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籠の里

「白生様。これからどうしましょう?」

椿が白生に尋ねる。

「皆は、引き続き里の復旧作業を行ってほしい」

「わかりました」

「私は再び里外へ出る」

「また里外へ!?」

椿が少し驚いたように言う。

「…どこか行く宛てがあって?」

奏森が聞くと白生は軽く頷き、話を続ける。


(カゴ)の里に行こうと思う…」

「籠の里?…あそこは確か…」

白生は頷く。

「別名…孤児の里…」

「孤児の里!?」

椿が聞く。

「あそこは種族は関係なく、

親や里に捨てられた子を各国から引き取り、

預かり、育てていると聞きます」

奏森が答える。

「そんな里が…」

「まぁ、それも今では上辺だけみたいだけどね?」

「どういうことですか?」

「引き取り、育てると言えば聞こえがいいが、

実際は殆ど放置に過ぎない…」

白生が答える。

「それは、私も聞いたことがあります。

なので、あの里の孤児はもう数えるほどしかいないとか…」

「そうなんですか?」

椿が少し驚いたように言う。

奏森は頷き話を続ける。


「先代の真里亜マリアが生きていた頃は、

そんなことはなかったのですが…」

「真里亜?」

「数年前までは真里亜という一人の女性を中心に、

複数の娘で、その里を支えていた…」

「ええ。真里亜は里の皆に慕われていて、

良き領主だったと聞きます」

「元々『籠』という里の名も、子供の揺り籠を指しているらしい」

「揺り籠ですか」

椿がそう言うと、白生は頷き話を続けた。

「真里亜はホントに子供好きでね、当時その里にいた孤児に、

一人残らず愛を注いだと云う」

「故に母のいない孤児にとっては、夢のような場所だったそうです」

「それが、真里亜の死によって、

夢どころか、絶望の場所と変わってしまった」

「絶望?」

椿が不思議そうに言う。


白生が頷き答える。

「その里にとって真里亜の死はあまりに大きかったらしい」

「どういう意味ですか!?」

「つまり、それだけ、彼女の影響は大きかったのでしょう…

母を失い、その里にいた殆どの娘達は里を後にし、

残った娘達だけで今の里を支えているそうです」

奏森が答える。

「残った娘もホンの僅か…片手で数えるほどらしい…」

「そんなに少ないんですか?

…それじゃぁ、孤児に対して殆ど何もできないのでは…

だから、放置せざる、負えないのか…」

椿の言葉に対して白生は頷く。


そして、そんな白生に椿はまた聞き返す。

「しかし白生様…なぜまた、そのような里へ?」

「新しい種を育てようと思ってね」

「新しい種?」

「この里の子供はもう殆どいない…あの戦のせいでね」

「女、子供にも容赦なしの戦でしたからね」

椿が少し悔しそうにそう言う。

「だからどうしても若い命が、今後必要となる…

でないと、この里はいずれ崩壊する」

「なるほど…だから籠の里に…」

奏森が言うと白生はまた頷く。


そして椿が白生に聞く。

「いつ頃出発する予定で?」

「できるだけ早く…出来たら明日にでも…」

「明日ですか?それはまた急な…先日、

里外から帰ってきたばかりなのですよ?

それなのにまた…もう少し先では駄目なのですか!?

我々には貴女様が必要なのです!」

椿が動揺したように言う。

「…」

白生は黙る。そんな中、

「わかりました」

奏森が静かにそう答えた。

「奏森様!?」

椿は驚いたように奏森を見る。

「でわ、我々はその新芽の為に新たな教育の場を持たせましょう」

「奏森……アリガトウ」

白生は少し微笑み奏森にそっと礼を言う。

「いえ、礼など必要ありません。

私達はもうこの里の住人…里の為に動くのは当然のこと…」

「奏森様…」

椿は奏森をみて、何かを決心したように言う。

「そうですね…白生様?わかりました。

里のことは我々にお任せください。

…次に貴女様がこの地を訪れた時、

今よりももっと素晴らしい里になっていることを、お約束します」

そう言って椿は白生に深く頭を下げる。

「椿…忝い」

そう言い白生も椿に軽く頭を下げた。


「ところで白生様?」

「ン?」

「キララの方、

白生様が外出されている間、随分回復されましたよ?」

「それは本当か!?」

白生は嬉しそうに椿に聞き返す。

「ええ…ですから今度の旅には同行できますよ?」

「そうか…」

白生は笑みを見せながらそう返事をした。




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