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ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜  作者: 西瓜すいか
第二章 つぎはぎの化け物〜宿場町ブルーメンベルクより〜
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第十九話『ツバキ』

「そのような大金を持たれて、泊まるのはいささか私の宿では危険かと……。」


「女性一人にこの宿は貸せんな。」


「ヴィントモレンのお偉いさんが泊まるような宿じゃねえよ。もっと民衆の商人の宿だ。あんたみたいな人がいたら、気ぃ使っちまうだろ。」


「もう空きがなくて。……申し訳ありません。」


先ほどから手当たり次第で宿を探しているが、一向に見つかる気配がなかった。宿自体はたくさんあるが、フリージアが泊まれるような宿は一つも見当たらない。フリージアはトボトボと街の中を歩いていた。


(野宿するしか……。)


フリージアは宿を見つけられなかった場合、野宿する覚悟を決めていた。フリージアの目的はサフランに手紙と届けることであるため、別にこの街に留まる必要もないが、この街で感じた他のネクロマンサーの気配への心残り、さらにカタリーナへの心配があった。


(カタリーナはどうして、怖いと思ったのだろう。)


フリージアが考え事をしながら歩いていると、前から歩いてきた三人組の屈強そうな男の一人とぶつかってしまった。フリージアは慌てて


「あの!ごめんなさい!考え事をしていて。」


と言ったが、その男たちは聞く耳を持たずに


「何、ぶつかってきたくせして、何もしなくていいと思ってるんだよ!」


と言ってフリージアの服を掴み、軽々と持ち上げた。フリージアは足をバタバタさせて抵抗するが、全くその男たちには通用しないようだ。


「お!いいもん持ってんじゃねえか。」


男はそう言って、フリージアの持っていたお金の入っていた袋から金を出した。さらに他の男はフリージアの顔を見て


「綺麗な顔してんなぁ。その顔で何かしてくれんのかい?」


さらにフリージアを掴みあげた男は


「良いとこの令嬢か?お前のことを売ったらいくらになんだろうな。」


と笑いながら言った。フリージアは、


(売られるって、どういうこと……?顔で何かするってなに?)


と考えながらも、男たちの不気味な笑みを見て、何か良からぬことなのだろうかと想定がつく。フリージアはブラブラと手を自身の腰の方へと引き寄せる。拳銃さえ取れれば、なんとかなるかもしれないと考えたかだった。持ち上げられた状況では拳銃へ手が届きそうになっても、なかなか引き出すことができない。


「男三人で囲って、女の子のこといじめてるの?やめなよ、そういうダサいこと。」


と誰かの声がした。男はその発言をした男を睨み返す。


「なんだよ。お前、僻みか?やってやろうじゃねえか。」


その挑発とも思われる発言に先ほどの男は


「いいね。」


と言って、フリージアのことを囲っている男の方へと近づいていった。そこからは一瞬だった。フリージアのお金を持っていた男が簡単に投げ飛ばされ、フリージアのことを掴んでいた男は腕を掴まれ、その強い力から顔を歪め、フリージアから手を離した。もう一人の男は、身を一歩後ろにひき、降参だと言わんばかりに力を抜き、手を上にあげた。


「そのお金置いていってくれる?」


フリージアを助けた男は、金をまだ大事そうに抱えている男に向かってそういった。まるで、ゴミでも見るような視線だった。三人の男は金を置いて逃げていった。


フリージアはその男の正体に気づいたいた。


(ネクロマンサー……。)


ネクロマンサーの男はフリージアに向かって


「大丈夫?それにしても、まさか同胞に出会えるなんて。俺の名前はツバキ。」


「ツバキ、」


その言葉の並びにフリージアは聞き覚えがなく、首を傾ける。


「そう、ツバキ。女の子みたいな名前だよね。俺、男なのに。」


ツバキはそう言った。フリージアは聞き覚えがないことに対して、首を傾げたが、ツバキは女の子みたいな名前だと思ったのではないかと勘違いしたらしい。


「それで、君は……?」


「私は、フリージアです。あの、助けていただいて、ありがとうございました。」


「良いんだよ。俺、同胞には優しいから。」


とツバキは笑っていった。ツバキはさらに続けた。


「フリージアねえ……。良い名前だね!花の名前でしょ?俺の名前の花の名前なの。東洋の。」


ツバキはフリージアと早速共通点を見出したようだった。さらにツバキは続ける。


「ねえ、まだ話したいことがあるんだけど……。」


「私もです!」


ツバキの発言にフリージアは食い気味で答える。その発言にツバキは驚いたように笑った。


「じゃあ、一緒に行こうか。」


フリージアはその言葉にうなづく。


「ところで、フリージア。どうして、あんな場所いたの?」


「えっと、宿を探していて、見つからなくて。」


「じゃあ、俺の宿で空いてる部屋を見つけて貰えばいいよ。」


ツバキの何気ない提案に、フリージアは少し安心感を覚えた。

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