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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第三章 忘れて〜死者の丘より〜
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第二十八話『罪』

 太陽が傾き始め、空が赤色に染まり始める。アルトは船を止め、船から大きな荷物を下ろした。


「今日はここで野宿するっす。いいっすか?」


アルトが三人に尋ねるので、フリージアは頷き、レオポルトもうなづいた。ノアだけはうなづかなかった。レオポルトがノアに声をかけた。


「野宿でいいかい?」


そう言われても、ノアは動かないまま言った。


「早く、船を進めてくれ。」


初めて聞いたノアの声は、フリージアの鼓膜に残るほど、不気味で低い声であった。アルトも不気味であると思ったのか、ノアの声に少し肩を揺らした。フリージアはアルトの動揺している様をみて、心配そうに手を重ねた。アレントが怖がるフリージアにしてくれたように。アルトはそのことに少し驚いた様子をみせた後、


「大丈夫っす。」


と言って、フリージアの手を払った。フリージアはそのことに驚いた。フリージアは自身の手をみた。


(ちゃんと手袋をしている。)


その手袋という、ただの薄い布がフリージアの心の平穏を保っていた。フリージアが、アルトはなぜ手を払ったのかと疑問に思い、彼の顔を見た。すると、手を振り払ったにも関わらず、アルトと目があった。それも不自然な目の合い方であった。まるでフリージアのことをずっと見ていたかのように思われた。


フリージアはやはり、自身がネクロマンサーであるということがバレたのではないかとひどく動揺したが、今はバレていないと信じる他なかった。アルトは目があったフリージアから目を逸らし、ノアに尋ねた。


「……あと三日はかかるっす。流石に休まないと厳しいっすよ。」


すると、ノアは先ほどまで沈黙を貫いていたのが嘘のように声を荒げていった。


「ダメだ!早くしなければ!こいつが何者かに捕まってしまう!平穏に眠れなくなる!」


こいつと指を刺したのは棺であった。棺には死者が入っている。ノアは早くその死者を早く墓に放り込みたいようであった。ノアはまるで狂った獣のように同じことばかりを呟き、レオポルドがなんと言おうが、アルトが何度説得しようが、早くと急かすばかりで話にならなかった。


フリージアは流石に厳しい旅路になるのではないかと思い、ノアに話しかける。しかし、ノアに近づいたところでノアは狂った声を出さなくなった。そのことにフリージアはどうしたのだろうかと顔を覗き込む。その顔はひどく恐怖に満ちていた。まるで本物の化け物を見たかのようで会った。


今度は、


「ひい!化け物!」


と騒ぎ立て、フリージアのことを手で追い払おうとした。そのことを見ていたアルトはノアのことを骨折しない程度の力で押さえつけ、


「何言ってるんすか。落ち着いてください!」


と言った。レオポルトはフリージアの背中に手を当て、


「最近、あんなことをいうことがあるのさ。大丈夫だ、君は化け物じゃない。傷つく必要なないよ。すまないね。」


と言った。しかし、内心フリージアの心は荒れていた。


(私のことネクロマンサーだと分かった?なんで?どうして?)


老人とは思えない体力にアルトは疲弊したが、ついにノアは動きを止めた。アルトはようやく止まったと思うと同時に、ノアの動かなくなった様子に驚く。そして、


「ノアさん!大丈夫っすか!」


と大きな声でノアの体をゆすった。普通ではないこの状況にレオポルトもノアの近くに急いで寄った。レオポルトは大きく体を揺する。しかし、ノアが息をしていないことに気づき、レオポルトは身体中から体温が抜ける感覚に苛まれた。アルトも動揺を隠せなかった。


「俺の、俺のせいで……俺が強く抑えすぎた……から。」


アルトはノアを支えていた手の力が抜け落ちていく。アルトは、自身の行いを振り返り、顔から先ほどの元気はない。ひどく青ざめ、まるで死人と同じようになっていた。しかし、レオポルトは少し動揺したのち、冷静にアルトに言った。


「君のせいじゃないよ。……大丈夫だ。元々体が良くなかったから、そろそろだっただけだ。だから、大丈夫だ。」


アルトはその言葉を聞きながら、涙を流しうなづく。レオポルトは、アルトを慰めるように背中を優しく撫でた。


一番この中で動揺しているのはフリージアであった。


(……殺したのは、私だ。)


頭が空っぽになった。ネクロマンサーであるということがバレることに焦ったのだろうか。フリージアは力の制御が効かなくなっていた。


(……どうして、なんで、だって、ちゃんと力は抑えられてて、大丈夫だって、アレントさんも言ってて。)


なんと言ってもどんどんと冷たくなっていく死体が現実味を帯びていた。アルトはノアの体をまだ限界のところで地面に頭がつかないように支え、レオポルトはそのアルトを慰め、ノアの心臓にあたるところに手を置いていた。フリージアは地面から冷たい空気が身体中を回るかのように体温が下がったように感じた。


(まだ、大丈夫、だって、戻せるはず……。)


そう思い震えた手で拳銃を触る。拳銃は手から落ちそうになるが、フリージアは以前魂を戻せたことを思い出しながら、拳銃を両手で持つ。そしてノアの方へと標準を合わせようとした。


しかし、すでに遅かったのかフリージアは魂を捉えることができずに、もう戻すことは無理であると確信した。そして、拳銃をゆっくりと下ろし、地面を見つめた。


(……殺しちゃった、殺した……殺した?私が?……なんで……。)


フリージアにもなぜ突然ネクロマンシーが発動したのか分からなかったが、フリージアがノアを殺したという事実は確かなものであった。しかし、幸いなことにそれに気づいているのはフリージアだけであった。

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