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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第三章 忘れて〜死者の丘より〜
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第二十五話『行き先』

 フリージアは門の外へと出た。外へ出るには特に通行許可証などは必要ないようだった。フリージアは門番の人に軽く道を尋ねると、場所は知っているが、道までは知らないと言われた。フリージアはそのことに少し落胆したが、その門から出ていく他の商人が言った。


「お嬢ちゃん、これからベル・シュメールに行くのかい?」


フリージアはそのことに頷きながら、その商人にたづねる。


「行く道を知っていますか?」


その商人の男は困った顔をして言った。


「知ってはいるけどなあ……。ここからだと、馬車で最低でも一ヶ月はかかるぞ。しかも、道も悪いしなあ。歩きだと、もっとだな。……まあ、途中の街に泊まれば済む話ではあるが。」


そう言ってフリージアの方を見た。そしてその商人の男は頭をかき、フリージアに地図を渡した。


「ここだ、ここが今いるブルーメンベルクだ。」


そう言って地図を広げ、フリージアに見せながら、指で示す。フリージアはその指先を目で追っていた。


「で、ここがベル・シュメールだ。」


指で示した先は海に近かった。確かに北西方面にあり、その都市の先には五つの島からなっていると思われる島国のようなものがあった。フリージアはその地図を眺め、言った。


「どこから行くのがいいですか?」


商人は少し悩んだ後、指で道を示してくれた。


「この、川を辿るのが一番いいんじゃないか?ここなら街も点在しているし、川沿いであれば、運が良ければ、海運で移動できると思うぞ。」


そう言って、指で示した川はベル・シュメールの都市の中心も流れており、海に向かって終点が続いていた。川はここからもう少し歩いたところにありそうであった。


「山を越えることもできるが、おすすめはできないな。街もねえし、道も悪いし。川の方も決して道が整備されているってわけじゃねえけど、マシだと思うぜ。」


そう言って、地図を筒状にし、フリージアに手渡した。そして商人の男は馬の手綱を握りしめ、


「まあ、今は気候も安定してるし、大丈夫だとは思うが、気をつけろよ!」


と言ってから、門番とフリージアに手を振り、去っていった。


「ありがとうございます!」


フリージアもそう大きな声でいい、門番にお礼を言ってから出発した。道中で道を尋ねながら、川まで辿り着いた。手袋の紋章に驚くものは何人かいたが、誰も毛嫌いせずに親切に道を教えてくれたことを嬉しく思った。何人かは、フリージアが旅をしていると言う話を聞き、家に泊めてくれたり、料理をふるまったりしてくれた。


一週間歩き、川沿いまでたどりつく。ここまでくれば、あとは川を辿れば、着くはずである。商人たちは星をよみながら方位を把握するそうであるが、フリージアには星の知識は全くないため、人に聞く以外の方法はなかった。そのため、フリージアは川についたことが少しの安心感を植え付けることとなった。


フリージアは川を見て、軽く水に触れる。手をすり抜けていく水をフリージアは静かに眺めていた。


(馬車でも一ヶ月かかるって言ってたけど、歩きだとどのくらいなんだろう……?)


川の横を歩く。川はかなり横幅が広く、小さな船であれば余裕で通ることができるだろう。太陽が水を反射し、水面が光っている。魚が跳ね上がり、小さな円を描く。アオサギが水面近くで餌となる魚をじっと待っている。上空にはオオワシの姿があった。フリージアはそんな生物の姿に何故かほっとした感情を抱いた。それにはフリージアが森にずっといたことが関係しているのだろう。


森の奥から狼が出てきたが、フリージアはそれに驚かなかった。狼もフリージアのことを脅すつもりもなかったようだ。狼は群れで動く。その狼はその群れのボスのようで、フリージアに軽く眺め、頭を下げるようにした後、その後ろに控えている狼たちも頭を下げた。フリージアはその後ろにいる狼の子供に目がいった。


「こんにちは。その子は子供?」


フリージアは慣れた手つきで狼の頭を撫でる。フリージアは死の権限を有することに動物が怖がるのではないかと思っていたが、思っていたよりもそうではないらしいと前々から知っていた。むしろ動物の方から寄ってくることの方が多かった。


撫でられた狼は問いかけに答えることはなかったが、フリージアに身を預けているようだった。しかし、耳をピクピクと動かしたかと思うと、狼は急いで森の中へと行ってしまった。フリージアは背後から声をかけられた。


「お嬢さん〜!」


とても大きな声だった。川の方を見てみると、荷物を乗せた船が見えた。船には何人かの人が乗っている。その声をかけた男性は好青年という印象であった。その船をゆっくりと河岸に寄せた。フリージアはその船に近づく。


「お嬢さん!ここら辺、危ないっすよ。よかったら、乗ってってください!どこまでっすか?」


そう言って、笑顔でフリージアに話しかける。フリージアはその問いかけに、その笑顔を返すかのように微笑みながら、


「ベル・シュメールまで、です。」


とフリージアがいうと、その男の人は驚いた顔をして、


「ベル・シュメール!?マジですか!?俺とおんなじっすね!乗ってください!」


と言った。フリージアは


「ありがとうございます。」


といい、その船に乗り込んだ。

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