第2ラウンド!
倒れ伏したホブゴブリンを見て『チッ』と舌打ちする奇妙なゴブリン。仲間が倒された怒りとかではなく、期待していた戦力が当てにならなかったという悔しさから来るものの様だ。
『お嬢、そのまま!』
ディーンの声が聞こえた次の瞬間、頭の上を何かが通り過ぎて行く感触がした。
『ギャッ!』
声がした方を見ると、奇妙なゴブリンの肩口に一本の矢が突き刺さっている。どうやらディーンが私越しに矢を放ったようだ。
「ダメージは6点! …でもいいの? 本来だったらシャインが遮蔽になって後ろのディーンは弓が使えないんじゃない?」
確かプレイヤーズガイドにはそう書いてあった…気がする。
「うん。でも奇妙なゴブリンはまだ祭壇の前で、ちょっと高い位置に居るからね。シャインもちっさいし、大丈夫大丈夫」
「ちっさい言うなー!」
身長147cmはそんなに小さくない…わよね? ええぃ、まだ伸びるはず!
やったか? と思ったが、奇妙なゴブリンは肩口に刺さった矢を引き抜いて、苛立たしげに絨毯に叩きつける。
『チッ。いい引きだったんだけどな、無駄に頑丈だぜ』
ディーンが毒づく。どうやら見かけより余程タフなようだ。気は抜けない!
「簡単にはやられないよ? なにせ3レベルモンスターだからね」
龍治が自慢げに言う。…って、おおぃ!
「なに威張って言ってるのよ! ていうか3レベル!? ちゃんとバランス取ってるの!? こっちは1レベルなんだからね!?」
「あ」
「あ、じゃなーい!!!」
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『ガルルル…』
狼の唸り声? しまった、厄介な敵を忘れてた! 右手を見ると、狼が槍を構えたゴブリンを乗せて、今にも突撃しようとするところだ。だけど視線は『私』に向いてない、右隣のローデリックに…!
『ローデリック、危ない!』
『私』の叫びとウルフライダーが突撃するのは、ほぼ同時だった。
「じゃあ振るよ? (コロコロ)7と6で13。ゴブリンのレベルが1で突撃は+2されるからAC16まで当たり。どう、当たった?」
「ぐっ…ピッタリ当たり…じゃない! 特技で【盾熟練】を取ってたから、さらに+1されてAC17! 大丈夫! セーフ! あ~良かった…」
ホッと胸をなで下ろす。
「あ~あ、せっかく一矢報いたと思ったのに…というか、両手武器のグレートソードを使いたがってるローデリックが【盾熟練】ておかしくない?」
ジト目でこっちを見てくる龍治。
「なによ? 屈強な戦士になるまでは、しっかりと守りを固めることにした、ってことでいいじゃない。ていうかキャラクターが無事だったんだから、喜びなさいよ!」
殺意が高すぎるのも、どうかと思う。
「いや、せっかく突撃でダメージ倍だから、サイコロ振りたかったなーって」
ダメージ倍…?
「龍治…一応聞いとくけど、もし当たってたらローデリックはどのくらい怪我してたの?」
「え?(コロコロ)4。倍にして8点だね。HPいくつだっけ?」
「7だって言ってるでしょ!? なんで適当に増援で出した敵が、こっちを即死させる攻撃力持ってるのよ!?」
「あれ?」
「あれ? じゃなーい!!!」
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第2ラウンド
シャイン :8
奇妙なゴブリン:8
ゴブリン×3 :7
カイヴァン :6
ローデリック :5
ディーン :5
ウルフライダー:1
続いて第2ラウンド。さて、どうしようかしら…とりあえず目の前に来たゴブリンか、ウルフライダーのどちらかを攻撃かな? と、考えてたら龍治が
「う~ん…ねぇ、真輝ちゃん。ちょっと変則的だけど、奇妙なゴブリンの行動を先に解決しちゃっていいかな? 多分影響が大きいと思うから」
「…いいけど、何するつもり?」
改まって聞かれると、嫌な予感しかしない。
「それは今から言うから。次のシャインの行動は、それを見てから決めていいよ」
何するつもりよ!?
ウルフライダーの突撃を、寸での所で捌き切ったローデリックを見て安堵していると、前方から奇妙な声が聞こえる。目を向けると、奇妙なゴブリンが踊りながら抑揚をつけた声で喋り出す。まるで誰かに訴えかけるような…これは呪文!?
「奇妙なゴブリンは、呪文を唱え終わる瞬間、杖をシャイン達の方に突き出す。すると空間の一点から闇が広がり出し、戦っている全員を包み込む。シャインには分かる、これは神官呪文の【ライト】の対に当たる【ダークネス】の呪文だ!」
『なんだ!?』
『これは【ダークネス】! 不味い、これでは…』
『クソっ、これじゃ狙えねぇ!』
仲間達の悲鳴が響く。この【ダークネス】は【ライト】の逆の効果をもたらす呪文で、一定範囲を闇に包みこむ。もちろん持続時間も同じで…というと6時間!? 早くどうにかしないと…!
「龍治…これって具体的にどうなるの?」
状況は想像出来たけど、ゲーム的な効果が良く分からない。
「えーと、暗闇で目が見えないシャイン達は攻撃や防御に-4のペナルティがつくけど、暗くても見えるゴブリンと嗅覚で判断する狼には影響なしだね」
「-4!? 2d10の振り合いでそんなに差が付いたら勝負にならないじゃない!」
「うん。だから影響が大きいって言ったんだよ。シャインはどうする?【ライト】で【ダークネス】を打ち消す?」
確かにシャインは【ライト】を使える。だけど…
「うっ…でも商人に【ヒーリングI】を使っちゃったから、今日はもうあと一回しか呪文使えないのよね?」
シャインはまだ、一日に2回しか1レベルの呪文を使えない。この後、怪我人が出るかもしれないと思うと…
「そうだね。あと、打ち消すにしても、呪文の対抗判定で勝てないと無駄になるね」
「対抗判定って、どうやるんだったっけ…」
ざっと読んだ気はするけど、細かく覚えてない。
「え~と(パラパラ)『お互いの神官レベル+【信仰心】修正値+2d10で比べる。モンスターはレベルをそのまま使う』って書いてあるから、この場合だとシャインが1+3で4。奇妙なゴブリンは3だね。で、【ダークネス】はもう使ってるから振っちゃおう(コロコロ)あ、高い。15が出たから18…シャインじゃ厳しいかな?」
18…4引いて14。2d10で14以上が出る確率は…30%くらい!?
「う~~どうしよう!【ライト】を使っても勝てる気がしないし、かと言ってこのままじゃ一方的に殴られるだけだし…」
サイコロを握ったけど、振れずにしばらく頭を抱える私。すると、それを見かねた龍治が
「う~ん、ちょっと厳しかったかな? せっかく手に入れてるんだし、ちょっと助け舟を出すね。…増援も出しちゃったから、埋め合わせってことで」
助け舟? 手に入れてるって、何の事?
闇に包まれ視界を遮られて、半ば恐慌状態に陥りながらも、様々な考えが頭を過ぎる。【ダークネス】を打ち消すべきか? そもそも打ち消せるのか? 撤退すべきか? でもこの暗闇で撤退できるのか? カイヴァンの【スリープ】を使えば…いえ、この状況ではこっちも寝てしまう!
答えの出ない問いに立ち竦んでいると、右手の先から声が聞こえてくる。それは優しく、だが力強く、そしてどことなく懐かしい感じの声で…
『我を掲げよ』
次の瞬間、掲げた右手から『それ』を手に入れた時の様な白い輝きが溢れ、邪悪な暗闇を打ち払った。




