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休日は神官戦士!  作者: 森巨人
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ゴブリンをどうする?

 見張りのゴブリン2匹を仕留めた後、『私』達は少し様子をうかがう。異変を感じた他のゴブリンが中から出てきたら、続けて片付けたいところだけど…




「入口の付近は静寂に包まれていて、中から何かが出てくる様子は今のところ無い。次はどうする?」


「むぅ、そう上手くはいかないか。…でも入ってすぐの部屋にゴブリンが2匹いるんでしょ?」


「プレイヤーの知識で語るのは…まあそのくらいは神託であったとしていいか、4度目だし…」


 忘れるものか。ローデリックとカイヴァンがこのダンジョンに挑んだ時に、表に居た2匹が騒いで奥からもう2匹出てきたのだ。そして2人は勇敢な戦いの末に…くっ、


「あれは勇敢じゃなくて無謀って言うと思うな」


 次にディーンで忍び込んだ時は、部屋の中で2匹のゴブリンが寝ていた。その脇を忍び足で通り抜き、奥にあった宝部屋からちょっと宝をくすねただけなのに、容赦の無いゴブリンに見つかって悲惨な目に…く~っ!


「硬貨2000枚近くって「ちょっと」っていうのかな…?」


 一々龍治がうっさいと思ったら、声に出してたらしい。キッと龍治を睨むとスッと視線を逸らされた、生意気な。


「じゃあ神託ということで皆に話すわ。何か意見のあるキャラ居る?」


「えーと、そう伝えるとね…」




『入ってすぐの部屋にゴブリンが2匹いるはずです。残念ながら私に与えられた神託はここまでですが…何か策の有る者はいますか?』


『突っ込む』


『忍び込む』


 誰の発言か説明は要るだろうか、『私』は要らないと思う。だからしない。


『マスター、光の神の神託、大変ありがたく存じます。そして策と言うほどではございませんが、隊列を決めておいた方がいいかと』


 流石『私』の従者にして魔術師、礼儀も頭脳もバッチリだ。…あとで他の二人にも叩き込もう。


『そうですね…ローデリック殿が前列右。罠を考慮してディーン殿が前列左。その後ろに戦闘状態になったら場所を入れ替えられるようにマスターが。そして後列右側に私と言う事でどうでしょう』


 ふむふむ。罠を警戒しつつ、戦闘になったら防御力のあるローデリックと『私』が前に出る、と。なかなか良いんじゃない?


『では、それで行きましょう。いいですね? 二人とも』


 それぞれ頷くのを見やり、いよいよ『私』達は遺跡に乗り込んでいく…




 ちょっと気になり、龍治に聞いてみる。


「言われるままOKしたけど、そもそもどんな通路なの? 幅とか高さとか、二人並んで戦えるくらいあるの?」


 方眼紙を出して、ちょこちょこと記入していた龍治が答える。


「うん、説明するね。床は石畳で横幅は3mくらい、天井はアーチ状になってて一番高いところはやっぱり3mくらい。通路の壁も石で組まれていて、所々に松明を設置する為の台があるけど今は何も置かれていない」


 横幅3mね。この部屋が四畳半で、畳は縦横が180cmの90cmだっけ? とすると一辺が270cmだから、この部屋よりちょっと広いのか。うん、それなら二人が横に並んでも十分戦えそうね。


「ルールでは縦横1.5mを1マスとして、人間サイズのキャラクターは1マスに一人で居る状態なら不自由なく行動できるって書いてあるね」


「う~ん、両手武器って長い物だと2mくらいあるのよね? 振り回すことも考えると、こういうダンジョンじゃ使えないんじゃない? 両手武器の利点ってなんなのかしら?」


 アニメとかではぶんぶん振り回してるのに、現実(?)とのギャップがすごい。


「見た目と威力と…あと射程というか、間合いかな? 大型の両手武器は2マス先の敵にも攻撃できるね」


 そっか、長いから少し離れた敵にも届くんだ。…ん? それに技能の【なぎ払い】を組み合わせれば…おお、強そうじゃない。


「なるほど、広いところでは十分いけそうね。ローデリックの成長が楽しみかも♪」


「成長できるといいね…」




 ゴブリン2匹はすぐに見つかった、こいつらも近くの柱にもたれかかって寝ていたのだ。見張る気はあるんだろうか? 敵ながら心配してしまう。




「規則正しい寝息を立てていて、起きる気配はない。どうする? このまま片付ける?」


 龍治はなんて事ないように聞いてくるが、ちょっと疑問に思ってしまった。片付ける、ねぇ…


「う~ん…よく考えたら、ゴブリンってそんな『目と目が合ったら殺し合う♪』みたいな関係でいいの? 悪さをするって言うけど、具体的にはどんな悪さなの?」


 外の見張りを倒す時は気にならなかったが、こう無防備な状態を見せられると「殺す必要はないんじゃないかな?」って考えが出てきてしまう。


「ゴブリンの悪さ? えーと、農家の家畜をさらったり物を盗んだり…」


 ふむふむ、そのくらいなら殺さなくても…


「小さな子供をさらって奴隷にしたり…」


 …ん?


「大人の男性が捕まったら拷問や射的の的、女性はもちろん×××や○○○をされて…」


 ちょっとちょっと!?


「そして数が増え、もはや少し奪うくらいでは足りなくなる。その繁殖力に物を言わせたゴブリンは、数百から数千の軍勢となり近隣の人間の集落に襲いかかるだろう! その時人間は後悔するのだ『ああ、もっと少ないうちに退治しておけば…』と。でも、もう遅い。1匹ずつなら子供並でも、奪うという一つの意思に統率された数千の飢えたゴブリンを、最早止めるすべは…」


「ストップ! ストップ! ストーップ!!」


 興が乗って語る龍治を、全身全霊で止める。


「ほ、本当にそうなるの!? ここのゴブリンを退治しなかったら、近くに住む人間は全員やられちゃうわけ!?」


 慌てて聞くと、龍治はキョトンとした表情でこちらを見返して言う。


「え? だって自分達で生産的な事を全くしない、それでいて繁殖力だけは旺盛な種族が野放しにされれば、遅かれ早かれそうなると思うけど。何か間違ってるかな?」


「ぐっ…」


 返す言葉もない。…どうやら私が甘かったようだ。不良中学生どころか、害虫並みの速度で増える反社会勢力だったらしい。


「どうする? まあゲームだし、あまり深く考えなくてもいいと思うけど」


 …どうする? 私は、そしてシャインは…




『どうします? マスター。殺すか、それとも縛って脇に退けておきますか?』


 従者の問いに、『私』は少し間を開けてから答える。


『…私達は彼らを「退治」しにきたのです。和解でも共存でもありません。そして、私たち人間とゴブリン達に差があるとしたら、それは理性と想像力の有無でしょう』


 一息置いて、『私』は決断する。


『殺します。ゴブリンの様に楽しみとしてではなく、それが必要であるから。そして余計な苦しみを味わわなくて済むよう、せめてひと思いに…』


 覚悟を決め、ゴブリンの片方に槌鉾を振りかざす。神よ、この者たちに安らぎを…




「その時、戦士と盗賊が示し合わせたように動いた。そして戦士はジャベリンで、盗賊はショートソードでゴブリンの喉を突き刺す」


「え?」




『お嬢、難しく考えすぎっすよ』


『主よ、我は貴女の剣となると誓った。それをお忘れか?』


『二人とも…』


 そうだった。…色々足りないかもしれないけど、この二人も『私』を案じてくれているのだ。


『気が済まないってんなら、全部終わった後に祈ってやってくださいや。お嬢の祈りはこいつらには勿体無いと思いやすけどね』


 ディーンの照れくさそうな笑顔が、『私』をとても楽にしてくれた。




 龍治が「全部わかってる」とでも言いたげなニコニコ顔でこっちを見てる。すっごくムカつくけど、私から出た言葉は


「ふ、ふんっ! まあまあ良い処理じゃない?」


 という、どう贔屓目に聞いても文句とは言えない言葉であった。

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