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校長(まおう)の制約

兎にも角にも、奴という男の正体を見極めなければ……

ふと、ガリウスの目に 個人名簿が目に入る。

そして、 神林光のページを開いた。


「なんだ…これは……!」


「神林光君 放課後、校長室に来るように……」


ルナと結衣が心配そうに光を見る。


「……光よ。余は、ある重大な事実に気づいてしまった」

放課後の校長室。校長(魔王)は、光の直近の小テストの答案用紙を、汚物でも見るかのように指先でつまんでいた。

「……平均点。どこをどう見ても、あまりにも『普通』。可もなく不可もなく、王道すら歩めぬ凡愚の極み。……貴様、これでよく我が愛娘の隣に立てると思ったな?」

「い、いや、平均点取れてれば十分じゃないですか! 赤点じゃないんだし!」

「黙れいッ!!」

校長(魔王)の背後に、巨大な魔神の幻影が浮かび上がる。

「余の妻エレインは魔界一の賢者、娘のルナも全魔導を修めた秀才だ! その婿となる男が、因数分解で首を傾げているなど、余が許さん! エレインへの報告書に『婿は凡人でした』などと書けるかぁぁ!」

魔王は激怒しながら、光の目の前に一枚の羊皮紙――もとい、校長印の押された「通達書」を叩きつけた。

「いいか! 来週の中間テスト、学年1位になれ。……もし1点でも足りなければ、貴様には**『永久恋愛禁止令』**を下す! ルナとの接触はもちろん、あの黒髪の女との会話も一切禁ずる!」

「が、学年1位ぃ!? 瀬戸さんっていう不動のトップがいるのに無理ですよ!」

「無理ではない、やるのだ! 男なら、愛する女のために知識の山をも踏み越えてみせろ!」

校長室を追い出された光は、廊下でがっくりと膝をついた。

学年1位。それは、平凡を絵に描いたような光にとって、エベレストに素手で登るようなものだ。

「……光様」

隣に、ルナリエルがそっと寄り添い、光の手を握った。

「お父様の無茶振り、申し訳ありません。でも……私は、光様と離れるなんて絶対に嫌です。ですから、私が光様に『魔界式暗記術』を叩き込んで差し上げますわ」

「光くん……私も、光くんが他の女の子と話せなくなるなんて嫌だよ」

反対側からは、瀬戸さんが決意に満ちた表情でノートを差し出してきた。

「私のノート、全部貸してあげる。放課後、私がつきっきりで教えてあげるから……一緒に、おじいちゃん……じゃなくて校長先生を見返そう?」

二人の美少女からの、まさかの同時応援。

「恋愛禁止」という絶望的な崖っぷちに立たされた光の瞳に、かつてない闘志の火が灯る。

「……やってやる。平均点野郎ってバカにされるのはもう終わりだ。ルナさんと、瀬戸さん……二人のために、俺は、この学園の頂点トップに立つ!」

その様子を、校長室の窓から隠れて見ていた魔王は、ニヤリと口角を上げた。

「……フン。女のために必死になる。それでこそ男だ。……さてエレイン、婿殿の教育は順調だぞ。今夜も愛している、愛しているぞぉ……」

妻の写真に頬擦りする魔王を余所に、光の、人生で最も熱い「試験勉強」という名の合戦が幕を開けた。

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