わせる事にした。やっぱりこっちの方が愛着わくわよね。


「ふふ~ん、歌は体力勝負な所が有るからね。しっかり食べてしっかり動く、じゃないと声が伸びないよ?」


「…なら軽音部にでも…って、うちには無かったか。何か音楽系の部活に入った方が良いんじゃない?」


「ん~…軽音が有れば入ってたかもね~。あ~でも気の合う子じゃないと嫌だしな~…そうだ! マキ、バンド組も!? 龍っちも一緒に!」


「うえぇ!? 僕も!?」


 むむむ、話が盛大にずれていく。ま、まあこういうのも会話型ゲームの良い所よね(ポジティブな逃避)



「【知力】か~、これもマキのが上だよね。あ、でも国語なら勝てるかも?」


「あと音楽もね。でも大した差は無いし、こっちは同じ12にしておく?」


 3人を比較すると、龍治が理数系、鏡子は文系に少し偏ってて、私は平均的と言う感じだ。


「そーする。偶数だと+がつくんでしょ? 何か得した気分」


「そこら辺感覚一緒ね。次は【信仰心】だけど、これは分かりやすく言うと意志の強さよ」


 説明すると、鏡子が首をかしげる。


「ん~? 逆じゃない? なんでもかんでも神様に頼るのって、意志が弱い気がするけど」


 むむ? そ、そう言われるとそんな気も…


「あ~…神様に頼るんじゃなくて、誓いを立てるって考えじゃないかな。それを守るために頑張るって感じで」


 龍治のフォローが入る。うんうん。そっちよ、そっち(ブレ気味)


「そっちか~。で、マキは16? あ~確かに、マキってそんな感じだよね」


「え? これ決めたの龍治だけど、鏡子もそんなふうに思うの?」


 自分では気づかないけど、他人からはそう見えるらしい。


「うん。他人には寛容だけど、自分の事は一度決めたらまっしぐらって感じ」


 向かいで龍治がウンウン頷く。そ、そうかしら…


「だから力が入りすぎって事が多いよね。家庭科実習なんてもっと気楽にやればいいのに、納得できないとドンドン色々付け足すから、原型なくなっちゃったり」


 向かいで龍治が力強くウンウン頷く。うっさ―――い!


「私のことはいいから! 結局鏡子はいくつにするの!?」


「ん~意志が弱いって気はないけど、マキほど物事こだわるって気もないから、これも12でいっかな」


 とりあえず決まり。…なんかこっちに飛び火したけど。



「【敏捷性】か~…こっちは自信無いな~」


 そういえば、鏡子の体力測定の結果は芳しくなかった気がする。


「数字は良くなかったわよね。やればもっと出来ると思うけど、何か理由あるの?」


 すると、鏡子は龍治にチラと視線を向けた後、少し言いづらそうに話す。


「ん~~…全力でやると、胸が揺れて痛いのよ。反復横跳びとか、もう最悪?」


 …そういう理由か。こら龍治、赤くなってんじゃないわよ。


「…ごめん、分かんない。あ、でもこのゲームは手先の器用さも兼ねてるのよ。それなら問題なくない?」


 答えて鏡子にフォローを流す。…別に話を早く切り上げたかった訳ではない。…本当よ?


「え? あ~、だからマキのキャラ9なんだ。足速いのに不思議だった」


 納得された。…深くは考えまい。


「そっか~、ならオッケーだよ。足の方は8くらいかもだけど、手の方は15くらい自信あるし。こういう場合ってどうすんの?」


「私は間を取って9にしたわ。だから、鏡子だと…11か12?」


「じゃあ、やっぱり12かな。…ん? でもマキ、マキの足と平均とって9ってやばくない? どんだけ手先ダメなのよ」


「うっさ―――い!」


 だから何で一々こっちに飛び火すんのよ!



「【耐久力】って、どれだけ健康かってことだよね。それならバッチリよ、あたし学校休んだことないし」


「風邪一つひかない、っていいわよね。どんな生活してんのよ」


 私も別に学校嫌いじゃないけど、鏡子は本当学校楽しそうに来てる。悩みがなさそうと言われるのが悩み、みたいな?


「別に~? ちゃんと食べてちゃんと動いて、お風呂入ってしっかり寝る。これだけだよ?」


 それで病気にならないなら、国中もっと健康な人で溢れてそうな…あ、社会人には不規則な生活の人も多いって聞くわね、そうもいかないか。


「何かあるとしたらカラオケかな? 月一でもお腹の底から声出して歌うとすっごくスッキリするよ、ホントお勧め?」


「ふーむ。一理ありそうだけど、お小遣い的にちょくちょくカラオケ行くのは大変なのよ。やっぱりバイトかなぁ」


「え、真輝ちゃんアルバイトするの?」


 聞いてた龍治が食いついてきた。


「それもありかなって話。やっぱり自由になるお金って魅力よねぇ」


 お父さんとか見てると、働くって大変なんだろうけど、得られるものもきっと多いと思う。


「するなら国道沿いのネットカフェでクーポンを…」


「鏡子と同じこと言ってんじゃないわよ! 欲しけりゃ自分でやんなさい!」


 どいつもこいつも…ちなみに【耐久力】は最高の18に決まった。あれだけ自信あるならいいでしょ。



「【魅力】…19…ぷぷっ♪」


「はいそこ、うっさい。…で、いくつにする?」


 投げやり気味に聞くと、鏡子は龍治に視線を送り、腕を組む。…というか腕に胸を載せる? おいまて…


「じゃあ龍っち、あたしの【魅力】っていくつかな?♪」


「じゅ、16?」


「こら―――――っ!」


 なんで私の時より全然高いのよ!?


「はっ!? 口が勝手に…?」


「ぷっ、あははははははは♪」


 呆然とした龍治と笑いまくる鏡子。おにょれ…(本日2回目)


「じゃあ、それでいいや。人の評価は素直に受けないとね~♪」


 ぐぬぬぬ…(こっちも2回目)


 結局、能力値はこんな感じ。…龍治は後で折檻ね!


筋力 :11(±0)

知力 :12(+1)

信仰心:12(+1)

敏捷性:12(+1)

耐久力:18(+4)

魅力 :16(+3)

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