旅立ち
魔喇の里。
次の日の早朝。
白生はリリンの部屋へ向かう。
「…ン!」
その頃リリンは夢の中にいた。
「リリン!?」
「…」
リリンは眠そうな顔で起き上がる。
そして白生に気づく。
「…白様!?」
眠そうな瞳が一気に冴える。
「おはよう」
白生がリリンに挨拶をする。
「おはようございます」
リリンは少し照れながら白生に挨拶をする。
それを見て白生は、微笑みながらリリンの頭を撫でる。
「朝早く起こしてゴメンね?」
リリンは首を横に降る。
「リリン?」
「…はい」
「私はこれから里を出るの…」
リリンは不思議そうな顔をして白生に聞く。
「白様どこかに行くの??」
白生は軽く頷き、話を続ける。
「ここにはしばらく帰れないかもしれない…」
「…」
「その間、リリンにはここにいて欲しいの」
「お留守番?」
白生は頷く。
「…」
リリンは寂しそうな顔をして俯く。
「だけどもし…」
「?」
「リリンが一緒に来たいと思ったら……
それでもいいと思ってる…」
リリンは目を大きくさせて顔を上げる。
「どうする?」
「リリン…白様と一緒に居てもいいの?」
白生は笑みを浮かばせ、リリンの頭を撫でながら頷いた。
「だけど絶対に安全な旅とは言えない…それでもいいのなら…」
白生は少し不安そうな顔でそう言う。
しかしリリンは、目を更に大きくさせて言う。
「行く!リリン白様と一緒に行く!!」
そんなリリンを見て白生は言う。
「なら、出かける準備をしなさい?
…一時間後には里を出るからね!?」
「…はい♪」
嬉しそうにリリンは返事をする。
それを見て白生は再び微笑み、部屋を出る。
陽の里。
「陽明様!」
男が一人駆け寄ってくる。
「どうした?」
陽明が男に聞く。
「白蛇のことです」
「白蛇?…噂では息を吹き替えしたそうだな?」
「はい」
「それで?…白蛇がどうした!?」
陽明が男に聞く。
「先ほど入りました情報によりますと、
どうやら響の里と手を組んだそうです」
「響里と!?」
「ええ」
「そうか…」
「陽明様?…」
陽明は男の方を見る。
「今の蛇の頭は誰だかわかるか?」
「噂によりますと若い娘とか…」
「若い娘!?」
陽明が男に聞き返すと男は頷く。
「どうやら…蛇夜の右腕だった、あの娘らしく…」
陽明はそっと微笑む。
「月夜美の姫か…」
男が頷く。
「陽明様…如何致しましょう?」
「放っておけ…」
「ぇ!?」
「好きにさせておやり?」
「しかし、あの娘は…蛇夜を随分慕っておりました…」
「…」
「いずれ再び、我らに牙を向く可能性が…」
「…その時はまた、何らかの方法で手を打てばいいだろ?」
「しかし…」
陽明は男の方を見る。
「私は見てみたいのだよ…」
不思議そうな顔をする男を見ながら、
陽明は再び笑みを浮かばせる。
「あの子がこれからどんな生きざま(里)を見せるのか…」
「…」
「我々はしばし、これからの蛇を見守ろうではないか」
「…わかりました」
男は陽明に深く礼をする。
魔喇の里。
門前。
「白様その子は?」
リリンが白生に聞く。
白生は笑みを浮かばせながら言う。
「名はキララ…私の大切な友(愛狐)だ」
そう言いながら白生はキララの頭を撫でる。
「この前の戦で大分無理をさせてしまってね…
今までずっと治療を行っていたの…」
「怪我したの?」
リリンが言うと白生はそっと頷き、
辛そうに言った。
「ホントに悪いことをした……」
「でももう大丈夫なんでしょ?」
リリンはニコニコしながら言った。
「…」
そんなリリンを見て白生はまた微笑み、頷いた。
「…リリンも仲良くしてやってくれる?」
白生がそう言うとリリンは元気良く頷いた。
そんなリリンの目線に腰を下ろし、キララをリリンに手渡す。
リリンは嬉しそうにキララを抱く。
白生はそんなリリンをみてまた微笑み頭を撫でた。
そして立ち上がり少し真面目な顔をする。
「白生さん…」
そんな白生を見て奏森が一言、呟いた。
白生もそんな彼女をみてそっと頷き言った。
「椿は?」
「彼や他の皆は復旧作業を行っております…見送りは私一人です」
「そうか…」
「…行かれるのですね」
奏森がそう言うと白生はまた頷いた。
「…お気をつけて」
奏森はそう言うと深く頭を下げた。
「奏森……後は頼む…」
白生は奏森にそう言い渡し里を後にした。