表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/116

(8)カレーは娯楽です

さて、と。

お風呂が終わって自由時間。

昨日で宿題も終わってるし、将来プランについて考え直さなきゃいけないわね。



色々考えたんだけど、やっぱり私はつぐみと親友をやめるのは無理みたい。

あの笑顔も、優しくてあったかい声も、そしてお母さんの栗大福も大好きなの。

言っておくけど、そう決めたのは別に栗大福だけじゃないからね?


私の人生は自分でどうにかするけど、つぐみの人生は前途多難よ。


ゲームの開始直後のつぐみのお家はありふれた普通の家庭だったわ。

お父さんは広陵院でウチのお父様の秘書として働いてて、お母さんは広陵院の経営している病院の看護師さん。

だけど、高校編入後にお父さんもお母さんも会社をクビにされて、貧乏になっちゃうの。

ちなみに原因は江梨子のわがままよ。


そして学校でも、成績が良くて優等生だからって「庶民の癖に」っていじめられちゃうの。

ちなみに発端は江梨子のわがままよ。


だけどつぐみは、優しい心で、攻略キャラクターを始めとしたいろんな子の心を癒していくの。

攻略キャラクター達は少しずつつぐみに心を開いていくんだけど――

だけど、わずかな希望を見つけたつぐみに追い打ちをかける、江介の裏切り!

ちなみに発端は――もう、分かるわよね。



考えたんだけど――


「つぐみって、私が関わらなければ幸せに過ごせるんじゃないかしら」


ううっ。

私は思いっきり肩を落とす。

神様、私、一生さつまいものお味噌汁を我慢しても構わないです。だから、つぐみを私から守ってくれませんか。


考えて悲しくなってきたわ。


「でも、今世の現実ってゲームと全然違うわよね」


そうそう。ゲームでは江梨子と江介、そしてつぐみが「大親友の誓い」をするシーンなんて無かったもの。

それに栗大福の件だって、ゲームなら率先して江梨子がつぐみをいじめ倒しそうなものじゃない。

でも、実際は別の女の子達がつぐみにいじわるな事を言ってて――



きっと、仮に江梨子がつぐみをいじめないとしても、つぐみは「庶民」というだけで差別の対象になりかねないのよね。

極端な話、例え子供だろうと、お金持ちは「庶民」は顔を上げて笑う事すら許そうとしない。いえ、子供だからこそ、純粋に「排除」したがるのよね――。何て酷い話かしら。

それに、お金持ちの中でもかなり「特別」の部類に入る「広陵院」の双子に気に入られた事が周囲に漏れたら――

きっと、嫉妬の対象になってしまうに違いないわ。

それも、嫉妬を受けるのは、お金持ちの人からだけじゃない。

貧乏の人も、「なんであの子だけ」ってつぐみを責めるかもしれない。


別にうぬぼれなんかじゃない。

流石に前世を生きたんだから、それ位はなんとなく分かるわ。


やっぱり、私がつぐみを守らなくちゃ。

改めて決意した。




「要するに、強くなってつぐみを万全に守れるようになる事と、将来が乙女ゲームの展開と同じようになっても生き残れる手段を同時に達成すればいいのね」


そう言ってノートに書いた文字はこれ。

『強くなる』。

我ながら惚れぼれするほどにバカっぽい答えだけど、これが一番良い方法なだから仕方がないわ。


ゲームの江梨子は、つぐみの人生をあの手この手のワガママでメチャクチャにしようとするの。

全キャラを攻略しないと開放されない最終目標とのルートでは、つぐみの意中の人と婚約まで取り付けちゃうのよね。


だけど、家の財産を使ってまでつぐみを陥れた江梨子にはバチが当たる。

生徒会から断罪を受けて学校は退学。家は追放されて、誰からも嫌われてしまった江梨子には頼るアテもない。最終的にはボロボロの服を着て夜の裏路地で「お兄さん、私といい事しない?」って声を掛ける一枚絵が――。


そこで私は思わずぶるぶるっと寒気に震えた。

前世でもあのラストは衝撃だったわよ……。

でも、負けちゃダメ。

そうならないための方法なんて、いくらでもあるんだから!


とにかく、まずは一にもニにも強くなる事よ。

体も心も鍛えて鍛えて鍛えまくるの!


それで最終的には家を追い出される前に自らの意志で自立!

今のうちに親の財産を頼る癖はやめた方がいいわね。

仕事場はだらしない私でも暮らせるように、衣食住が保障されている所がいいわ。

それに性格上、デスクワークより体力仕事の方が良さそうね……。


そうなると、仕事なんて限られてくるわ。

そこで、私はふとひらめいた。


「あるじゃないの、衣食住がきっちり確保できてしかも公務員! それに週一でカレーまで保障されてる仕事が!!」


そう。一つだけ、衣食住とカレーの保障された仕事がある。

ちなみにカレーは「食」に含まれないわ。あれはインドの神様が下々の者に特別に許した娯楽なのよ。(※個人の妄想です)


話を戻して、本っ当に前世の知識があるって本当にチートね。



だって――自衛隊の船で働けば、私の望んだ条件が全部当てはまるじゃないの!



海上自衛隊は船の上で生活するから、金曜日はカレーって決まっているのよ。

なんてステキなの!!!!



もう安心ね。これ以上将来の心配はいらないわ。

こうなったら夢に向けてひたすら訓練よ!

訓練で強くなってつぐみを守りながら最終的に自立して海軍で夢のカレー生活!

うーん、もっと質素な生活を想定してたはずなのに――もう、我ながらうっとりするほどの理想的な未来ね。


それじゃあまずはランニングの目標を立てようかしら。


まだ子供だし、しばらくの間は無理な筋力トレーニングは控えましょ。

後はお母様にそれとなくお願いしてスポーツ教室通いを認めてもらえばいいわね。

ついでにつぐみやコースケも誘ってみようかしら。

一緒にスポーツしたら更に親睦も深まりそうじゃない。


さてと。今日はもう遅いし寝ちゃいましょう。

明日から学校だし。


って学校?!

私はベッドに横たわった直後にガバリと起き上がった。

そそそそ、そんな……。私ったら、そんな大事なことを忘れたなんて!


「給食、どんなメニューかしら!」


もちろん一番の心配事はこれよね!

え、他にあるって? 

あれ、何だったかしら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ