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休日は神官戦士!  作者: 森巨人
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『私』の一日

 ふと時計に目を向ける。2時前か…まだ何か出来そうね。と言ってもシナリオが無いんじゃゲームは…あ、そうだ!


「ねぇ龍治、シャイン達の日常を考えてみない? シナリオのヒントになるかもしれないし」


 せっかく背景が出来たのだ、存分に使いこんであげたい。


「そうだね。じゃあ、まずはシャインの一日の流れからかな?」



 ガラ――――ン、ゴロ――――ンと鐘の音が聞こえる。日の出と共に鳴らされる鐘の音だ。音は大きく、聞き漏らす事は無い。それはそうだろう、なにせ『私』の住む神殿で鳴らしているのだから。これが聞こえないと言うなら、それは聴覚に異常が有ると言う事だ。


 顔を洗い、神官衣を纏い身支度を整える。…思えば、鐘を鳴らすのも、井戸で水を汲むのも、神官位に就く前の『私』の仕事だった。もちろん当番制で『私』だけの役目では無かったが、全くやらなくていいと言う事になると、ちょっと変な気分だ。世間ではこれを「出世」と言うんだろうか。


 朝の礼拝を行う為、礼拝堂に向かう。すると、既に二人ほど先に来ており、その内の一人が口を開く。


『おはよう、シャイン。疲れは取れたかい?』


『おはようございます、司祭様。えぇ、もう疲れは有りません』


 声を掛けてくれた「生死の境を越える者」光の神の大司祭にしてイーストエンドの神殿長でもあるオリバー様、に声を返す。何で「司祭様」なのかって? この神殿には他に司祭級以上の人が居ないし、オリバー様本人も堅苦しい肩書で呼ばれるのは嫌なんですって。他人に教える立場の人を皆「先生」って呼ぶのに近いかしら?


『あらあら、無理は禁物ですよ? 怪我はしてないと聞いたけれど、心配したんですからね?』


『ありがとうございます、シスターエレーナ。お言葉に甘えて今日はゆっくりしようと思います』


 もう一人はシスターのエレーナさん。二十代後半の柔らかい雰囲気を持つ女性で、司祭様をこの神殿の父とするなら、母に当たる人だ。…光の神は司祭の結婚を禁じていないんだから、とっととしてしまえ、とはよく思う。


 話していると、ぞろぞろと見習い達が礼拝堂に入ってくる。総勢二十名ほど、これがこの街「イーストエンド」にある光の神の神殿の全容である。そして、全員が揃ったのを確認して、司祭様が声を出す。


『では、今朝の礼拝を始めようか』



「じゃあ神殿の規模はこのくらいで、このシスターはどの程度にする?」


「どの程度って?」


「単なる一般人なのか、それとも神官の呪文が使えるのかってこと。見習い達は無理だとして、神官呪文が使えるなら、レベルも決めなくちゃいけないなって」


 ふむ…そういうことなら、


「う~ん、神官としてある程度実力が有ってもいい気もするけど、昨日言った「レベルが上がるのは、プレイヤーのキャラクターと特別なNPCだけ」って方に合わせましょ。だから、このシスターなら神官呪文は使えないけど、【応急手当】とかの特技を持ってる一般人ということで」


 初志貫徹…というか、やっぱり魔法を使える人は希少だと思うのよ。…別にシャインの立場を死守してるわけじゃないわよ?


「了解。じゃあ一般人だけど、特技とかで神殿の雑務を一手に引き受けてる人ってことで」


「そうそう。神殿の運営とか全員の食事作りとか…司祭様の秘書に当たるんじゃないかしら?」


 うん、キャラがイメージできた。司祭様のことを内心慕っていて、特別な能力は無いけど皆に優しく、少しおっとりとした雰囲気の女性…って、ん?


「…龍治、これって最初に私がイメージした神官っぽいんだけど」


「…あー。ほら、これじゃ冒険でられないし」


 くっ…何かを得るって、何かを失うってことなのね。(少し違う)



 礼拝を済ませ、朝食を取る。その後は聖典を使った神学の勉強だ。今までは司祭様かシスターが読み上げていたが、今日からは『私』も壇上で読んでいる。神官としての初仕事だ。…答えづらい質問をしてくる見習いには「神の試練です」と言っておけばいいだろう。(適当)


 昼の礼拝と昼食の後は、雑用の当番以外は夕方まで自由時間。と言っても好き勝手やっているわけではない。礼拝に来る人もいれば、怪我人や病人もちょくちょく運び込まれてくる。それらの応対や、将来正式な神官を目指すなら勉強や訓練は欠かせない。街の訓練所に行くのもいいし、神殿の中庭でこのように…


 ガンッガンッ、ゴッ、ヒュッ、ザザッ…


『ふぅ、この辺にしておこうか。やはり実戦を経験すると動きが違うな、シャイン』


『ありがとうございます。…まだまだ司祭様には及びませんが』


 と言って練習用の槌鉾を下ろす。冒険のおさらいとして一人で訓練していたら、手の空いた司祭様が相手してくださったのだ。余りないことなので、とても有り難い。


『はっはっはっ、それは年季が違うからな。といっても15才でここまで出来るのだ、すぐに儂なんぞ追い越すだろうよ。おっと、だが慢心はいかんぞ?』


『はい。もっともっと精進します』


 と言って微笑む。褒め過ぎかもしれないが、やはり認められるのは嬉しい。


 夕方の鐘が鳴り、やはり礼拝と夕食を済ませると、湯浴みをして、もう就寝だ。神官となって個室になった『私』は【ライト】が使えるから、やろうと思えば夜ふかしもできる。が、そこまでしてやることがない。本は高価で個人で所有する物じゃないし、皆寝てて大きな音を出す様なことも出来ないしね。あ、でも日記を書く事ならできるかな? 冒険で収入があったから明日にでも街に買いに…



「ごめん真輝ちゃん! 大事なこと忘れてた!」


 なになに!? せっかく綺麗に終わりそうだったのに!

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