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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第一章 死者の軍勢〜港町ヴィントモレンより〜
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第七話『助言』

 「……さっき、お前を助けたのに”理由はない”と言ったが、あれは嘘になる。」


沈黙の中、マールテンから発せられた言葉にフリージアは首を傾げた。そしてマールテンはその重い口を開いた。


「お前、なぜあの時拳銃を撃たなかった。なぜ死の権限を行使しようとしなかったんだ。」


マールテンがフリージアに向かい、強めの口調でそう言った。その口調はまるで父親が子供に悪いことをした理由を聞くような口調であった。


「……なぜ?」


「ああ、理由を聞いているんだ。」


死の権限を行使することが正しいと言わんばかりのマールテンの口調に、フリージアは少し声を荒げた。


「それは!彼らが優しかったから。」


「優しい……?あんな状況に会ってさえ、お前はまだ彼らが優しいと思うのか?」


マールテンは顔を顰める。フリージアの言っていることが理解できないとでも言うように質問を続けた。


「……私がネクロマンサーとバレなければ、」


「でも、バレた。それであんなことをされた。思わなかったのか、自分は悪くないのにって。」


フリージアはその発言に驚く。まるで心が読めているかのようだった。なぜネクロマンサーというだけであのように迫害されなければならないのか、フリージアには理解できなかったのだ。その驚いた顔にマールテンはフリージアの考えを当てたことを確信したようだった。そして、マールテンは窓の外を眺め、どこか諦めた口調でこういった。


「人間とはそういうものだ。まだ、悪いことをしていなくても、そのようなことをしそう、もしくはそのような危険な力を持っているだけで、差別する生き物だ。」


まるでネクロマンサーは人間ではないと言うような口調にフリージアは言葉を紡ぐことはできなかった。さらにマールテンは続けてこういった。


「人間に紛れようとするんじゃない。……紛れた分だけ、バレた時に痛い目を見るぞ。それに周りの人間を苦しい目に遭わせることになる。その覚悟がないのであれば、ネクロマンサーであることを隠すな。周りの批判の目に耐えろ。」


マールテンは人との共存を目指したいフリージアにとって、かなり厳しいことを言った。共存という道ではなく、フリージアに”ネクロマンサー”として生きることを強要しているようだった。そして、マールテンの語ることはどこか人間の社会に居場所を見つけられなかったアレントの姿と重なるように感じた。マールテンはどこかフリージアに警告をしているようにも感じられた。


「……なぜ、そこまで言ってくれるんですか?」


フリージアはそう聞いた。フリージアにとって時に厳しい発言は優しさの裏返しであることを知っている。フリージアはマールテンの先程の発言をまるで助言のように聞いていた。マールテンはフリージアに対して厳しいことを言った自覚があったので、その発言に驚いたような表情をした。マールテンは言う。


「どう言うことだ。」


「えっ、優しいと思って、」


「頭がイカれているのか。」


マールテンは本当にフリージアの発言の意味が理解できないとでもいうように、フリージアにそう返す。


「でも、まだ私は人との共存はできるって信じています!」


「……理想主義者め。」


フリージアは自身の力を一生使わなくてもいいと言うぐらいには人との共存を望んでいた。それはフリージアの願いであり、同時に育ての親であるアレントの願いでもあった。フリージアはあんな仕打ちを受けたのにも関わらず、マールテンの発言を聞いてもなお、共存を諦めてはいなかった。


マールテンはそのフリージアの発言を聞き、ひどく顔を歪めたが、強く否定はしなかった。マールテン自身もそのことを望んでいるのかもしれない。その後、また沈黙の時間が続き、しばらく経った後、マールテンは言った。


「今日の夜にはここを発て。騒ぎにならないように、ここの街から早急に、だ。」


「分かりました。」


フリージアはここに泊めて欲しいなどは言わなかった。むしろ騒ぎにならない夜の時間ほどここを出発するのに適した時間はない。


 夜になり、全ての城壁の門が閉鎖され、市場も静寂に包まれ、酒場も閉まった後の時間帯にフリージアはマールテンに門のところまで案内をしてもらった。マールテンは城壁の脇についている、小さな扉を鍵を使って開ける。小さな鉄の門はギギギという音がしたが、とても小さな音だった。


マールテンは自身の着ているコートの中から薄手の手袋をフリージアに差し出した。押し出すように渡された手袋には何か模様がついていたが、それが何の模様かはフリージアには分からなかった。


「他のネクロマンサーの居場所は知らん。自分で探せ。」


そう言って、マールテンはフリージアを城壁の外へと誘導する。


「あの、色々とありがとうご、」


フリージアが感謝を言い終わる前に、マールテンは鉄の扉を勢いよく閉めた。これから会うネクロマンサーたちは一体どのような人物なのか、期待よりも不安の方が勝ち、フリージアは少しだけ、怖い気持ちにもなった。

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