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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第二章 つぎはぎの化け物〜宿場町ブルーメンベルクより〜
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第八話『シルクに刻まれし紋章』

 フリージアは暗い道を歩いていた。暗い道では夜目が効かない。そのことにフリージアは若干不安になった。フリージアは手袋を見つめた。手袋には謎の模様が刻まれている。文字のようにもみえ、模様にも見える不思議なものだ。その模様はフリージアの手の甲に書かれた魔法陣とピッタリと重なる位置にあった。


城壁の外にはアレントと一緒に住んでいた家からヴィントモレンへときた時と同じように何もなかった。ただ馬車が通れる程度の道が整備されているが、道はガタついており、ヴィントモレンが本当に港からの交易を重視していることが感じ取れた。


フリージアは街かもしくは村など人がある程度住んでいそうな場所を探していたが、そのようなものは見当たらなかった。フリージアが途方に暮れていると、ある一台の多くの積荷を載せた馬車が通りかかった。馬車は一旦通り過ぎたものの、馬車に乗っていた男がフリージアの存在に気づき、フリージアを馬車にかかっていたライトで照らした。


フリージアはその眩しさに眩しそうに目を細め、右手の手のひらでそのライトの光を抑えようとした。その時、男はその手袋をしっかりと目にとらえ、目を細めてその手袋を観察していた。


(……手を見られている?)


そう思ったフリージアは咄嗟に手を後ろに隠そうとしたが、男はフリージアの手を取っていた。


「お嬢ちゃん、こりゃ驚いた。シルクを使っているのかい?」


「シルク……?」


フリージアはその言葉に驚く。シルクといえば、手間のかかる工程や希少性から奢侈品しゃしひんとして有名である。そんな高価なものをくれたのかとフリージアは驚いた。さらにその男はフリージアの手を取ったまま、手の甲を見た。その行為にフリージアは戸惑う。手の甲に書かれた魔法陣が透けているのではないかと思うぐらい、その男はフリージアの手の甲を眺めた。


そして、その男は驚いて、「こりゃ、本物じゃないか……」と呟いた後、


「とんでもねえ無礼を働いちまった。すまねえ。こんな汚え馬車で良けりゃ、後ろに乗っていきな。次の街でもいいかい?」


そう言って、男はフリージアの手を離した。そして、男は一時的に馬車を降り、フリージアを後ろへと案内した。フリージアはその待遇に驚いた。そのことを少し不審に感じながらも、


「はい、次の街で大丈夫です。ありがとうございます。」


とフリージアは返し、後ろに乗った。その男はフリージアに膝掛けのようなものを渡し、


「お礼なんて、いいってことよ。まさか、この馬車にヴィントモレンの商会のお偉いさんを乗せることになるなんてな。」


と言いながら、笑ってそう言った。その言葉にフリージアは疑問に思ったが、手袋に書かれた模様がヴィントモレンの商会の家紋であることに気づく。マールテンはフリージアが楽に旅ができるようにと特権のような形でその手袋を押し付けたのだった。


そのまま、馬車に揺られ、フリージアはゆっくりと眠りについた。フリージアが目を覚ますと、まだ馬車は歩いていたが、先ほどから畑のようなものポツポツと見え始めた。いくつかとの馬車とのすれ違う。街が近くなった証拠だ。畑にはチューリップが咲いている。色鮮やかなチューリップは花弁や茎などもバラバラであった。


風が吹き、畑の土の香りがフリージアの鼻を掠める。その土の香りはフリージアにとってはアレントの死んだ時の匂いに感じ取れた。


フリージアはその不安を吹き飛ばすように、頭をふり、眠気を吹き飛ばすように伸びをした。その動きに男は気付いたのか、男はフリージアに声を掛けた。


「ここの街はブルーメンベルクって言ってな。チューリップが名産品でなあ。100年前までは、そんな大きなかったみたいなんだが、異国の雰囲気がいいとかなんとかで、商人や貴族、投資家に大人気よ。ヴィントモレンもそれで大きくなった面があってな……全盛期は過ぎたってのに今もここまで栄えているのさ…ってこんなこと当たり前に知ってるか。すまねえ。」


男は少しベラベラ話すぎたというように、謝る。しかし、隠居をしていたフリージアはそのようなことは知らないが、話を合わせておいた方がいいのではないかと思い、


「えっと、有名ですよね……。」


と返した。フリージアは嘘をつくのは苦手なので、男に声しか聞こえないことに少し安心した。フリージアが後ろを見ると、石門のようなものが見えてきた。石門のところには門番が立っており、来ている馬車を一つ一つ、確認しているようだった。


(もし、手袋を外せと言われたら……)


フリージアは緊張し、手袋を握りしめる。前の馬車の検査が終わり、フリージアの乗っている馬車が前へと進んだ。フリージアはフードが付いていない服をマールテンから貰っていたため、顔が顕になっていることに対しても緊張した。門番が


「止まれ、荷物を検査させてもらう。紹介状を持っているか?」


男は、ある紙を取り出し、


「ヴィントモレンから、商会に案内してもらった。」


と言って、門番に渡す。さらに男は言葉を続けた。


「後ろに積んであるのは、極東からの陶器だ。……あと、ヴィントモレンの商会のお偉いさんも乗ってるぜ。」


そう門番に言った。門番はその紹介状を確認し、


「問題ない。」


と言ったあと、


「後ろの方を確認させてもらう。」


と言って後ろの荷台の方へとまわった。フリージアを見るなり、門番は顔を赤らめた。そして荷物を確認しないまま、前へと戻り、


「……大丈夫だ。通れ。」


と言った。


「おいおい、荷物を確認しなくてもいいのかい?」


男は門番に揶揄うようにそう聞いたが、


「問題ない。通れ。」


と同じことを繰り返した。男は少し呆気に取られた表情をしたが、馬車を走らせた。フリージアはもっと不思議に思っていたが、何も確認されなかったことに安心した。


街に入ると、商人たちの取引場とでもいうように多くの場所に馬車が止まっていた。先ほどとは違うのは、街全体が宿場町にでもなっているのか、焼きたてのパンの匂いやビール、ワインの葡萄の匂いがフリージアの鼻を掠めた。


「ここまでだ。お嬢ちゃん。」


と言って、フリージアはその言葉に反応し、馬車の後ろから降りた。


「本当に、ありがとうございました。」


フリージアは男に声を掛けた。男がその声に振り向き、


「おお、乗り心地は悪くなかったかい?」


「ええ、よく眠れました。」


そういうと、男は嬉しそうにうなづき、


「ならよかった。ちょっとぐらい、商会に言っといてくれよ!」


と男は笑って言ったが、フリージアにはそのようなことはできないため、苦笑いでうなづいた。男は再び馬車に乗り、フリージアに笑顔で手を振って別れた。フリージアも手を振った。

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