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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第三章 忘れて〜死者の丘より〜
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第二十六話『死者の丘』

 その好青年は船を漕ぎながら、フリージアに話しかけた。好青年の他には年老いた老人が二人乗っていた。好青年はフリージアに言った。


「俺は、アルトって言うっす!お嬢さんの名前は?」


「えっと、フリージアって言います。」


「フリージア!いい名前っすね!」


そう言ってアルトはニカっと笑った。その笑顔にフリージアも笑顔が溢れる。そして、老人もすかさず会話に入ってきた。老人の一人は口に髭を生やし、大きなコートを着ていた。もう一人は、髭が生えていなかったが、貫禄があり、眼鏡をしていた。


口に髭を生やした老人は言った。


「私の名前は、レオポルトというんだよ。こっちは、ノアだ。昔からの友人でねえ。」


フリージアは、そのノアと言われた老人を見たが、あまり話すほどの気力がないのかただうなづくだけであった。レオポルトはゆっくりとして口調でさらに言葉を続けた。


「私たちは、死者の丘に行く予定なんだ。」


「死者の丘?ですか?」


「ああ。」


その老人はゆっくりとした口調で言った。アルトはフリージアに言った。


「死者の丘っていうのは、ここら辺の人たちにとって重要な土地っす。死者を弔うための場所で、お墓がいっぱいあるんっすよ。昔から、そのお墓で眠った人は後悔なく天国に旅立てるって言われてるっす。」


「ただ、その死者の丘には、いろいろと噂があってねえ。死者の丘にはお墓はたくさんあるんだけど、死者を弔うための司教や司祭のことは誰も知らないんだよ。だから、最近は死者の丘に埋めるなんてこともしなくなったんだけどねえ。」


悲しそうな顔でレオポルトは言った。レオポルトは、船に置かれていた大きな布のかかった長方形の箱を撫でる。フリージアはその箱の大きさに見覚えがあった。


「……棺桶ですか?」


「ああ、そうだよ。布がかかっているのによく分かったねえ。」


フリージアもその棺桶にゆっくりと触れた。


「祈ってくれるのかい?」


レオポルトにそう言われ、フリージアはそっと手を胸に押し当て、死者への敬意を払い、天国を想像した。レオポルトはそのことに微笑んで、


「ありがとうねえ。」


と言った。アルトはその間何も言わずにただ、しばらくの間、船を漕ぎ続けていたが、その沈黙が長くなり、空気が重くなったところでフリージアに声をかけた。


「この人たち、俺が通りかからなかったら、二人でこの棺桶持って死者の丘まで行く予定だったらしいんっすよ。無茶だと思いません!?ここから死者の丘まで三日はかかるんっすよ!?」


「いやあ、あの時は通りかかってくれて助かったよ。」


「本当ですよ!他の人とか、別の移動手段とか使った方がいいと思いません?」


しかし、フリージアはベル・シュメールまで歩きで行こうと思っていたので、そのことを強く否定できずに、


「……そうかもしれませんね。」


と気まづそうに目を逸らし、答えた。アルトはその表情を見逃さず、


「……もしかしなくても、フリージア嬢は、歩きでベル・シュメールまで行こうと思ってたんっすか?」


その通りであるとフリージアは心の中で内心答えながら、気まずそうにうなづくと、アルトは信じられないという表情を浮かべた。


「バカなんすっか?」


「ば、バカかもしれないです……。」


フリージアは何もいうことができなかった。確かに、馬車で一ヶ月かかると言われている道を歩いていく人間はいないだろう。そんな人間はバカ以外にいない。フリージアは、気まずそうに思っていたが、アルトはそんなフリージアを見て笑った。


「まあ、これもある意味奇跡っすね!」


また歯を見て、ニカっと笑った。レオポルトもフリージアに向かって、


「拾ってもらえてよかったねえ。」


と言いながら、笑ったが、


「拾ってはないっすよ!?」


とアルトは少し、冗談めかして答えた。アルトが船を漕いでいる間、目の前の棺を見て、アレントのことを思い出す。ネクロマンサーだとバレなければ、今もこうして人間として関われている自身の存在を少しおかしく思った。フリージアは、カタリーナのことを思い出した。


(カタリーナに結局、挨拶できなかった。)


フリージアは追い出されたことよりも、カタリーナと兄の関係がネクロマンサーという自身の介入によって、壊れていないことを祈った。


そしてカタリーナにもらった本のことを思い出した。サフランのことについて書かれているかもしれない『魔女の民族童話』の本。フリージアはバックの中からその本を取り出す。その本を取り出し、アルトに


「本、読んでもいいですか……?」


というと、


「許可なんて、貰わなくったっていいっすよ!どんな本っすか?」


と笑顔で答えてくれた。


「えっと、これです。『魔女の民族童話』です。」


「そんな本があるんっすねえ。」


とアルトは船を漕ぎながら答えた。フリージアは本を開き、文字を呟き始めた。本は音声言語をそのまま書き写したものであるため、音声として声に出すものであった。フリージアが呟く話をアルトとレオポルトそして、ノアまでもが聞いていた。

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