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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第二章 つぎはぎの化け物〜宿場町ブルーメンベルクより〜
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第二十二話『過去の記憶』

「まずは君のことから知りたいなあ。」


ツバキはそう言って、フリージアの方を笑顔で見つめる。フリージアはその視線に一瞬、目を逸らした後、ツバキの方を見て話し始めた。


「私は、アレントさんという人物、いえ、ネクロマンサーに育てられました。」


「生まれた時から?」


「……いえ、生まれた時のことはよく分からなくて、」


「ふ〜ん。じゃあ、生まれた時から別のネクロマンサーと一緒にいたわけじゃないんだ。」


「そうですね。生まれてから50年ぐらいはずっと、森の中を彷徨っていて、」


「そうなんだ。じゃあ、そのネクロマンサーとはどうやって知り合ったの?」


フリージアはアレントと初めて出会ったことの出来事を思い出す。アレントはふと現れたのだ。人に襲われている時に。あの時は自身が人間とは違う生き物である程度のことしか分かっていなかった。フリージアは胸に手を当てる。


(ずっと痛かったんだ、ここが。)




フリージアは森を彷徨っていた時、よく猟師に襲われていた。心臓を矢で撃ち抜いても死なないことがいい的となったのか。それとも当時力が制御できなかったフリージアのことが脅威と感じていたのかは分からない。


いつものようにフリージアが矢で心臓を撃ち抜かれ、痛みに耐えていると突然同じ香りがした人物が現れた。その人物は私の姿を見て、顔を歪め、そのまま私を抱きしめた。アレントの背中にたくさんの矢が突き刺さり、血が溢れ出る。それをフリージアは恐ろしいと思った。


アレントの背中を触り、フリージアは必死に溢れ出る血を止めようとするが、フリージアの小さな手には抑えられない。どんどん血が溢れ出るのをフリージアは焦り、泣きながらアレントの背中を触る。それにアレントは笑いながら、言った。


「大丈夫さ。君のせいじゃない。」


アレントは幼いフリージアの頭を優しく撫でる。フリージアはその行動に今度は心の温かさから涙が止まらなかった。そのまま、アレントのことをすっかり信頼したフリージアは、アレントの後ろをまるで雛鳥のようについて回ったのである。


フリージアはそのことを思い出して、一瞬微笑むが、アレントがもういない現実から少し悲しい顔になった。




「その人は私に温かさを教えてくれました。」


「そう。」


ツバキは目を細くする。何か気に入らないような顔だった。しかし、悲しい顔のフリージアを見て、そのネクロマンサーに何かあったように思われたのだろう。ツバキは


「その、ネクロマンサーは今どこに?」


と聞いた。フリージアが


「亡くなりました。」


と言うと、ツバキは、


「本当に、ネクロマンサーって死ぬんだ。」


と言った。ツバキはフリージアの顔にまた手を近づけた。そしてフリージアの頬を撫でる。そしてツバキはフリージアに言った。


「ねえ、ネクロマンサーに温かさを教えてもらったんだよね。」


「……はい。」


「俺も、誰かから温かさを教えて欲しかった。……ねえ、フリージア。俺と旅をしない?」


その提案にフリージアは目を見開き、驚いた表情を浮かべる。なぜ、ツバキがそのような提案をしたのかが分からない。驚きと困惑に満ちた表情にツバキはクスクスと笑いながら、


「俺、人間から温かくされるなんて考えられないんだ。だからさ。君が俺に温かさを教えてくれないかなって。……それに、君のネクロマンシーはもっとお金を稼げるはずだよ。お金の稼ぎ方なら知っている。Win-Winの関係ってやつだよ。」


「……Win-Win。」


フリージアはこれ以上自身のネクロマンサーをお金に変換する能力は控えたい。それにツバキのやり方はフリージアにとっては残酷そのものだった。欠損した死体を見た時のことは今でもよく覚えている。あの不気味さはフリージアは二度と味わいたくないぐらいには嫌いだった。


ツバキの表情を見る。ツバキはフリージアの方を見ながら薄目で笑っていた。明らかにフリージアの答えを期待している。フリージアは断りたい気持ちがあったが、今ここで断りでもしたら、宿から追い出される可能性もあると考えた。フリージアはなんとなくツバキの本性がわからなかった。


「考えさせてください……。」


「……いいよ。じゃあ、明日の朝、答えを聞かせてよ。」


ツバキは少しつまらなそうに返事をした後、椅子から立つ。そしてフリージアに向かって言った。


「先に寝てていいから。」


そう言って、ツバキは部屋の外へと出ていった。フリージアはその場に一人取り残された。フリージアは特にすることもないため、フリージアは上着を脱ぎ、ベットに横になる。


(今日は疲れた……。)


今日のことを思い出しながら、布団に入る。欠損した死体、ツバキのこと、それにカタリーナのこと、屋敷の人の対応、どれも気になることばかりであったが、疲れ切った頭では考えが回らなかったのかフリージアはそのまま眠りについた。


ツバキはドアを開けて部屋に入る。ツバキは手に小さな紙袋を持っていた。フリージアの寝顔を見て


「無防備だよね。ほんと。」


と呟く。そして、フリージアの横の方へとツバキの布団に入り、眠りについた。

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