ソ連女子戦車隊~ハリコフ1950~
この作品は「2012年度戦車祭り」参加作品です。遅れてすみませんm(-_-)m(土下座)
出来れば感想に関してはお手柔らかにお願いします。
ゆっくりと空が白み初め、地上には朝靄が立ち込めている。
「もう何年、戦っているのだろう・・・・・・」
そう言いながら外を窺っていた。その一言は戦車の中に居る全員、イヤ、部隊の全員が思っている事だった。
1943年7月のクルスクの戦いはドイツ軍がクルスクの突破に成功。突出部分のソ連軍は突破され、ドイツ軍の勝利に終わった。
しかし、この勝利があって最早ドイツ軍には旧日の力は無かった。
モスクワ、レニングラード、スターリングラードに進行する事は無理に等しく、ましてやコーカサスを占領する事など夢のまた夢だ。
そして東部戦線は北極海から黒海まで続く長い戦線で両軍は睨み合い、血みどろの膠着戦を延々と続けていた。
そう思いながら外を覗く。狭い視界の中に広漠としたロシアの大地が広がっている。
見渡す限り一面に広がる向日葵畑、彼方に点在する丘陵と草原地帯、果てしなく広がる青い空。このまま戦争を忘れてピクニックでもしたい光景が広がっている。
だが、そんな牧歌的な光景の下には“死の罠”が息を潜めて牙を剥く瞬間を待っている。
あの風に揺れる草原の下には多数の地雷原とパック・フロントが点在し、その後方には砲兵部隊が隠蔽され、更にその後方には予備兵力が控えている。
そうボンヤリと考えているとドロドロと無数の砲声が轟いてきた。
天蓋上から身を乗り出すと、遠くに幾多の土煙と爆煙が立ち上っているのが見えた。刹那、無線機に軍団本部から通信が入る。
「ドイツ軍の攻撃が始まった!独立重戦車旅団“薔薇乙女”は敵の撃退せよ!」
すぐさま無線機 少女らしい澄んだ声で命令を下す。
「こちら旅団長より全車、聞いたわね!聞いての通りよ!これより楔形陣形を形成、進撃を開始する!」
次の瞬間、周囲から轟音が一斉に響き渡り始める。陣地に身を隠して伏せていた鋼鉄の猛獣達の咆哮だ。
続いて周囲の草花をキャタピラで薙ぎ倒しながら65両余りの戦車がディーゼルエンジンの音響を地響きのように響かせ、水平線に向けて進軍を開始した。
長大な砲身を振り翳し、幅広い履帯で大地を踏み締め、無数の砲弾が降り注ぎ、砲声と砲煙が轟き立ち昇る戦野へと進む。
「敵戦車集団を目視!距離は10000、数は大隊クラス!車種は・・・・・・ああッ、畜生!Eシリーズ、ティーガーⅤです!」
前方のパック・フロントから悲鳴のような無線を傍受した瞬間、すぐさま立ち上がり砲声轟く車外へと晒しながら命令を下す。
「全車、戦闘準備!高速徹甲弾を装填!」
そう命じながら双眼鏡で周囲を見回した。広漠とした草原のある1点から砂塵が撒き上がり徐々に近づいて来た。
「全車!聞いての通りよ。敵戦車集団が襲来した。私達はこれを撃退する!敵はティーガーⅤ、手強いよ!両翼に煙幕を展開!虎の目を潰して速射しつつ近接戦、敵に肉薄せよ!高速機動で相手を幻惑、アウトレンジを許すな!」
「「「「「了解!!!」」」」」
旅団長の言葉に無線や車内から少女達の応答の声が聞こえる。うん、士気は上々。これから積年の宿敵と戦うのだ。コレ位に落ち着いてくれた方が良い。
稜線霞む大地の彼方から50両もの戦車が急速に迫る。敵戦車群に怯えも見せず、砂塵を巻き上げて突撃する。砲身は小隊ごとに目標へと振り向けられいる。
「各車、各個に射撃開始!アゴーン!!」
轟音が幾つも連鎖し、爆発が後から続く。放たれた砲弾はティーガーⅤへと吸い込まれるように飛んでいき命中した。
しかしティーガーⅤの装甲を貫通するのには充分では無かった。
砲弾を食い止めて赤く光を発しさせた装甲を身に纏いながらお返しとばかりに砲弾が飛ばして来た。
流石、ドイツ軍と云う技量。発砲した砲弾は全弾スターリン5に命中した。しかしこちらもスターリンⅤの装甲を貫通するには充分では無かった。
放たれた砲弾はスターリン5の砲塔に直撃したもののオレンジ色の火花を飛び散らせ、明後日の方向に飛んで行った。
「突撃!突撃!突撃!全速で駆け抜けろ!」
全速力で敵に突き進む。いちいち敵を言う必要も無い。目に付いた戦車を片っ端から砲撃している。
「いいぞ!どんどん殺れ!」
前方にいるスターリン5が直撃を受けた。ガクリと行き足を止めて沈黙する。直後、戦車から乗員が脱出して行く。
「怯むな!射刺せぇぇぇ!」
砲塔内で叫びを上げる。スターリン5は10度目になる砲撃を放った。既にお互いの距離は2000mを切り1000mを迫りつつあった。
スターリン5はそのまま駆け抜けるように行進射を続けた。独裁者の名を冠した紅き猛獣の群れはエンジンから濛々と白煙を吐き出しながら猛烈なスピードで射撃しながら肉薄して行く。
一方でティーガーⅤも正確無比の砲撃をスターリン5の群れに与えていた。必中射程の距離を跳進射撃しながら保ちつつ、自分に砲弾を命中させた“腕の良い”戦車から仕留めていく。
「命中!」
「次、10時の方向、距離800、装填、急げ!」
自分が放った砲弾が命中したと同時に倍のお返しが飛んで来た。至近弾の破片が次々と車体に当たりイヤな音を立てている。
後ろにいた4号車の履帯に砲弾が直撃。履帯を破壊され、つんのめるように急停止した。直後、左右に展開している2号車、3号車にも立て続けに命中した。
「止まるな、もっと速く動け!」
操縦手にもっと速度を上げせさるよう命じていると、何処からか放たれた128mmの砲弾が砲塔に直撃した。しかし、乗員達は死ななかった。
撃たれた角度が浅かった為に砲塔に弾き返されたようだ。着弾の衝撃が車体全体を大きく揺らし、割れ鐘のような大反響と激しい残響の二重奏を奏でた。
キューポラに頭を強く打ちつけ、意識が朦朧としながらも素早く辺りを見回し攻撃を放った相手を見つけた。
“マズイ”と云う言葉が即浮かんだ。2射目を撃つ気だ!
「2時方向、砲塔旋回、急げ!」
「ッ、エンジン、止まりました!」
「手動旋回!砲塔回せ!もう1発来るぞ!」
動けない戦車は格好の的だ。手動で旋回させているが間に合わない!
私は背筋が凍った。無意識に目を閉じようしたら瞬間、ティーガーⅤが爆発した。
「何が起きた!?」
「味方です!味方機が来ました!」
「助かった~」
車内の誰かがそう呟いた。戦いは交戦から15分後に決着が付いた。
ドイツ空軍の垣根を食い破って襲来したイリューシン Il-40の編隊が戦場に巻き上がる多数の砲煙を発見して空襲。
これにより第10次ハリコフ戦車戦におけるドイツ軍の攻勢が一時停止した。
独立重戦車旅団は多数の戦車が撃破されて負傷者は山のように出た。
が、戦死者は奇跡的にゼロ。スターリン5の装甲と自動消火装置に命を助けられた。
今回は命を拾ったがこれからどうなるのだろうか?ノルマンディーに上陸した連合軍は撃退され、イタリアの防衛にも成功された。
だが、ドイツへの激しい空襲は続いている。日米は太平洋で死闘を繰り広げている。我々も負けていない。
しかしこの戦争の終わる日は何時なのか?私は真っ赤な夕日が戦場を照らす中で鋼鉄の猛獣達が骸を晒しているのを見つめて思った。
1949年8月の出来事。この1ヵ月後、ヒトラーが脳卒中、スターリンが心臓マヒで相次いで死亡。
後にドイツ連邦にハインドリッヒ、ロシア連邦にベリヤがそれぞれ首相に就任(両名が就任後に国名を改名)
両国は年内に停戦。他の連合国・枢軸国もこれ続き、1950年の新年を迎えた頃、十年に亘って続いた第二次世界大戦は終結した。
*この作品の部隊設定と世界設定。
・この世界は第二次大戦が1950年まで続いた世界。登場した両陣営の戦車スペック。
「IS-5重戦車」
重量68t、全長10.238m、全幅3.40m、全高2.50m、
最大速度60km/h、最大装甲厚250mm、乗員4名
武装:54口径130mm戦車砲(B-13 130mm艦砲)×1、12.7mm機関銃×2
「ケーニッヒス・ティーガーⅤ」
重量75t、全長10.65m、全幅3.80m、全高3.10m、
最大速度40km/h、最大装甲厚250mm、乗員4名
武装:口径55口径128 mm砲×1、7.92mm機関銃×2
独ソ両陣営が作り出した第二次世界大戦最強の戦車。両車共に自動装填装置、暗視装置、ジャイロ式砲身安定装置などを搭載している。
・「独立重戦車旅団“薔薇乙女”」
女性のみで編成された戦車部隊。ソ連軍には珍しく全員がベテランの戦車エース揃いの部隊。
隊長陣は水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雛苺、薔薇水晶、白薔薇のコールサインで呼ばれている。
プロパガンダにも良く取り上げられ、敵味方問わずファンが多い(ファンの中にはベ○ヤもいると云う噂)
彼女達が危機と聞けば一個軍集団が救出に掛かると言われている。
・「ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ」
ショタ好きで薔薇族な“残念イケメン紳士”特にユ○ヤ人の少年が好みだったらしい。
・「ラヴレンチー・パーヴロヴィチ・ベリヤ」
“YES、ロリータ!NO、タッチ!”と云う精神を持つ変態と云う名の紳士。彼が率いるNKVDは変態と云う名の紳士達の巣窟。
オラ○ダの腐女子女王やギリシアッー!のガ○ホモ兄貴国王、イギ○スの暗黒王などとも同志。
会議などで激論(趣味)を交わしこれが後にヨーロッパ連合、設立の礎となった。