村の落ちこぼれの私が実は無敵で最強だった
ミアは魔法都市ルーメンの片隅で暮らす少女だった。
魔法は使えず、スキルもなく、反応は遅く、運動は壊滅的。
魔法学校では落ちこぼれの象徴として名が通っていた。
詠唱は毎回途中で噛む。
魔法陣は踏んだ瞬間に壊す。
杖を振れば自分の頭に当てる。
訓練場では毎回転ぶ。
しかし、一度も怪我をしたことはなかった。
街の子どもたちは言った。
「ミアなんて誰も守れないよ」
「俺のお父さんはタンクでパーティーを守ってるんだ。お前と違ってな」
ミアは何も言い返せなかった。
事実だからだ。
自分は弱くて、非力で、誰も守れない。
そう思っていた。
その時だった。
空気が震え、地面が揺れ、街の中心に巨大な影が落ちた。
“深紅のバルガスト”。
魔王軍の四天獣の一角。
鋼鉄を溶かす体温、魔力を喰らう牙、王国の騎士団ですら討伐できなかった災厄。
悲鳴が街を満たした。
子どもたちが逃げ惑い、大人たちが叫び、建物が崩れた。
ミアは動けなかった。
それでも、目の前で泣き叫ぶ子どもたちを見た瞬間、胸の奥が熱くなった。
「……助けなきゃ」
ミアは走った。
小さな体を目いっぱい広げて、子どもたちの前に立った。
守れるはずがない。
非力で、魔法も使えず、落ちこぼれの自分が。
それでもミアは叫んだ。
「私が……みんなを守る……!」
灼熱の牙がミアの背に触れた瞬間──
空気が爆ぜた。
バルガストの巨体が弾かれ、石畳を砕きながら吹き飛んだ。
炎の奔流はミアの背で砕け散り、子どもたちに届かなかった。
ミアは無傷だった。
ただ、震えながら立っていた。
子どもたちは泣きながら叫んだ。
「ミアが……守ってくれた……!」
「ミアがいなかったら死んでた……!」
大人たちも理解できずに呟いた。
「どうして……あの魔物の攻撃を受けて無傷なんだ……?」
ミアはただ、息を震わせながら言った。
「……よかった……守れて……」
その日から、街では噂が広まった。
「最強魔物の攻撃を正面から受けて無傷の少女がいる」
「魔法も使えないのに子どもたちを守ったらしい」
「名もない少女が災厄を退けた」
その後、ミアは勇者パーティーの盾役として旅に加わり、
仲間の背を守り続け、魔王討伐の戦いを最後まで歩き切った。
この世界の誰も知ることはなかった。
ミア自身も知らなかった。
彼女の体は生まれてからずっと、とてつもなく薄い最強のバリアで保護されていたことを。




